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第1話 動物治癒士

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「次の方どうぞ」
「先生、よろしくお願いします」
 扉を開けて入ってきたのは年配の男性。
 患者さんは男性が持っている小さな籠に入っている白文鳥だ。

 先生などと呼ばれているけれど、私はまだ見習いの動物治癒士だ。
 魔法学院の学生である私は、午後の授業がない日と土曜日にこの動物病院で働いている。
 受付である程度判断してくれて、私でも対処できるものをまわしてくれる。そして診療室では院長が書類仕事をしながら見守ってくれている。

「鳥に不慣れな来客が驚かせてしまい、籠の中で暴れてしまって翼を傷めてしまったようなんです」
 私が生まれる少し前あたりから王都では小鳥の飼育が流行し始め、今ではすっかり定着して愛好家も多い。

 飼い主の男性が症状を説明しているのだが、籠の中の白文鳥は目が会ったとたん私のことを見抜いたらしく、騒ぎ立てている。

『ねぇねぇ、ちょっと聞いてよ!この人の孫とかいう男の子が突然私の籠を揺さぶったのよ!すっごく怖かったんだから。それでパニックになっちゃって、翼をぶつけてしまったみたいなの。この痛み、早くなんとかならないかしら?』

「それは大変でしたね。ではこれから診察しますね」
 どちらにも違和感がないように言葉を選んで私は答える。
 いつのまにか院長が私の隣に立っていた。


 鳥籠に手をかざす。
 診たところ問題があるのは翼だけで、身体の内部は問題なさそう。
 院長の方を見ると、私の表情で察したのか無言でうなずいていた。

「では治療しますね」
 かざした手から淡い光が生まれて白文鳥をつつんでいく。
 光が消えると白文鳥は穏やかな鳴き声に変わった。

「はい、治療が終わりました。これでもう大丈夫ですよ」
 ずっと心配そうな顔をしていた飼い主の男性がホッとした表情に変わる。

「先生、ありがとうございます!」
『すごい!痛くなくなったわ!貴女、若いのにいい腕してるわね』
 白文鳥も納得してくれたようだ。

「どういたしまして。お大事に」



 子供の頃に誰もが行う神殿での儀式で、私は動物に特化した治癒魔法持ちという判定を受けた。

 治癒魔法に限ったことではないが、魔法は経験を積むことで出来ることが増えていき、魔力量も上昇していくと言われている。

「ちょっと前まで出来なかったことが、気がつくと出来るようになっているって感じなんだよなぁ」
 院長や動物病院の先輩も口を揃えてそう言う。

 働き始めた頃は軽い外傷しか治せなかったけど、今の私は単純な骨折なら治せるし、身体の内部も異常の有無だけならわかるようになってきた。

 魔法学院では魔法を使うアルバイトを推奨していて仲介もしてくれる。
 この動物病院も学院から紹介されたところで、院長をはじめ先輩方がいろいろ教えてくれるのでとても勉強になる。

「俺達も師匠や先輩にいろいろと教わってきたから、後進を指導するのも役目の1つだと思ってるよ」
 私では治療できなかったり判断がつかない場合は院長や先輩にまわす。そして説明を受けながら学んでいくのだ。
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