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第二部

魔導書の魔物討伐ー初級〜中級編ー①

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魔王はどこからか黒い長剣を出現させ抜刀した。
それは冒険者リュシオンとして聖教会で同行していたときに手にしていた剣だとすぐにわかった。


「どこから取り出したの?」
「私室に置いてあったものを転移させた」
「転移って手元に引き寄せることもできるんだ。便利だね」
「お前も覚えればいい」
「それが聖女の神聖魔法以外覚えても発動しないんだよ」
「そうなのか?」


転移や鑑定など便利そうで使いたいと思って試したことがあるのだけど、なんにも実らなかったのだ。
聖女の専用魔法である神聖魔法は対瘴気には万能なんだけどそれ以外は用をなさない。
暗闇で便利な「ライト」も、点火にも野生動物への攻撃にも便利な「ファイア」も使えない。
なんとか回復とか解毒ができるのは良かったけどもっと色々応用ができる魔法も使えるようになりたかった。


「お二人とも準備はいいですか?」
「ああ、俺が前衛でツヴァイは魔法で攻撃、リンカが浄化でできるだけ倒せ。こぼれたのは俺が片付ける」
「わかった」
「でははじめましょう」


ツヴァイは魔導書を片手に持って、1ページ目のスライムからずらっと20…いや30体以上の低級の魔物を一気に読み上げた。…多すぎじゃない?
彼は魔導書は持ったまま涼しい顔で魔法を唱えている。とっても余裕そう。
魔法陣から飛び出したそれらはスライム、スカイバット、ウルフ、ホーンラビット、キラービーなどの冒険の始まりに出会う魔物ばかりだ。
しかし数が多く中庭が魔物でいっぱいになった。


「ブリザード」


大量の魔物もなんのその、ツヴァイが広範囲に魔法を放ち魔物たちを全て凍り付かせ動きを封じた。


「ホーリージャベリン」


そこをすかさずわたしが神聖魔法で光の槍を無数に降らして浄化し魔物はすべて霧散した。
想像以上にあっけなく倒せてしまった。


「では次いきます」


間を置かずにツヴァイは次に中級のモンスターをこれまた大量に呼び出した。読み上げた魔物を数えたら32体だった。2人には雑魚なのかもしれないけどさぁ、やっぱ多すぎ。
リザードマン、サーベルタイガー、ゴーレム、ファントム、宝箱…の蓋が開き妖しく黒い触手のようなモノが蠢いているからミミックか、などが現れた。


「アイスウォール」


ツヴァイが巨大な氷の板を宙空に複数枚生み出し、重力に従いドスンドスンと重い音を立てて荒れた大地に突き刺さっていく。
その氷の檻が完成する前に3匹の魔物、足の速いサーベルタイガーと幽体のファントムと飛行タイプのハーピーが抜け出した。

サーベルタイガーは大きな牙を剥きながらその俊足を存分に発揮してこちらに迫る。
飛びかかってきたサーベルタイガーのまさにその名のとおりサーベルの如き形状の牙を、魔王が手にした剣で受け止めた。
一度弾くと返す刃で下から切り上げ首を落とした。一刀両断。
軽くやっているけれどこいつもわたしたちは素早い動きに翻弄されながら頑張って倒したんだけどな…

霧散しはじめたサーベルタイガーにやるせなさを感じていたところに空からハーピーが襲いかかる。
思わずしゃがみ込むとわたしの頭があったそこに鳥の足を広げてハーピーが滑空してきた。
そのハーピーを迎えるのは横なぎに振るわれた黒い剣。魔王が斬り裂きハーピーは足先から分たれて軌道をそのままにわたしを飛び越えた先の地面に落下した。

そういえばハーピーは上半身が女性で鳥の翼と下半身だけど、もしかしてあのメデューサの少女のように元は人間だったのだろうか。


「どうした」


魔王がわたしの顔を様子をうかがうように見ていた。
いや、今は戦いの最中だから考えるのは後だ。


「ううん、なんでもない」
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