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第一部

邪神と初代勇者の伝説①

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「ここから先は良いと言うまで会話はお控えください。敵に位置を気づかれてしまう恐れがあります」


 断りを入れまずはミハイルさん率いる聖騎士たちがスイスイ入っていく。
 なんともおかしな光景に目をぱちぱちと瞬きしてみるけど変わらない光景に見間違えではないことを納得した。


 隠し通路を使った脱出はこの部屋にいたものたちだけですることにした。
 ロンバルディ王国からきた全員が動けばば敵にすぐ動きがバレてしまう。
 残ったみんなにはわたしたちを出口まで案内してから戻り教皇と聖騎士たちから説明するとのこと。
 危害が加わらないように身辺を守り、必ず無事にロンバルディ王国に返すと言質をもらった。
 

 教皇、ウィル、フェルが入って行き、自分の番になったけれど宗教画を蹴るような入り方に罪悪感が湧く。
 まあ、さっきからバンバン宗教人が足突っ込んでいますけど。
 すぐ後ろのリュシオンは全く気にしなさそう、と思ったけど幻影の油絵をじっと見つめていた。
 見られていることに気付いて「早く入れ」と言うように顎をしゃくって急かしてきたのでわたしも油絵の幻影に恐る恐る踏み入りその先の通路へ足をつけた。

 
 通路は壁に沿って一人分が立って歩けるように作られていた。
 一行は縦一列に並び先導する前の人について狭い隠し通路を進んで行く。

 歩き出してすぐフェルが顔だけこちらを向いて小声で話しかけてきた。


「リンカちゃん、この先でなにか問題が起きたらリンカちゃん自身のことを最優先で行動するんだよ。いざとなったらみんなを置いて逃げたっていい」


 不吉なことを言うフェルに驚いた顔を返してしまう。
 フラグを立てたのではないだろうか。やめてほしい。

 
「ここに来てから問題ばっかり起きてるからね。もしもの心構えをしないと。おれでも、ウィルでも、胡散臭い後ろのヤツだっていい、頼るんだよ? 最悪な展開はリンカちゃんとウィルが死んじゃうことだ。それは絶対駄目だ。二人が聖女と勇者ってのはあるけど…友達だから、嫌だ」


 友達だと思ってくれてたんだ。
 純粋にわたしとウィルを大事だって言ってくれてる。嬉しい。


「ありがとうフェルくん。さっきも教皇様にわたしたちのために怒ってくれたよね。ありがとう」

「友達のために怒るのは当然でしょ?」


 フェルはおどけてから前を向いて話はこれまでとばかりにだんまりした。
 その前にいるウィルに「ありがとう」と言われ二の腕をひっぱたいている。
 彼の赤い髪からのぞく耳が夕陽のように染まっていた。
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