処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

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「お、王子の中に得体の知れない生物がいる……だと?」

「はい、そいつが王子を苦しめているようです」

 魔力感知で見たところ、中にいるのは間違いない。
 苦しんでいる原因が毒ではないのだから、解毒魔法が効果を持つはずなかったのだ。
 
「寄生虫の凶悪版のようなものだと、考えていただければよろしいかと」

「き、寄生虫……」

「ええ、生の魚なんかに潜んでいる奴です」

 アニキサスとかあんなの。
 経験者曰く、当たるとメチャクチャ辛いそうだけど。
 
 と……話がずれてしまった。

「まぁ寄生虫といっても、形状はスライムのような感じですがね」

「ス、スライム……だと?」

「ええ、そうです」

「ど、どれぐらいのサイズのやつが殿下の中にいるんだ?」

「そうですね、不定形なので正確には言えませんが」

 魔力感知でもう一度、王子の身体を調べたあと。
 ぐーぱーして掌を広げる。

「まぁ、大きいので大体私の掌ぐらいですかね」

「そ、そんなに大きいのか? ん? 大きいのってなんだ?」

「ええ、複数いますので……」

「「なっ!」」

 唖然とするナタリー様。
 そして納得いかない様子のヘンゼル。

「ちょっと待て! き、貴様の話が本当だとしてだ。そんな大きな生物を複数、相手の体内に入れられるか? いくらなんでも気づくだろう? 殿下はそこまで無警戒な男ではないぞ」

「そうですね、私もそう思います」

 まぁ、もっともな疑問ではある。

「例えば元は小さいスライムが、体内で爆発的に増殖する条件が揃ってしまい、こうなったとか?」

「なんだと?」

「まぁ、すべて私の想像ですけれどね。その辺りは後でスライムの特性を解析してみるしかないですね」

 詳しく調べるなら錬金術師の領域だし、答えようもない。
 
 とにかく王子はコイツを体内に入れてしまった。
 いつ、どのタイミングで入ったのかはわからないが、それは確かなことだ。

「そ、それで……その寄生するスライムとやらを、どうにかできるのですか?」

 ナタリー様が、すがるような眼差しで私に聞いてくる。

「ええ、単純な方法ですけど」

 私はスッと王子の裸の胸を指さす。

「手術でスライムを取り出すんです」

「し、しゅじゅつ?」

「はい、まぁ普通に手術するのであれば、外から回復魔法を掛けながら王子の身体をかっさばいて……中のスライムを一つ一つ摘出していく流れでしょうか」

「き、貴様っ!」

「だ、だだ、駄目よ! そんな残酷な方法はいくらなんでも認められないわ!」

「落ち着いて……わかっていますよ、そんな手段は取りませんから大丈夫です」

 実際、リスクが大きすぎる。
 回復魔法は切り傷を癒やせるが、出血多量で死ぬ恐れだってある。
 
「そもそも、危険な手術に耐える体力が王子に残っていません、どんな優秀な医療技術者にも手術を成功させることは不可能でしょうね」

「ならば、どうするつもりだ?」

「お忘れですか? 私の言ったことを」


 私にしか救えないと言ったことを。


「これから、転移魔法を使って王子の身体の中にあるスライムを取り除きます。うまくいけば、王子の身体を傷つけることなく王子を元の状態に戻せるかもしれません」


 始めようか。

 転移魔法による外科的手術の真似事を……。





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