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第3話 別離
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酒場から少し歩いたところにある公園のベンチに座る。
女冒険者さんは屋台のクレープを2つ買って、1つを僕にくれた。
「僕がおごります」
そう言ったけど、
「そういうことは自分で稼いでから言いな」
と言われ、出させてもらえなかった。
「僕、貴女が兄様の恋人だったことを知ってしまいました」
小さなため息が聞こえた。
「ああ、そのことか。もう昔の話だ。こっちは捨てられちまった立場だしな」
「捨てられたの?」
「ああ。何があっても一緒にがんばるって言ったのに『君に苦労をかけたくない』の一辺倒でさ。変なところで頑固なんだよ、あの人は」
苦笑いする女冒険者さん。
やっぱり聞くのが少し怖いけれど、勇気を出して聞いてみる。
「貴女は、兄様を嫌いになったわけじゃないんだよね?」
「ああ、今でも好きだよ。だけど、あの人の邪魔にはなりたくないんだ」
そこには兄様と同じような寂しげな笑顔があった。
そんな表情を見た僕は、この人に兄様の想いを伝えなきゃ、と思った。
「あ、あのね、兄様も貴女のことが今でも好きで、幸せになってほしいって言ってたよ」
女冒険者さんは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
無言で残りのクレープを食べ終えた女冒険者さんが僕の方を見た。
「なぁ、坊ちゃん。1つ聞いていいか?」
「うん」
「アンタの兄ちゃん、新しい縁談とか来てるのかい?」
僕は首を横に振る。
「ううん。水害の後処理で問題がまだ山ほどあるから、そんな話はこないみたい」
「そっか」
「本当は何も言わないでいるつもりだったんだけど、坊ちゃんには言っておこうか」
女冒険者さんが立ち上がる。
「アタシ、もうすぐこの街を去るんだ。冒険者も辞める」
「えっ?!」
驚いて僕も立ち上がる。
「他にやりたいことが出来たんだ。そのためによそへ移ることにした」
女冒険者さんは、しゃがんで僕に目線を合わせてくれた。
「本当は前から迷ってた。でも、坊ちゃんのプロポーズで気がついたんだ。アタシも勇気を出さなきゃ!ってね」
僕は涙がこぼれそうになるのをこらえる。
「もう、会えないの?」
「きっとまた会えるさ。それまで兄ちゃんを支えてがんばりな」
声を出すと泣き出してしまいそうなので、こくこくとうなずいた。
「悪いがプロポーズは受けてやれないけど、坊ちゃんのことは好きだよ。アンタはいい男だ」
女冒険者さんは僕の頬にキスだけ残して振り返ることなく去っていった。
誰もいなくなった公園で僕は大泣きした。
ようやく泣き止んで家に帰ったら、兄様に真っ赤になった目を驚かれた。
なんとか言葉を繋いで女冒険者さんがいなくなることを兄様に話すと、
「そうか」
と一言だけこぼした。
女冒険者さんは屋台のクレープを2つ買って、1つを僕にくれた。
「僕がおごります」
そう言ったけど、
「そういうことは自分で稼いでから言いな」
と言われ、出させてもらえなかった。
「僕、貴女が兄様の恋人だったことを知ってしまいました」
小さなため息が聞こえた。
「ああ、そのことか。もう昔の話だ。こっちは捨てられちまった立場だしな」
「捨てられたの?」
「ああ。何があっても一緒にがんばるって言ったのに『君に苦労をかけたくない』の一辺倒でさ。変なところで頑固なんだよ、あの人は」
苦笑いする女冒険者さん。
やっぱり聞くのが少し怖いけれど、勇気を出して聞いてみる。
「貴女は、兄様を嫌いになったわけじゃないんだよね?」
「ああ、今でも好きだよ。だけど、あの人の邪魔にはなりたくないんだ」
そこには兄様と同じような寂しげな笑顔があった。
そんな表情を見た僕は、この人に兄様の想いを伝えなきゃ、と思った。
「あ、あのね、兄様も貴女のことが今でも好きで、幸せになってほしいって言ってたよ」
女冒険者さんは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
無言で残りのクレープを食べ終えた女冒険者さんが僕の方を見た。
「なぁ、坊ちゃん。1つ聞いていいか?」
「うん」
「アンタの兄ちゃん、新しい縁談とか来てるのかい?」
僕は首を横に振る。
「ううん。水害の後処理で問題がまだ山ほどあるから、そんな話はこないみたい」
「そっか」
「本当は何も言わないでいるつもりだったんだけど、坊ちゃんには言っておこうか」
女冒険者さんが立ち上がる。
「アタシ、もうすぐこの街を去るんだ。冒険者も辞める」
「えっ?!」
驚いて僕も立ち上がる。
「他にやりたいことが出来たんだ。そのためによそへ移ることにした」
女冒険者さんは、しゃがんで僕に目線を合わせてくれた。
「本当は前から迷ってた。でも、坊ちゃんのプロポーズで気がついたんだ。アタシも勇気を出さなきゃ!ってね」
僕は涙がこぼれそうになるのをこらえる。
「もう、会えないの?」
「きっとまた会えるさ。それまで兄ちゃんを支えてがんばりな」
声を出すと泣き出してしまいそうなので、こくこくとうなずいた。
「悪いがプロポーズは受けてやれないけど、坊ちゃんのことは好きだよ。アンタはいい男だ」
女冒険者さんは僕の頬にキスだけ残して振り返ることなく去っていった。
誰もいなくなった公園で僕は大泣きした。
ようやく泣き止んで家に帰ったら、兄様に真っ赤になった目を驚かれた。
なんとか言葉を繋いで女冒険者さんがいなくなることを兄様に話すと、
「そうか」
と一言だけこぼした。
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