処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

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 この女は何をとち狂ったことを言っているのでしょうか?
  メイドである私が何故、王子を殺そうとしなければならないのか?

 その理由がまったくわかりません。

 今、私に叫んでる女には見覚えはある。
 確か第二王子の婚約者であるビリアだったと思う。

「王子に料理を取り分けていた時の不自然な動き、間違いないわ! この女がキルリー王子に毒を盛ったのよ」

 間違いないなら、その時点でとめろよと言いたい。
 よくわからないけど、私は騒動に巻き込まれてしまったようだ。

 まぁ給仕のメイドの立場であれば毒を仕込むのは比較的簡単だろう。
 しかし、やっていないものはやっていない。

「私は神に誓って、そのようなことをしておりません」

 まぁ神なんて信じてないけども。
 私は無罪を主張する。

 しかし……。

「嘘をつくんじゃないわよ! わ、私見たんだから! 許さないわ! よくもっ! よくも、よくもっ!」

 目に涙を浮かべ泣き始めるビリア。
 大した演技力の女だ。

 だがその効果は抜群で、彼女に味方する空気が加速する。
 私は何度も無実を訴えるが味方はいない。

 王位を巡る第一王子と第二王子の兄弟での争いは有名だ。
 普通に考えて、私に罪を着せようと糾弾しているこの女が怪しいと思っている。
 とはいえ、ここで彼女を責めたとしても、彼女がやったという証拠は簡単には出てこないだろう。


 とすれば、どうするべきか。

「兵士たち、彼女を捕まえろ!」

「やれやれ、仕方ありませんね」

 考える間もないようだ。

 声がした直後、ぐるりと周囲を囲む屈強な男たち。
 あっという間に絶体絶命のピンチである。

「大人しくしていろ、しっかりと事情を聞かせてもらう」

 この後、私に待っているのは拷問という名の尋問か。
 私は私が無実であると知っているが、それに意味はない。
 貴族たちには白を黒に変えてしまう力がある。

 時間が経てば、解放されるというのは楽観的な観測だろう。

「仕方ありませんね」

 私は睨みつけてくる周囲の人間たちを見回し決断する。


「申し訳ありませんが、このまま殺されるつもりは微塵もありません」

「抵抗するつもり? こんなことをした貴方は絶対にこの城から逃げられないわよ! 二度と日の目を見ることは許されないわっ!」

「ふふ、それはどうでしょうかね?」

 スカ―トの裾を持ち広げる。
 こんな女に屈するつもりなど微塵もない。

「ビリア様、覚えておいてください。今は引きますが私……やられたことは、その分キッチリ返す主義ですので、貴方を私の敵と認めました」

「な、何を言って……」

「では、またお会いしましょう……」



「「「え?」」」



 禁呪とされる転移魔法を使い、その場を離脱した。

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