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第九話 徳川家康②

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徳川家康。
一見小太りの人が良さそうな中年男性に見える。
しかし、それは間違いだ。
彼は暇さえあれば水泳、剣術、砲術で体幹を鍛え、薬学の知識を使い、自作のサプリメントで健康を維持している。
鉱物の天ぷらもニンニクを使ったもので栄養はある。
そして、家康は小牧長久手の戦いで秀吉に勝利しており、

「天下を貸してやるだけ」

という意識は強い。

しかし、秀吉にはビジョンがあった。

天下を手に入れると、全国的な検地により長年権力者たちを悩ませていた土地問題を解決。

曖昧だった身分制度にメスを入れ、兵農分離させる。

大坂で大規模な下水道工事を行い、都市部の水不足なども解消し、禁教令により鎖国の基礎を確立。

ーーこの国は武家が統一せねばならぬ。あのような農民の臭いが消えぬ猿ではいかぬのだ。

家康と秀吉は生きてきた人生が違う。
秀吉は家康を受け入れられるが、家康は違う。
心の何処で軽蔑していた。

しかし、これほどの改革ができる秀吉の政治能力は家康自身、認めざるを得なかった。

ーー諦めるか。

家康は一度は諦めようともした。
しかし、秀吉に意見ができる唯一の人物、弟である豊臣秀長が病死。
多少の統治能力はあった秀次も自害に追い込まれる。
幼い秀頼だけが残った。

ーーこれは好機だ。

家康は物言わぬ幼い秀頼を利用して豊臣家を蔑ろにして、禁止されていた大名家同士の婚姻など自身の天下取りの準備を開始した。

周りの大名もNo.2である徳川家康の権力に畏怖し、何も言えない。

ーーなぜだ? 大恩ある豊家の危機になぜ気付かぬ!? 

石田三成は苛立ちを覚え、家康に並ぶ権力を持つ、前田利家に訴え続けていた。

病がちの利家は体に鞭打ちながらも家康を窘めていた。

利家と家康は対立を深めていく。

しかし、1599年、前田利家が病没。


もはや、家康を止める人物はいない。

家康は天下取りの準備を更にスピードアップさせる。

ーー何とでも言うがいい。豊臣では日の本を守れぬのだ。

しかし、唯一の心配な点はある。

石田三成の存在だ。

様々な改革を成功させる政治能力。

ーーあやつがいれば、さらなる改革を行うことができ、平和を維持できてしまう。それに……

石田三成は家康の台頭を読んでいた。

まず、島左近や渡辺勘兵衛、若江八人衆、蒲生氏郷配下の武闘派を登用している。
そして、五奉行と大谷吉継、直江兼続、佐竹義宣、寺沢広高、真田信之など能力のある人物たちとの親交。


だが、家康はそれらに関して少し疑問に感じることもある。

ーー五奉行のみでこの広大な日の本の検地を行えたのか? 歴史上、誰もなし得なかったはずだ。補佐する人間がいたのでは?

彼は三成の陰にいる男の存在に気づいている。

ーーあやつの周囲にいる二つの影。

しかし、時代の勢いは自分にあると家康は実感しており、それほど気にはしていない。

ーーフン、足掻いてみよ。何も変わらぬ。


家康は蒼天に己の夢を描いていた。

時を少し戻そう。

秀吉への謁見を終えた三成たちは佐和山城に戻ってきた。

三成がいない間、政務を行なっていた島左近がドタドタと小走りでやってきた。

「三成様! ご無事で」



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