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第8話 凱旋
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さて、そろそろ冒険者ギルドに顔を出さないと。
「今までお世話になりました。それから昨日のシュークリーム、とても美味しかったです」
「ははは、あれくらいならいつでもご用意しますよ。用がなくてもぜひ遊びに来てください。本当におつかれさまでした」
勇者様とよく似た笑顔に送り出された。
冒険者ギルドの受付嬢が笑顔で出迎えてくれた。
「長旅おつかれさまでした!ギルドマスターがすぐに会いたいそうです」
有無を言わさず一番奥のギルドマスターの部屋に連れて行かれる。
「本当にご苦労だった。そして誰も引き受けなかったことを押し付けてしまい、大変申し訳なく思っている」
元冒険者で体格のいいギルドマスターが頭を下げる。
「いえ、いい経験をさせていただいたと思っています」
「ギルドの取り分からいくらかお前にまわすつもりだ。さて、これからどうするつもりかな?」
「まずは午後の凱旋パレードを見物して、しばらくはゆっくり休もうと思ってます。孤児院にも顔を出したいですしね」
ギルドマスターは小さくうなずいた。
「そうか。では今日の昼食は私が奢ろう。そして午後はこのギルド前でパレードを見るといい。街の中心部よりは観客が少ないだろうから観やすいと思うぞ」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」
そのまま分厚いステーキで有名な食堂に連れて行かれた。
ギルドマスターと比べたら半分以下の量のお肉ですっかり満腹になった私は、ギルドマスターと並んでパレードの到着を待っていた。
思っていたより人が多いが、街の中心部はこんなものではなかったらしい。
「お、来たようだな」
背が高いギルドマスターが遠くを見ながら言った。
さて困ったな。
私は背が低いので、このままじゃ何も見えないかもしれない。
「あの、ギルドマスター。私、ギルドの2階の部屋から見てもいいですか?」
すでに2階の窓からはたくさんの顔が見えている。
あそこにもぐりこませてもらおう。
「ん?ああ、背が低くて見えないのか。よし、俺が肩車してやろう!」
「はぁ?!」
ギルドマスターがしゃがむと、そばにいたこれまた元冒険者のサブマスターがひょいと私を持ち上げ、ギルドマスターの肩に乗せてしまった。
ギルドマスターが立ち上がると一気に視線が高くなる。
「降ろしてくださいっ!子供じゃないんですから肩車なんておかしいでしょう?!」
「ははは!細かいことは気にするな。それよりお前は軽すぎじゃないか?昼に食った肉も少なかったしな。もっと肉を食わせないといかんなぁ」
体格のいいギルドマスターは私がジタバタしてもびくともしない。
そうこうしている間にパレードが来てしまった。
パレードで使われるのは屋根がなくて華美な装飾が施された馬車である。
笑顔の王太子殿下夫妻や無表情の宰相様を乗せた馬車の後は、討伐の証明である魔王の角を載せた馬車が通っていき、いよいよ魔王討伐パーティを乗せた馬車が近付いてきた。
これが見納めだからしっかり目に焼き付けないと。
ジタバタするのも忘れて見ていると、馬車の上の人物と目が合った。
「見つけたっ!!馬車を停めてくれ!」
勇者様が叫んだ。
「えっ?」
パレードのためゆっくりと移動していた馬車は冒険者ギルドの真正面で停止する。
勇者様が魔術師様に何か合図をすると、私の身体はギルドマスターの肩の上からふわりと空中へ浮き上がった。
「え、ちょっと?!」
馬車の上にいる魔術師様の杖の動きに合わせて私の身体は空中を移動していく。
見物客達の視線が集まるけれど、今はそれどころじゃない。
そしてぽすんと勇者様の腕の中に降ろされた。
「よし、捕まえたっ!」
一仕事終えた魔術師様はふぅ~と息を吐き、賢者様と聖女様は満面の笑みを浮かべている。
「今までお世話になりました。それから昨日のシュークリーム、とても美味しかったです」
「ははは、あれくらいならいつでもご用意しますよ。用がなくてもぜひ遊びに来てください。本当におつかれさまでした」
勇者様とよく似た笑顔に送り出された。
冒険者ギルドの受付嬢が笑顔で出迎えてくれた。
「長旅おつかれさまでした!ギルドマスターがすぐに会いたいそうです」
有無を言わさず一番奥のギルドマスターの部屋に連れて行かれる。
「本当にご苦労だった。そして誰も引き受けなかったことを押し付けてしまい、大変申し訳なく思っている」
元冒険者で体格のいいギルドマスターが頭を下げる。
「いえ、いい経験をさせていただいたと思っています」
「ギルドの取り分からいくらかお前にまわすつもりだ。さて、これからどうするつもりかな?」
「まずは午後の凱旋パレードを見物して、しばらくはゆっくり休もうと思ってます。孤児院にも顔を出したいですしね」
ギルドマスターは小さくうなずいた。
「そうか。では今日の昼食は私が奢ろう。そして午後はこのギルド前でパレードを見るといい。街の中心部よりは観客が少ないだろうから観やすいと思うぞ」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」
そのまま分厚いステーキで有名な食堂に連れて行かれた。
ギルドマスターと比べたら半分以下の量のお肉ですっかり満腹になった私は、ギルドマスターと並んでパレードの到着を待っていた。
思っていたより人が多いが、街の中心部はこんなものではなかったらしい。
「お、来たようだな」
背が高いギルドマスターが遠くを見ながら言った。
さて困ったな。
私は背が低いので、このままじゃ何も見えないかもしれない。
「あの、ギルドマスター。私、ギルドの2階の部屋から見てもいいですか?」
すでに2階の窓からはたくさんの顔が見えている。
あそこにもぐりこませてもらおう。
「ん?ああ、背が低くて見えないのか。よし、俺が肩車してやろう!」
「はぁ?!」
ギルドマスターがしゃがむと、そばにいたこれまた元冒険者のサブマスターがひょいと私を持ち上げ、ギルドマスターの肩に乗せてしまった。
ギルドマスターが立ち上がると一気に視線が高くなる。
「降ろしてくださいっ!子供じゃないんですから肩車なんておかしいでしょう?!」
「ははは!細かいことは気にするな。それよりお前は軽すぎじゃないか?昼に食った肉も少なかったしな。もっと肉を食わせないといかんなぁ」
体格のいいギルドマスターは私がジタバタしてもびくともしない。
そうこうしている間にパレードが来てしまった。
パレードで使われるのは屋根がなくて華美な装飾が施された馬車である。
笑顔の王太子殿下夫妻や無表情の宰相様を乗せた馬車の後は、討伐の証明である魔王の角を載せた馬車が通っていき、いよいよ魔王討伐パーティを乗せた馬車が近付いてきた。
これが見納めだからしっかり目に焼き付けないと。
ジタバタするのも忘れて見ていると、馬車の上の人物と目が合った。
「見つけたっ!!馬車を停めてくれ!」
勇者様が叫んだ。
「えっ?」
パレードのためゆっくりと移動していた馬車は冒険者ギルドの真正面で停止する。
勇者様が魔術師様に何か合図をすると、私の身体はギルドマスターの肩の上からふわりと空中へ浮き上がった。
「え、ちょっと?!」
馬車の上にいる魔術師様の杖の動きに合わせて私の身体は空中を移動していく。
見物客達の視線が集まるけれど、今はそれどころじゃない。
そしてぽすんと勇者様の腕の中に降ろされた。
「よし、捕まえたっ!」
一仕事終えた魔術師様はふぅ~と息を吐き、賢者様と聖女様は満面の笑みを浮かべている。
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