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第二部

ゼルマとアルマ、ジョゼフィーヌ②

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「いいえ、二人はなにも粗相をしていないの。わたしが急に声をかけたから怖がらせてしまったようでごめんなさい」
「ではお許しいただけるのですね?」
「許すも何も悪いことはしていないんだよ」
「そうですか。じゃあ二人とも立っても?」
「もちろん」
「ありがとうございます」


少年は冷静に状況を把握してお咎めなしと判断すると二人を促して立たせた。しかしまだ震えていて怯えている。なんだかわたしが虐めているようだ。


「ねえ、あなたたち名前は?」
「僕はゼルマで、こっちは妹のアルマです。メイドはジョゼフィーヌです。申し訳ありません、使用人でありながら姿を晒してしまいました」


今度は少年が謝ってくるけど、この謝罪は魔王がいっていた「主人たちの前に姿を現してはいけないという使用人の規律を厳守している」という理由かららしい。


「気にしないでお話して? わたし直接会って話したかったんだ。ジョゼフィーヌさんがわたしのお風呂の用意やベッドを整えてくれているの? いつもありがとう」


そう言うと布ごしのジョゼフィーヌはハッとしたように息を飲むと深々と頭を上げた。


「よかったね、ジョゼフィーヌ」
「うんっ、よかったねジョゼっ」


ゼルマとアルマはジョゼフィーヌが感謝されて喜んでいる。アルマの方は特ににこにこしている。仲のいい間柄のようだ。


「ゼルマとアルマもこの城で使用人をしているの?」
「僕らは見習いみたいなものです」
「わ、わたしはジョゼにお仕事を教えてもらっているの…  ゼルマはお外でお仕事をしているの」
「簡単なお使い程度のことを少し」


外でというと魔王の言っていた仕事のどれかをやっているのだろう。こんな10歳いったかどうかくらいの小さな子も働いているのか。


「二人とも偉いね。お仕事はどう? 楽しい?」
「やりがいがあります」
「わ、わたしもそう、です。お仕事うまくできると褒めてもらえるから」


ゼルマは胸を張るように、アルマはモジモジと恥ずかしそうにしながら。どちらも仕事にやりがいをもっているようだ。そして妹がかわいいわー。


「お近づきの印にこちらを贈らせてください」


ゼルマは花瓶に挿す前の赤い薔薇を一輪手に取ると、跪いてわたしに差し出してきた。
キザな言動に面食らいつつ薔薇を手に取ると違和感がある。これは生花じゃない。紙でできた造花?


「実はこの城にある花瓶の花は全部造花なんです。魔王支配下の土地では植物が育たないのですが、城内があまりに殺風景なので使用人たちで作って飾っているんです」
「全然気づかなかった… みんな器用だね~」


でも城内は瘴気があらかたなくなったから植物も育てられるようになるかもしれない。
あ、そういうことなら中庭の土を浄化すれば、中庭で植物が育つかも?
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