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第二部

魔王とアーサー①

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「面倒だが牢に繋がるのは嫌だったから仕方なく奴の部下になった。そうしたら人遣いが荒くて死線にばかり送り込まれてな。腹が立って何度もぶっ殺してやろうとしたが向こうは互角に俺と渡り合ってきてなんだかんだでいつの間にやら友になっていた」

喧嘩して友情が芽生えたとかほんとにどこのヤンキー漫画だ。
そしてところどころ危ない発言があるな。
うん、なんて言ったらいいのか…
昔語を聞けば聞くほど理想の勇者像が揺らいでいくし、魔王もかなり、元ヤンというか、やんちゃな気配がする。
けど、魔王の過去を知るいい機会だ。
気になっていたものの、安易に踏み込むのは気分を悪くさせるかと思っていた。けれどアーサーとの昔話をする姿は楽しそうにしている。この様子なら少し聞いても良さそうだ。

「2人が出会ったのは今のエルグラン王国の辺り?」
「いいや、大陸北部の王国だ。今はこの魔王支配地域になり瘴気まみれの人の住めない土地になっている。さっき話した暴君の治める帝国に隣接していて戦の絶えない国だった。侵略戦争を持ち堪えていたのはひとえに騎士団が強かったからだな。実力主義で強い人材は出自に関係なく取り込んでいたのが功を奏したようだ」
「あなたのように?」
「俺が一番の見本だろうな。戦場で功績をたてて一介の冒険者から騎士団の副隊長になった」

戦場というのが胸が痛いけれど、侵略者相手に防衛してる側に道徳心をどうこう言えない。

「第五騎士団隊長だったアーサーに副隊長の俺。正攻法で戦う奴を、俺が脇から手助け、それが上手く回ってどんどんのし上がっていきついには第一騎士団隊長に奴がなり、俺はそのまま副隊長をやっていた。貴族階級や上の世代のオッサンどもを飛び越えての大出世さ。アーサーも貴族の出だったが下級貴族だったからいいところのボンボンにコケにされていた。それが騎士団のトップになった時のそいつらの顔は見ものだった」

階級社会は面倒なのがいるなぁ。
実力で黙らした親友コンビ格好いい。

「すごい出世。ウィルのご先祖様優秀なんだ」
「む、なんだ俺は優秀じゃないのか?」

魔王が面白くなさそうな顔をしている。
なに、そのかわいい反応。

「いやいや、もちろん魔王も優秀だと思ってるよ」
「本当かぁ?」
「本当本当。それにしてもそんなに出世するには苦労が多かったんじゃないの? なにかやりたいことでもあったの?」
「アーサーがな」
「アーサーが?」
「王女を嫁にもらうために功績が必要だったのさ」
「えっ」
「二人は恋仲だった」

初代勇者さんは聖女様と結婚したのでは…

「変わった女だった。自分は前世の記憶があり、異世界からの転生者だと言っていた」
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