10 / 19
本編
9
しおりを挟むさて、どうすれば私に協力して貰えるか?
かなり勢い任せで、格好つけた感じでこの部屋に来たけど、実は具体策があるわけでもない。
割と行き当たりばったりだったりする。
ていうか、現時点でぐだぐだだし。
まぁ大事なのは結果だ、結果。
「どうすれば私を信用していただけますか?」
「「……」」
私は黙り込んだままの二人に問いかける。
ゆっくりと返事を待っていると。
「がはっ! ごほっ!」
ベッドから聞こえてくる、第一王子の苦悶の声。
「で、殿下!」
「貴方ああっ!」
話は中断され、心配して慌てて王子の元に駆け寄る二人。
人質扱いしていたナタリー様を解放することにした。
さすがに、ここでお前は行くなと拘束するのも罪悪感が半端ないので。
「ま、まずい……ここにきて、みるみるうちに顔色が悪くなっている」
「あああっ!」
「う、うぐっ!」
(……ん?)
身体を掻きむしるような仕草を見せるキルリー王子。
その様子に私はなんとなく違和感を抱いた。
「メ、メイドの貴方、どうすれば私たちに信用してもらえるかと言ったわね?」
「はい」
「だったら、だったら……この人を助けてよっ! お願いだから! 私にできることならなんでもするから!」
「それは無理です」
必死の形相で叫ぶナタリー様。
だが、私には本当にどうしようもない。
キッパリと告げる。
「話したでしょう……私は今回の事件とは無関係だと」
「なら、き、貴様は本当に知らないのか? この毒についての一切を……」
「ええ、まったく」
私の専門は回復系の魔法ではない。
王国お抱えの治癒術師ですら解毒に失敗しているのだ。
二人には申し訳ないが、私がキルリー王子に対してできることはない。
せめて解毒薬に必要な素材がわかれば、転移で素材を取りに行くなどして、少しでも信頼を勝ち取ることができそうだったが……。
「……う、うう」
脂汗を流し、ベッドで苦しそうにしている王子。
「貴方っ! 貴方っ! しっかりして!」
励ますように、キルリー王子の手を握るナタリー王女。
失敗したかな。
私、会いにくるタイミングを間違えただろうか。
愛しい人が大ピンチの状況。
腰を据えて話をする余裕はなさそうだ。
「ぐっ! ごほっ!」
第一王子の口元からゴポリと血液が零れる。
元々悪かった表情が、更に血の気がなくなり、死人のように白くなっていく。
室内で絶望感漂う中。
嘆く二人を他所に、私だけがぽつんと一人冷静に様子を眺めていたら……。
(あれ?)
やはり何かが……変だ。
「あの、王子の身体、おかしくないですか?」
「あ、当たり前だろうがっ! 毒を盛られているのだからっ!」
怒気を浮かべて私に叫ぶ、騎士団長ヘンゼル。
そういうことではないのだけど。
二人はずっと王子の近くにいて気づかなかったかもしれないが、先日誕生日パーティで王子の姿を見た時より。
(少しだけ、ふっくらしている?)
普通に考えれば、二日間まったく食事も取れず、床に伏せているこの状況であれば体重は減るはずだ。
上級魔法すら効かない毒……か。
「ヘンゼル様、前言を撤回します」
「あ?」
(これ、もしかすると……)
先ほど流れで言質は取ったが再確認だ。
「ナタリー様……もし私が王子を治すことができたら、私のことを信用していただけますね?」
「え?」
0
お気に入りに追加
4,780
あなたにおすすめの小説
従者は永遠(とわ)の誓いを立てる
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
グレイス=アフレイドは男爵家の一人娘で、もうすぐ十六歳。
傍にはいつも、小さい頃から仕えてくれていた、フレン=グリーティアという従者がいた。
グレイスは数年前から彼にほんのり恋心を覚えていた。
ある日グレイスは父から、伯爵家の次男・ダージル=オーランジュという人物と婚約を結ぶのだと告げられる。
突然の結婚の話にグレイスは戸惑い悩むが、フレンが「ひとつだけ変わらないことがある」「わたくしはいつでもお嬢様のお傍に」と誓ってくれる。
グレイスの心は恋心と婚約の間で揺れ動いて……。
【第三回 ビーズログ小説大賞】一次選考通過作品
エブリスタにて特集掲載

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。
和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

なりすまされた令嬢 〜健気に働く王室の寵姫〜
瀬乃アンナ
恋愛
国内随一の名門に生まれたセシル。しかし姉は選ばれし子に与えられる瞳を手に入れるために、赤ん坊のセシルを生贄として捨て、成り代わってしまう。順風満帆に人望を手に入れる姉とは別の場所で、奇しくも助けられたセシルは妖精も悪魔をも魅了する不思議な能力に助けられながら、平民として美しく成長する。
ひょんな事件をきっかけに皇族と接することになり、森と動物と育った世間知らずセシルは皇太子から名門貴族まで、素直関わる度に人の興味を惹いては何かと構われ始める。
何に対しても興味を持たなかった皇太子に慌てる周りと、無垢なセシルのお話
小説家になろう様でも掲載しております。
(更新は深夜か土日が多くなるかとおもいます!)
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

これが私の兄です
よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。
理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。
だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。
何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。
周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。
婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる