Defeat the Game Master

紅しょうが(仮

文字の大きさ
上 下
3 / 17

chapter 1 -beginning of the game- 02

しおりを挟む
林道。
初期地点は林の中の開けた場所だった。
俺たちはそこから続く砂利道を進んでいた。
「ハァハァ……、結構遠いな。」
目には見えているが、思ったよりも遠い目的地に弱音が出る。
本当にこのゲームはリアル志向なんだな、長い距離を歩く疲れすら本物のように感じる。
額に、こめかみの少し上に汗が浮かんでいるのがわかる。
「そうだな、初期地点からは結構あるんだな。」
魔法使いには歩行アシストみたいなものが付与されているのだろうか?
悠のキャラの表情には微塵も疲れを感じない。
「なんか涼しい顔して歩いてるけど、お前この砂利道で疲れないのか?」
「お前ほどじゃないが、疲れてはいる。…その鎧のせいじゃない?」
そう。この初期装備の鉄シリーズ。
鉄の帽子。
鉄の鎧。
ガントレット。
鉄の剣。
なんとすべての重さが2kg近くあるらしい。
防具としては頼れる品だが、頑丈な分、重さもしっかり感じられる。
「やっぱり戦士って職業はあまりいないんじゃないか。こんなの背負って、ゲーム楽しめるやつあんまいねぇよ。」
少し後悔している。
戦士以外の初期職業は、魔法使い、偵察者、僧侶の四種類。
後に転職で、上位職やそれぞれの初期職業と行き来できるようだ。
悠は街中で戦士のキャラクターをあまり見かけないという話だった。
「本当に戦士になってるやつが居ないなら、パーティの募集には希少な職業として重宝されるかもな。まぁ、数が少ないくらいだろ。」
悠は魔法使いだし、その辺はどんなパーティでも重宝されるだろう。
戦士という職はどれだけ有難がられるかはわからない。
盾役で使われることが多いかもしれない。
「町に行ってみてのお楽しみだな。」
と歩を進めていると、脇の木陰に影が見えた。

「お!?あれは!」
そこから、小さな影が飛び出した。
モンスター!初戦闘だ!
飛び出したモンスターは誰が見ても明らかなアレだった。
「スライムか!超カワイイ!」
水色の丸い物体が、ぽよんぽよんと妙な音を立てて跳ねているのを見て、心が和む。
「気をつけろよ。見た目キュートだけど、一応モンスターだからな。」
悠が身構えた。
スライムに向けて杖を向けた…のではなく、杖を握って中腰になる。
バスケットボールのディフェンスのような構えだ。
「え?何?魔法だから、構えて打つんじゃないの?」
俺が初めてだから、俺が倒すために回避に専念するってことかな…?
気にしなくても、俺は魔法見られたらそれはそれで良いんだけどな。
「いや、スライムは突進してくる。その動きが割と機敏だから。」
え?
と思う暇もなく、スライムがむにっと身体を引き延ばしているのが見えた。
まるで、ゴム鉄砲でこちらを狙っているかのようだった。
「照準をつけているのか?」
次の瞬間。
パシッ!という音が胸部のあたりに響いた。
驚いた俺は、思わずのけぞり、後ろに尻もちをつく。
「なるほど結構、押された感あるな。音もあって、ダメージ受けた感じがあるな。」
正直なところ、バスケットボールのパスを受けたような衝撃を感じた。
「ステータス画面を呼び出して、確認してみろ。」
ステータス画面で確認すると、HPゲージが減っていた。
といっても、微々たる量だった。
数値的には1くらいだろうか?
「言ったろ?結構素早いって。ほら今のうちに斬っちゃいなよ。」
そうか。
「よいしょっと…、やっぱり体が重たいな。」
重い装備のせいで、立ち上がるのにも一苦労だ。
剣を構え、スライムのバウンドのタイミングに合わせて…。
振る!
「ほりゃあああ!」
ズバッ!
音と共にスライムの色が薄くなり、徐々に消える。
「どうだった?初戦闘は。」
構えをといた悠がこちらを見る。
「スライムで、こっちが鎧だから衝撃もこの程度だったのか?」
「いや、魔法使いの軽装でも多分衝撃は変わらないんじゃないかな、ボールが当たった程度だ。多分、衝撃というか振動コントローラーなんじゃないか?」
確かに、衝撃というほどのダメージはなかった。
驚いて体勢を崩しはしたが、痛みは感じない。
「俺らより年下でも安全なわけだ。」
誰でも出来るMMORPGが売りのゲームだ。
危険なワケないと頭で分かっていても、怖いものは怖い。

