処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

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 私は城を転移魔法で抜け出した後、すぐに王都を脱出した。


 もういっそ別大陸まで飛んでいければ安全だったが、それはできない。
 転移魔法は便利だが、扱いの難しい魔法で制約も多い。
 私の場合、ある特殊な事情から、この魔法と相性がよく習得できたが、それでも魔力量の問題などから無制限というわけにはいかない。


 で、王都を離れてやってきたのが、王都グルテンより五十キロほど離れたこの小さな街だ。

 王子暗殺の出来事はつい先ほどの話だ。
 まだここにいる兵士には情報伝達もされていない。

 堂々と出歩いても捕まることはない。

「なんだお嬢ちゃん? メイド服なんて着て珍しい、彼氏の趣味か?」

「違いますよ……」

 服屋を訪れ、店主のおじさんに適当に返事する。
 さすがにメイド服を着たまま行動すると目立つ。
 適当な服を購入してとっとと着替えることにしよう。

 泥棒紛いに店から商品を盗むこともできるが、それはしない。
 この強力な転移魔法を習得した時に決めた、私なりのルールである。
 どこかで制限を設けなければ、魔法に踊らされて調子に乗っていつかは破滅する。

 無論、必要であれば使用することに躊躇はしないが……それは今ではない。

 そのせいで、私がここに来たことは知られるかもしれないが、長居するつもりもないしね。
 まぁ、それなりに王都から離れているし、すぐばれることはないだろう。


 頭のカチューシャを取り、そこまで上質ではない布のシャツとスカートを身に着けてくるりとまわる。
 うん、これでどこからどう見ても十代後半の黒髪黒目の街娘である。

 追加で簡単な変装用に眼鏡と帽子も購入しておく。



 誕生日パーティの開始が夕方だったこともあり、気づけば夜を回っていた。
 今日は消費した魔力を回復させるためにも、街の宿で一泊する。
 借りた部屋の中でやるべきことを整理する。

 私の平穏な人生を滅茶苦茶にしようとしたあの女。
 決して許すわけにはいかない。


 正直な話。

 単純にビリアを始末するのであれば不可能ではない。
 物騒な使い方だが、転移魔法は暗殺に向いている。

 ただそれでは私の気持ちがすっきりするだけだ。
 私の今後の活動に支障が出てくるだろう。
 結局、王子を殺したという汚名が消えないわけで。

 別にメイドが天職であると考えていたわけではない。
 クビになること自体は構わないが、このままお尋ね者として指名手配され、一生を生きていくなど考えたくもない。
 いくら逃げられるとはいえ、寝込みを襲われるなんて常日頃が怯えて暮らしたくはない。

 そのためには、犯人でないことを証明しなければならないわけだけど。


 とにかく、まずは情報が必要ね。

 それと協力者が欲しい。
 無実を証明する証拠も、もみ消されないように。
 私の言葉が真実だと証言できる頼りになる味方が欲しいところだ。

 できれば、彼女に匹敵するような権力者が望ましい。


 そのためには……。

 私は計画を建て、早速動き出すことにした。


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