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本編
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「では、これから摘出しますが、抜き出したスライムがその後どう動くかわからないのでヘンゼル様、対応よろしくお願いします」
「ああ……任せておけ」
スッと赤い刀身の剣を抜く騎士団長。
フレイムタンと呼ばれる炎の力が込められた魔法剣らしい。
スライムは基本、炎に弱い。
本当にスライムなのかは議論の余地があるけど、キルリー王子を中から即座に食い破るほどの力はないことから、外に出してしまえば恐らく対処できるだろう。
「ナタリー様は念のため、私の後ろに下がっていてください」
「わ、わかりました」
緊迫感漂う空気の中、手術再開。
千里眼を使い、慎重に失敗のないように、王子の体内を隅から隅までしっかりと探る。
正直、中が滅茶苦茶グロいけど余計なことは考えるな。
ピンク色のがピクンピクンしてるけど、これはただの映像だ。
機械的に作業をこなせ。
確実に王子の中のスライムを転移させることだけを考えよう。
(まず……一つ)
「ひっ!」
「……く」
突如、床に出現した透明な物体を見て目を見開く二人。
口元を抑えるナタリー様。
うわ、こんなヤバいのが中で増殖すれば、そりゃ王子も参るよね。
抜き出された、透明なゼリーのような物体。
床を這うようにうねうねと動きだすが、ヘンゼル騎士団長がソイツに剣を突き刺す。
じゅううと蒸発する音がして、寄生スライムが消滅した。
「は、半信半疑だったが、本当に王子の体内にこんなものがいたとは」
「私は嘘を言ってなかったでしょう?」
「ああ……貴様の言う通りだった」
やはり一度外に出してしまえば、寄生スライムは動きも鈍く脅威ではない。
さぁ、次だ次……どんどんいこう、どんどん。
手術開始から十分が経過。
とりあえず、大きなスライムから順に摘出しているが……。
「ふぅ……」
「ま、まだ中にいるのか?」
「これで、半分くらいですかねぇ?」
「なんと……」
キルリー王子はよく二日以上も耐えてきたと思うよ。
もう一日遅ければ確実に死んでただろうけど。
「で、殿下の顔色が良くなってきている……確実に」
「ああ……あああああっ!」
死人のようだった王子の顔。
まだ意識はないが、血が巡り少し赤みがかってきている。
痛みが和らいでいるのか、胸を掻きむしったりすることもなくなった。
「安心するのは早いですよ」
こっちは神経を使うし、凄い大変なのだ。
今喜ばれるとプレッシャーになる。
「わかっている、わかってはいる……だが」
「……ううっ」
堪えきれずに、湧き出てきた希望に眼を潤ませる二人。
「し、しんどぉ……」
思わず弱音を吐く。
まだ経過した時間的には大したことないけど。
千里眼の連続使用はかなり堪える。
酷使した眼を少しでも休めるために、眉間を軽く揉んでマッサージをする。
「ど……どうぞお水です! 飲んでください。後これ、目の疲れに凄くきくヌヌンの実のドライフルーツです、よかったら食べてください!」
「あ、どうも……」
「おい、魔力は大丈夫か? これは王国秘蔵の特級魔力回復薬だ、使うといい……何か必要なものがあればなんでも言え」
「ど、どうも……」
全面協力して色々用意してくれる二人。
最初会った時とのギャップが酷く、現金な気もするが……助かるからまぁいいや。
そして二十分後。
疲労で切れそうになる集中力を意地で保ち、なんとか無事に王子のスライム摘出手術は完了した。
「ああ……任せておけ」
スッと赤い刀身の剣を抜く騎士団長。
フレイムタンと呼ばれる炎の力が込められた魔法剣らしい。
スライムは基本、炎に弱い。
本当にスライムなのかは議論の余地があるけど、キルリー王子を中から即座に食い破るほどの力はないことから、外に出してしまえば恐らく対処できるだろう。
「ナタリー様は念のため、私の後ろに下がっていてください」
「わ、わかりました」
緊迫感漂う空気の中、手術再開。
千里眼を使い、慎重に失敗のないように、王子の体内を隅から隅までしっかりと探る。
正直、中が滅茶苦茶グロいけど余計なことは考えるな。
ピンク色のがピクンピクンしてるけど、これはただの映像だ。
機械的に作業をこなせ。
確実に王子の中のスライムを転移させることだけを考えよう。
(まず……一つ)
「ひっ!」
「……く」
突如、床に出現した透明な物体を見て目を見開く二人。
口元を抑えるナタリー様。
うわ、こんなヤバいのが中で増殖すれば、そりゃ王子も参るよね。
抜き出された、透明なゼリーのような物体。
床を這うようにうねうねと動きだすが、ヘンゼル騎士団長がソイツに剣を突き刺す。
じゅううと蒸発する音がして、寄生スライムが消滅した。
「は、半信半疑だったが、本当に王子の体内にこんなものがいたとは」
「私は嘘を言ってなかったでしょう?」
「ああ……貴様の言う通りだった」
やはり一度外に出してしまえば、寄生スライムは動きも鈍く脅威ではない。
さぁ、次だ次……どんどんいこう、どんどん。
手術開始から十分が経過。
とりあえず、大きなスライムから順に摘出しているが……。
「ふぅ……」
「ま、まだ中にいるのか?」
「これで、半分くらいですかねぇ?」
「なんと……」
キルリー王子はよく二日以上も耐えてきたと思うよ。
もう一日遅ければ確実に死んでただろうけど。
「で、殿下の顔色が良くなってきている……確実に」
「ああ……あああああっ!」
死人のようだった王子の顔。
まだ意識はないが、血が巡り少し赤みがかってきている。
痛みが和らいでいるのか、胸を掻きむしったりすることもなくなった。
「安心するのは早いですよ」
こっちは神経を使うし、凄い大変なのだ。
今喜ばれるとプレッシャーになる。
「わかっている、わかってはいる……だが」
「……ううっ」
堪えきれずに、湧き出てきた希望に眼を潤ませる二人。
「し、しんどぉ……」
思わず弱音を吐く。
まだ経過した時間的には大したことないけど。
千里眼の連続使用はかなり堪える。
酷使した眼を少しでも休めるために、眉間を軽く揉んでマッサージをする。
「ど……どうぞお水です! 飲んでください。後これ、目の疲れに凄くきくヌヌンの実のドライフルーツです、よかったら食べてください!」
「あ、どうも……」
「おい、魔力は大丈夫か? これは王国秘蔵の特級魔力回復薬だ、使うといい……何か必要なものがあればなんでも言え」
「ど、どうも……」
全面協力して色々用意してくれる二人。
最初会った時とのギャップが酷く、現金な気もするが……助かるからまぁいいや。
そして二十分後。
疲労で切れそうになる集中力を意地で保ち、なんとか無事に王子のスライム摘出手術は完了した。
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