処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

インバーターエアコン

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本編

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 さて、どうすれば私に協力して貰えるか?

 かなり勢い任せで、格好つけた感じでこの部屋に来たけど、実は具体策があるわけでもない。
 割と行き当たりばったりだったりする。

 ていうか、現時点でぐだぐだだし。
 まぁ大事なのは結果だ、結果。


「どうすれば私を信用していただけますか?」

「「……」」

 私は黙り込んだままの二人に問いかける。
 ゆっくりと返事を待っていると。


「がはっ! ごほっ!」

 ベッドから聞こえてくる、第一王子の苦悶の声。

「で、殿下!」

「貴方ああっ!」

 話は中断され、心配して慌てて王子の元に駆け寄る二人。
 人質扱いしていたナタリー様を解放することにした。 
 さすがに、ここでお前は行くなと拘束するのも罪悪感が半端ないので。

「ま、まずい……ここにきて、みるみるうちに顔色が悪くなっている」

「あああっ!」

「う、うぐっ!」

(……ん?)

 身体を掻きむしるような仕草を見せるキルリー王子。
 その様子に私はなんとなく違和感を抱いた。


「メ、メイドの貴方、どうすれば私たちに信用してもらえるかと言ったわね?」

「はい」

「だったら、だったら……この人を助けてよっ! お願いだから! 私にできることならなんでもするから!」

「それは無理です」

 必死の形相で叫ぶナタリー様。
 だが、私には本当にどうしようもない。
 キッパリと告げる。

「話したでしょう……私は今回の事件とは無関係だと」

「なら、き、貴様は本当に知らないのか? この毒についての一切を……」

「ええ、まったく」

 私の専門は回復系の魔法ではない。
 王国お抱えの治癒術師ですら解毒に失敗しているのだ。

 二人には申し訳ないが、私がキルリー王子に対してできることはない。
 せめて解毒薬に必要な素材がわかれば、転移で素材を取りに行くなどして、少しでも信頼を勝ち取ることができそうだったが……。

「……う、うう」

 脂汗を流し、ベッドで苦しそうにしている王子。

「貴方っ! 貴方っ! しっかりして!」

 励ますように、キルリー王子の手を握るナタリー王女。

 失敗したかな。

 私、会いにくるタイミングを間違えただろうか。
 愛しい人が大ピンチの状況。
 腰を据えて話をする余裕はなさそうだ。

「ぐっ! ごほっ!」

 第一王子の口元からゴポリと血液が零れる。
 元々悪かった表情が、更に血の気がなくなり、死人のように白くなっていく。

 室内で絶望感漂う中。
 嘆く二人を他所に、私だけがぽつんと一人冷静に様子を眺めていたら……。


(あれ?)

 やはり何かが……変だ。

「あの、王子の身体、おかしくないですか?」

「あ、当たり前だろうがっ! 毒を盛られているのだからっ!」

 怒気を浮かべて私に叫ぶ、騎士団長ヘンゼル。

 そういうことではないのだけど。
 二人はずっと王子の近くにいて気づかなかったかもしれないが、先日誕生日パーティで王子の姿を見た時より。

(少しだけ、ふっくらしている?)
 
 普通に考えれば、二日間まったく食事も取れず、床に伏せているこの状況であれば体重は減るはずだ。

 上級魔法すら効かない毒……か。


「ヘンゼル様、前言を撤回します」

「あ?」 

(これ、もしかすると……)

 先ほど流れで言質は取ったが再確認だ。


「ナタリー様……もし私が王子を治すことができたら、私のことを信用していただけますね?」

「え?」
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