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第4話 訪問
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先生の魔道具工房を訪問する日。
家を出て、まず王都の商業街にある大手の菓子店に注文しておいたお菓子を受け取る。手土産として持って行くためだ。
郊外にある先生の工房へ向かう馬車には私とメイドが乗っている。
私1人での行動は家族に許されていないからだ。
移転した先生の魔道具工房は、ご家族の住居も兼ねているため思っていたより大きな建物だった。
「いらっしゃい!待っていたよ」
先生とご家族の皆さんが工房の前で出迎えてくださった。
「はじめまして!私がこいつの姉で、こっちが妹よ」
お会いするのは初めてだけど、魔道具で聞きなれた声が飛んできた。
さっそく左手首の魔道具を操作して答える。
『はじめまして』
『よろしくお願いいたします』
妹さんの方が魔道具をのぞきこむ。
「なるほど。こんな風に私達の声が使われているのね」
メイドが持参した手土産のお菓子をお姉さんに手渡す。
「うわぁ!これって王都で有名な菓子店のものよね?ありがとう!」
お姉さんも妹さんも大喜びしてくれた。
「先に工房を見学していただいてからお茶にするから」
先生がお姉さん達にそう伝えると、お2人はうなずいた。
「では私達は支度をしてくるので、ごゆっくりどうぞ」
「にぎやかですまないね」
お姉さん達が去ってから苦笑いする先生に、私はすぐにボードを取り出して書き込む。
『明るくて素敵な方達ですね』
「そう言ってもらえるとうれしいね。さて、まずは工房を案内しようか」
先生は使っている道具や筆談用ボードの改良版などを説明してくれて、実際に触らせてくれたりもした。
「やぁ!魔道具師さん、こんにちは」
工房の扉が突然開き、身なりのいい見知らぬ男性がずかずかと入ってくる。
「今日はお会いする約束はなかったと思いますが?」
先生が不機嫌そうな低い声で答える。
「いや、ちょうど通りかかったものでね。先日の件、そろそろ考えていただけたかなと思いまして」
おそらくお父様から聞いた提携話を持ちかけている商会の方なのだろう。
「今は来客中ですので、お引き取り願えませんか」
なんだか不快な笑顔を浮かべる男性の視線が私を捉える。
「おやおや、お嬢さんは見覚えがありますね。さては、うちが提携を持ちかけていることを知って、傷物令嬢が自ら身体を使って彼を口説き落としに来られたのですかな?」
ドン!
先生がこぶしで壁を思い切り叩いていた。
「友人の妹を侮辱するような奴と仕事なんかできるか!もともと断るつもりでいたが、もう我慢ならん!日を改めて正式に断りの書状を出すから、もう二度とここに顔を出すなっ!」
先生が男性を力ずくで外に押しやり、すぐに扉を閉めて鍵をかけた。
追い出された男性は扉を激しく叩いて何か叫んでいたけれど、先生が机の上にあった黒くて小さな魔道具を操作すると何も聞こえなくなった。
「これはまだ開発中の防音の魔道具なんだ」
そして先生は私に向かって直立不動の体勢をとった。
「貴女に不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした」
先生がやけに丁寧に詫びて頭を下げるので、急いでボードに書き込む。
『気にしないでください。悪いのは先生ではないのですから』
頭を上げた先生がこちらを見る。
「さっきの出来事にあまり困惑していないということは、もしかしてこの工房に他から誘いがあることを聞いてたのかな?」
『はい』
左手首の魔道具ですぐに答えると、先生はため息をついた。
「先ほどの男性は提携話を持ってきた商会の副会頭なんだ。会頭は紳士的な方で、まずは話だけでも聞いて欲しいということで会ったんだけど、副会頭の方はうちを見下すような態度な上に、金さえあればどうにでも出来ると思っているようで、正直ずっと腹が立ってた。この機会にきっぱり断ることにするよ」
先生に聞きたいことをボードに書き込む。
『よろしいのですか?あちらは大金を提示していると聞きましたが』
「いいんだ。別に急いで資金が必要なわけじゃないし、未発表や開発中の魔道具だってまだいくつもある。それに何よりも大切なことがあるしね」
不思議に思って首をかしげると、先生は微笑んだ。
「それは君の存在だよ」
