闇夜の廃墟

雪飴ねこん

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闇夜の廃墟

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廃墟の街を歩き、たまに瓦礫に躓きそうになりながら僕は前にいるであろう彼女に必死に着いていく、がとうとう見失ってしまった。
「輝夜ちゃん、待って…待ってよ…」
そう言う僕に気づき輝夜は戻ってきてクスッと笑った。
「ごめんごめん、帝はここ慣れてないもんね、私は慣れてるから全然歩けるんだけど…」
と申し訳なさそうに謝る輝夜はここに一人で住んでいるのだ。
「でも、もう少しで着くから!帝もがんばって!」
僕は言われるがままにこにこ笑う輝夜について行って廃墟の屋上まで来た。
「ほら、見て帝!上だよ!」
そう言って上を指す彼女の指の先には真っ暗で吸い込まれそうなほど黒い空に無数の星達が輝いていた。青い星や赤い星も見える。
それから僕たちは月の出ない闇夜になるたびに星を眺めて他愛のない話をしていた。
ある日、いつものように星を眺めていると
「次に会えるのは三十年後かな?」
なんて笑いながら冗談を言っていた輝夜は寂しそうな目をしていた。そんなはずがないと笑い合い家路に着いた。
だが、そこに住んでいる輝夜と違って僕は家を抜け出しているのが親にバレてしまいそれから輝夜に会うことはなかった。

 僕は三十八歳になった。そろそろ結婚してもいい頃合いだがあの頃から星が大好きだった僕は宇宙に心奪われ、いつしか昔の人のように月に行きたいと思っていた。やっぱり旗を立てたりするのだろうか。などと考えながら僕はロケットの中に乗り込む。
そして色々なことを考える。宇宙に行って月に立ち。生きて帰れるだろうか。そもそも無事に着くだろうか。だが、もし着かなくても結婚しろだの小言を言われなくて良くなるならそれでいいとも思った。
あの頃から僕は輝夜に心を奪われている。だが、誰も廃墟の存在は知らない。無かったのだ。それでも輝夜が僕の心を離さない。だから月に行こうと思った。廃墟がなくていけないなら、そんな迷信じみた話なら。輝夜だから。かぐやだから。月にいるんじゃないかって。
9…8…
カウントダウンが始まる。今から月に行くのだ。
3…2…1…
終わるカウントダウンと共にけたたましい音が鳴り響き身体に負荷がかかる。目を瞑り到着を待つ。

フラつきそうになりながらふわふわと浮く体を手すりに捕まりながらコントロールする。

そして、僕は月に…いや、あの廃墟の屋上に立った。

十何世紀と、三十年後の今日。僕はかぐやと結ばれた。
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