地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

文字の大きさ
上 下
5 / 53
2章 汗鬼

エアロビクス

しおりを挟む
その理由は
「こんにちは」
二十歳過ぎの女性が礼司の隣に来て声をかけてきた
「こんにちは」礼司は嬉しそうに笑った
「この前ありがとうございました」
「いいえ」礼司は照れて言った
彼女には以前ウエイトトレーニングを教えた事があったのだった。

「どうですか?最近えーと名前」
「はい、真理子です」
彼女は腕の筋肉を見せた
「あはは、良い上腕二等筋だ」
「ありがとうございます」
礼司は上品な仕草と全身の髪の毛の長くモデルのように
均整が取れているボディスタイルの彼女に憧れていた
「みなさんおはようございます」
インストラクターは元気に声をかけると
音楽を流し始めた。

「彼女は美人でいいんだけど音楽の趣味が悪い、あはは」
ウォーミングアップが終わりサイドステップから
レッグカールに移って
礼司の額から汗が流れ出したその時
「キーン」
と音がしてスタジオのエアコンが突然止まった

他の連中はそれに気付かず体を動かしていて5分ほど
過ぎると室内の暑さにインストラクターが気付いた。
「すみません、ちょっと休んでください」
そう言ってパネルの室温のレベルを下げた。

すると熱風がエアコンから吹き出した。
「何これ?暑い」
聞こえた
「みなさんスタジオから出てください」
インストラクターは入り口のドアを押した
「あら?開かない」
ドアを何度も押したが開かなかった
「俺がやります」
礼司はドアを押した
「やばいこれは何かの力がかかっている」

「きゃー」
悲鳴が奥のほうから聞こえた
礼司が目をやると奥の床がドロドロに
なって一人の女性の片足がその中に
引き込まれていた。

礼司はすぐにその女性のところへ行き、足首を引っ張った
すると、そのドロドロが普通の木の床に戻った
「きゃー」
今度悲鳴を上げたのは入り口の近くにいた真理子だった
真理子の体は半分床に吸い込まれていた。
「おい」
礼司は数メートル飛び真理子の腕を引くと
床には大きな口を開けた鬼の顔が見えた
「こら!」
そう言って礼司は思い切り持ち上げた
すると下半身のズパッツが脱げた真理子を引き上げた
「きゃー」
真理子は手で股を隠した
「あはは、綺麗なお尻」



礼司は外にいた男に
「割ってくれ」
ガラスを割るように指示をした
「は、はい」
その男はすぐにダンベルでガラスを割って入って
来ると凄い勢いで熱い空気がスタジオから出て行った

「開いた」
ドアを押していたインストラクターが言うと
中にいた二十人ほどの生徒は悲鳴と共に
スタジオから飛び出した
「ありがとう」
礼司はガラスを割った男に言った

「いいえ」
「あれ、浜田?」
「はい、どうして僕の名前を?」
「俺の事知らないよな」
「はい」
「仕事は警察か?」
「え?」
まもなく警察がスポーツクラブに急行したが
誰も何も理解しなかった

次の日、大田区のスポーツ施設のスタジオで同様な
事件が起きた
「きゃー」
数人の女性が床に吸い込まれ
しばらくすると「げっぷ」と共に床から
干からびた女性の死体が湧き上がった。

皇居周りの道路ではジョギング中の女性が
地面に吸い込まれ行方不明になった

その日の夕方、礼司は青山墓地で魔美を待った。
しかし、窓も叩かれず携帯電話も通じず
そこへ浜田から電話があった

「夜野さんちょっとお話できませんか?」
「いいよ、どこで?」
「今、前にいます。あはは」
浜田はタクシーの前に立っていた
「乗ってください」
礼司の声に浜田は助手席に座った

「すみません。お忙しいところ」
「はい、どんな用件ですか?」
「実は大田区の施設で我々が遭遇した
事件が起きたんですよ」
「うん、それで?」
「我々の時には夜野さんが助けましたけど、
大田区では床に吸われてその後
死体が吐き出されたそうです」

「うん、それで?捜査はどうするの?」
「やだなあ、夜野さん。捜査なんてできるわけ無いでしょ
山のように目撃者がいるんだから」
「まあな、床板を逮捕できるわけないなあ」
「実は三日前はサウナルームの扉が開かなくなって
男性が二人亡くなっているんです」
「なるほど」
「それで、地獄タクシーの夜野さん犯人は分かっているでしょ」
「まあね、犯人は人の汗を好む鬼だろう」
「鬼?」

「ああ、人を食う鬼だ、あの時一瞬床に鬼の顔が見えた」
「どうやって捕まえる事ができるんですか?」
「鬼のノブが無いと・・・・。その前に魔美を探さないと・・・・。」
「何言っているんですか?」

