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第二部

テオドールの家族①

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「おいおい、ウチの城になんつーもんを持ち込んでくれてんだ。連中はとっ捕まえてキビッシイ罰をあたえてやらんとなぁ?」
「では尋問が終わったら引き取っていただけるのですね」
「ああ、一切合切いっさいがっさい引き受ける」


頭をガシガシとかいたテオドール王子は口元を歪めて吐き捨てた。こめかみには青筋が浮かびかなり怒りを覚えているようだ。ヴラドは邪神信仰者の引き取り先が決まり「面倒が減って助かるわー」といわんばかりに晴れやかな顔になっている。引き取り先がなかったらあの連中はどうしたのかは聞くに聞けない。


「はあ~、持ち込んだ目的は、女神に瘴気を送り込むためか」
「だが入り口は閉ざされているのだからできぬはずだろう?」
「いや、やりようはある。地下神殿に瘴気を送り込む方法がな。続きは王妃の部屋の魔法陣を見ながらだ」


王子の予想に魔王が呼応し、一行は王妃の部屋へと移動することにした。大人数で静かに廊下を進みながらわたしの前にいた王子がポツリとこぼした。


「母上の部屋はあまりに思い出にあふれる特別な場所だったから、普段は足を運んでいなかったがもっと頻繁に出入りしておくべきだったな」


王子の言葉に、亡き母親の部屋を何者かに利用された悔しさと後悔を感じ取った。なんだかいつも前向きな彼が気落ちしているのが心配で気が紛れればと思い声をかけた。


「お母様の部屋には昔はよく行っていたのですか?」


すると誰かに返事を返されると思っていなかったのかテオドール王子は面食らった顔をしたけれど、ちょっと恥ずかし気にしながら口を開いた。


「ああ、毎日行っていた。四つ下の妹が生まれて間もない頃から。赤子の妹は母の部屋に一緒にいたから、講師の授業の合間にしょっちゅう顔をだしてやれ笑っただ、ハイハイするようになっただ毎日新鮮で。母には「来すぎでうっとうしい、授業に集中しろ!」と怒られた。妹思いな息子に酷くないか?」


どうやら兄馬鹿だったようで今の兄妹仲は王女が赤ちゃんの頃からのようだ。


「ふふっ、お母様ともずいぶん気安い物言いをする間柄だったんですね。なかなか息子さんにうっとうしいは言わないでしょう」
「あー、そうかもな。母はちまたで言う肝っ玉母さんで気が強く感情豊かな人だった。息子の俺も叱り飛ばすし、時には頭にゲンコツももらった」
「お、王妃様がゲンコツ」
「ははっ、侍女も目ん玉飛び出していたな! 口調も堅苦しくなく砕けたものだったし…ん? 俺のこの砕けた言葉遣いは俺がガサツなわけではなく母から受け継いだものか? 血は争えないとはいうが、なんだ俺は悪くなかったんじゃないか? 注意してきた講師たちに''親譲りだから仕方ない"と言い返しておけば良かった」
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