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最終話 ずっと一緒に

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「なぁ、お前は俺のこと、どう思ってるんだ?」
 うっ、そうきましたか。

「き、嫌いじゃないですよ。ちょっと馬好きが行き過ぎてる時もあるけど、裏表がなくてさっぱりしてますし、気取ってなくて、いつでも真っ直ぐで、頼りがいがあると思ってます。馬術の指導でも必ず褒めてくださいますよね。おかげですごくやる気が出ます」

「そ、そうか」
 普通に戻りかけた殿下の顔がまた赤くなる。


 以前、殿下になぜ馬術競技をするのか聞いたことがある。

「ほら、騎馬隊とか馬を扱う部署って他にもいろいろあるじゃないですか」
「実は一時的に騎馬隊にいたことはあるんだ。でも、いくらみんなと同じに扱ってくれと言っても、どうしても気を使われちまうんだよ」
 そりゃあ殿下だもんねぇ。

「だけど馬術競技は馬と自分だけだ。身分なんて関係ない。ああ、そういえば治癒士もそうだな。あくまで自分の力だ。そういうところがいいのかもな」

 この人は立場的に私ではうかがい知れないものをたくさん抱えているのだと思う。

 でも、それを決して表に出すことはない。
 この人のそんな強さも好きだ。


 殿下が不意に立ち上がってベンチに座っている私の背後に回り、私のポニーテールをいじり出す。

「な、何してるんですか?!」
「俺の瞳と同じ色のリボンを結んだだけだ。プレゼントだよ。なぁ、この可愛らしい馬のしっぽは俺だけのものになってくれるか?」
 あ、たぶん今ポニーテールに口付けされてる。

 私は無言で小さくうなずくと、殿下は背後から抱きついてきた。
「お前、耳まで真っ赤だぞ」
 お願いだから耳元でささやかないで~!


「旅の治癒士、数年先になるだろうが新婚旅行を兼ねて本気でやるからな」
 えっ、新婚旅行なの?!

「そして旅を終えたら俺は王宮所属の治癒士、お前も王宮の動物治癒士になる予定だからよろしくな」
「へっ?」

「俺は王族を離れても国のために働くつもりだ。だったらお前も王宮勤めの方がいいだろ?」
「が、がんばります」


 本当はアルバイト先の院長から就職の話があった時、王宮の動物治癒士の話も少しだけ聞いていた。

「王宮側に動物と話せる能力を知られているから、ほぼ間違いなく将来的に話が来るだろうな。ただ、その能力だけでやっていけるほど甘くはないぞ」

 うん、わかってる。
 動物治癒士として誰もが認めるくらいの実力を身につけなきゃいけないってことだよね。



『ちょっと、お2人さん!それ以上いちゃつくんなら、どこかよそでやってくれないかしら?!』
 近くにいた芦毛の牝馬が不機嫌そうに前足で地面を掻く。

『それからそこの貴女!その人が選んだ女性だから、しかたないけど認めてあげるわよ。でも、彼の1番のパートナーはこの私!貴女は2番目だってことを肝に銘じておきなさいよね!』
 パートナー歴が長いのは彼女の方だから、そこは素直に受け入れる。
「はい、これからもよろしくお願いしますね」


「おい、あいつは今なんて言ったんだ?」
 殿下に聞かれたので、しかたなくさっきの会話を伝える。

「ははは!どちらが一番ってことはないさ。俺にとってはどちらも大事だからな。さて、彼女を送ったらまた戻ってくるから、待っててくれよな」

 殿下は芦毛の牝馬の首を軽くなでてから、私と指を絡める手の繋ぎ方で歩き始める。
 芦毛の牝馬が何かつぶやいたようだったけど、すでに離れていてうまく聞き取れなかった。


『やれやれ。鈍い2人がやっとくっついたわね。ホント、人間って世話が焼けるわ』
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花雨
2021.08.11 花雨

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