礼司は少し考えるとエンジンをかけた。
「よし行くか」
「どこへ?」
「全然寺、じゃあまた」
「夜野さん、私はどうすればいいんですか?」
「あはは、あんたじゃ無理だよ」
礼司は浜田を置いてタクシーを走らせ中野に向かった
タクシーを運転しながら礼司は
魔美のいない不安に陥っていた

「魔美、このままお前が戻ってこなかったら、鬼は退治できないぞ」
礼司が中野に着くと全然寺を尋ね呼び鈴を押した。
「こんばんは」
「ああ、夜野さんどうしたんですか?」
住職の奥さんが出てきて言った
「あの良くここに来ていた魔美ちゃん
最近見かけないけど・・・・」

「魔美ちゃん?」
「はい、女子高生の」
「知らないわ、誰の事かしら?」
礼司は住職の奥さんにそっけなく返事をされた
「あいつ、人の記憶消したな」
礼司はつぶやいた

「そうそう、明日お通夜があるから
九時に来ていただけるかしら」
「はい」
そう言って玄関を出ると礼司の携帯に
付けていた鬼の根付の目が光った
「ん?」
礼司は裏手にある墓地に入った。
すると暗がりに白く光る墓石が見えた。
「おお。あそこか」

そこに行って墓石を見ると礼司は唖然とした『夜野家の墓』
「夜野家?」
礼司奇妙な感覚を感じて排石をずらし
カロート(納骨堂)を覗き込んだ

「あれ?」
礼司が懐中電灯で中を照らすと中の石板が外れていた

「しょうがねえな」
そう言って石板を元に戻した。
そこには骨壷が一つも無かった
そして礼司は排石を戻して手を合わせた。
「魔美戻って来いよ」
そう言って礼司は墓石に背を向けた



「うん」
魔美の声が聞こえた
「ん?」
礼司が振り返ると魔美が墓石の前に立っていた
「お、お帰り」
「ただいま」
魔美はにっこりと笑っていた。

そして、脇には巨大猫乱丸と
ダルメシアンのナイルが座っていた
「元気だったか」
「うん」

ナイルは脇に座って礼司の手をペロペロと舐めて
乱丸は体を伸ばして礼司のズボンで爪を研いだ

「こら!乱丸」
礼司は乱丸の頭を軽く叩きながら
「鬼が出たぞ」
「うん、知っていたけどこっちへ来れなかった」
「墓石がこっちへ来るマシンなのか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

怖い話短編集

お粥定食
ホラー
怖い話をまとめたお話集です。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2024/12/11:『めがさめる』の章を追加。2024/12/18の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/10:『しらないこ』の章を追加。2024/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/9:『むすめのぬいぐるみ』の章を追加。2024/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/8:『うどん』の章を追加。2024/12/15の朝8時頃より公開開始予定。 2024/12/7:『おちてくる』の章を追加。2024/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 2024/12/6:『よりそう』の章を追加。2024/12/13の朝4時頃より公開開始予定。 2024/12/5:『かぜ』の章を追加。2024/12/12の朝4時頃より公開開始予定。

1分で読める怖い話

pino
ホラー
1分で読める怖い話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

人を選ぶ病

崎田毅駿
ホラー
治療法不明の死の病に罹った男の、命を賭した“恩返し”が始まろうとしている。食い止めねばならない。

うまなちゃんはもっと感じたい

釧路太郎
ホラー
 天才霊能力者栗宮院午彪と天才霊能力者栗宮院奈緒美の娘である栗宮院うまなは生まれる前から期待されていたのだが、残念なことに霊能力を持つことはなかった。  霊能力はないものの、持ち前の明るさと努力することを苦ともしない根性で勉強も運動も人並み以上にこなせており、人望も厚く学級委員長を任されるほどでもあった。  栗宮院うまなは両親からの寵愛を一身に受けすくすくと育ってはいたのだが、天才霊能力者である両親から生まれた事もあり、外野からの期待は栗宮院うまなにとって重いプレッシャーとなって圧し掛かっていき、家に帰ってくると自室へ閉じこもりふさぎ込むようになってしまった。  そんな彼女の様子を見かねた両親は信頼出来る友人である清澄真名のフォトスタジオでアルバイトとして働かせることで彼女に秘められた力を育てようとしたのであった。  清澄真名が代表を務めるフォトスタジオ零楼館は通常の写真とは別に心霊写真を収集して調査し、場合によっては除霊までを行う業務を行っているのだ。  栗宮院うまなは清澄真名のもとで修業し、一流の霊能力者になることが出来るのだろうか。  彼女にかかっているプレッシャーが軽くなることはあるのだろうか。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...