私、先生に何かしてしまったのかしら?思い当たることがないんだけど。
「少し話をしようか。そこに座ってくれるかな」
家を出て、まず王都の商業街にある大手の菓子店に注文しておいたお菓子を受け取る。手土産として持って行くためだ。
郊外にある先生の工房へ向かう馬車には私とメイドが乗っている。
私1人での行動は家族に許されていないからだ。
移転した先生の魔道具工房は、ご家族の住居も兼ねているため思っていたより大きな建物だった。
「いらっしゃい!待っていたよ」
先生とご家族の皆さんが工房の前で出迎えてくださった。
「はじめまして!私がこいつの姉で、こっちが妹よ」
お会いするのは初めてだけど、魔道具で聞きなれた声が飛んできた。
さっそく左手首の魔道具を操作して答える。
『はじめまして』
『よろしくお願いいたします』
妹さんの方が魔道具をのぞきこむ。
「なるほど。こんな風に私達の声が使われているのね」
メイドが持参した手土産のお菓子をお姉さんに手渡す。
「うわぁ!これって王都で有名な菓子店のものよね?ありがとう!」
お姉さんも妹さんも大喜びしてくれた。
「先に工房を見学していただいてからお茶にするから」
先生がお姉さん達にそう伝えると、お2人はうなずいた。
「では私達は支度をしてくるので、ごゆっくりどうぞ」
「にぎやかですまないね」
お姉さん達が去ってから苦笑いする先生に、私はすぐにボードを取り出して書き込む。
『明るくて素敵な方達ですね』
「そう言ってもらえるとうれしいね。さて、まずは工房を案内しようか」
先生は使っている道具や筆談用ボードの改良版などを説明してくれて、実際に触らせてくれたりもした。
「やぁ!魔道具師さん、こんにちは」
工房の扉が突然開き、身なりのいい見知らぬ男性がずかずかと入ってくる。
「今日はお会いする約束はなかったと思いますが?」
先生が不機嫌そうな低い声で答える。
「いや、ちょうど通りかかったものでね。先日の件、そろそろ考えていただけたかなと思いまして」
おそらくお父様から聞いた提携話を持ちかけている商会の方なのだろう。
「今は来客中ですので、お引き取り願えませんか」
なんだか不快な笑顔を浮かべる男性の視線が私を捉える。
「おやおや、お嬢さんは見覚えがありますね。さては、うちが提携を持ちかけていることを知って、傷物令嬢が自ら身体を使って彼を口説き落としに来られたのですかな?」
ドン!
先生がこぶしで壁を思い切り叩いていた。
「友人の妹を侮辱するような奴と仕事なんかできるか!もともと断るつもりでいたが、もう我慢ならん!日を改めて正式に断りの書状を出すから、もう二度とここに顔を出すなっ!」
先生が男性を力ずくで外に押しやり、すぐに扉を閉めて鍵をかけた。
追い出された男性は扉を激しく叩いて何か叫んでいたけれど、先生が机の上にあった黒くて小さな魔道具を操作すると何も聞こえなくなった。
「これはまだ開発中の防音の魔道具なんだ」
そして先生は私に向かって直立不動の体勢をとった。
「貴女に不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした」
先生がやけに丁寧に詫びて頭を下げるので、急いでボードに書き込む。
『気にしないでください。悪いのは先生ではないのですから』
頭を上げた先生がこちらを見る。
「さっきの出来事にあまり困惑していないということは、もしかしてこの工房に他から誘いがあることを聞いてたのかな?」
『はい』
左手首の魔道具ですぐに答えると、先生はため息をついた。
「先ほどの男性は提携話を持ってきた商会の副会頭なんだ。会頭は紳士的な方で、まずは話だけでも聞いて欲しいということで会ったんだけど、副会頭の方はうちを見下すような態度な上に、金さえあればどうにでも出来ると思っているようで、正直ずっと腹が立ってた。この機会にきっぱり断ることにするよ」
先生に聞きたいことをボードに書き込む。
『よろしいのですか?あちらは大金を提示していると聞きましたが』
「いいんだ。別に急いで資金が必要なわけじゃないし、未発表や開発中の魔道具だってまだいくつもある。それに何よりも大切なことがあるしね」
不思議に思って首をかしげると、先生は微笑んだ。
「それは君の存在だよ」
私、先生に何かしてしまったのかしら?思い当たることがないんだけど。
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