「この辺で戦闘チュートリアルが出来る。でも近接職はわかりやすいよな。」
メニューにチュートリアルのTipsが出た。
「剣振るだけだからな。魔法とかはメニュー画面とかステータス画面と同じくキーワード発動?それともジェスチャでモーションコントロールか?」
「いや、モーションもキーワードも必要らしい。魔法使いの場合は魔法書を持っている状態でキーワードを発すると発動する。」
なるほどね、キーワードだけだと誤爆しまくるよな。
じゃあ、俺も次からはスキルを使ってみるか。
「スキルに慣れておきたいから、とりあえずこの辺にいるモンスターを狩ってみよう。」
「その前にパーティ組んどこうぜ。狩りといえばパーティで経験値分配だろう。」
「だな。じゃあ悠から誘ってくれよ。リーダーだし。」
「了解~。」
とりあえずパーティを組んでいれば、経験値も等分されるだろう。
素材もこの辺で集めておけば、街に行ったとき何かしら役に立つだろう。
「この辺に出るのは、スライムとレッサーコボルトくらいだろうし。そんなに苦戦はしないだろうけど、初期ポーションはまだ使うなよ。こっち回復あるし、それ結構希少らしいぞ。」
そういえばアイテムボックスを見てなかったけど、ポーションは初期の所持品なのか。
アイテムボックスを開いてみると、所持品は

・スタートポーション×30…Lv20までのキャラクターのHPを完全回復する。
・???の指輪       …不明。

だった。
完全回復か、そりゃ凄い。
「マジか。了解。やっぱ既プレイ居るとそういうの分かっていいな。」
「そんなにレベルは変わらないんだけどな。」
俺が前衛で悠が後衛。
即席パーティにしてはバランスがいい。
やはり、リア友とゲームするなら、そういうところ合わせたほうが良いんだよな。
俺も魔法は使ってみたかったけど、スキルってのがあるなら話は別だ。
オンラインゲームだけじゃなくても、どうせRPGのキャラはみんな魔法っぽい力を使えるようになるし。

さぁ戦闘チュートリアル続行だ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前  :ノビー(昇)
Lv   :3
職業  :戦士
装備  :鉄の帽子
     ガントレット
     鉄の鎧
     鉄の剣
スキル :薙ぎ払い
アイテム:???の指輪(未鑑定)
     スタートポーション×30
     青い雫×6
     レッサーコボルトの毛×4
――――――――――――――――――――――――――――
名前  :ゆうゆう(悠)
Lv   :6
職業  :魔法使い
装備  :とんがり帽(魔女)
     布のローブ
     木の杖
     火の書01
     癒しの書01
スキル :ファイア
     ヒール
アイテム:スタートポーション×27
     青い雫×5
     壊れた弓
――――――――――――――――――――――――――――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

異世界列島

黒酢
ファンタジー
 【速報】日本列島、異世界へ!資源・食糧・法律etc……何もかもが足りない非常事態に、現代文明崩壊のタイムリミットは約1年!?そんな詰んじゃった状態の列島に差した一筋の光明―――新大陸の発見。だが……異世界の大陸には厄介な生物。有り難くない〝宗教〟に〝覇権主義国〟と、問題の火種がハーレム状態。手足を縛られた(憲法の話)日本は、この覇権主義の世界に平和と安寧をもたらすことができるのか!?今ここに……日本国民及び在留外国人―――総勢1億3000万人―――を乗せた列島の奮闘が始まる…… 始まってしまった!! ■【毎日投稿】2019.2.27~3.1 毎日投稿ができず申し訳ありません。今日から三日間、大量投稿を致します。 今後の予定(3日間で計14話投稿予定) 2.27 20時、21時、22時、23時 2.28 7時、8時、12時、16時、21時、23時 3.1  7時、12時、16時、21時 ■なろう版とサブタイトルが異なる話もありますが、その内容は同じです。なお、一部修正をしております。また、改稿が前後しており、修正ができていない話も含まれております。ご了承ください。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

鍛冶師ですが何か!

泣き虫黒鬼
ファンタジー
刀鍛冶を目指してた俺が、刀鍛冶になるって日に事故って死亡…仕方なく冥府に赴くと閻魔様と龍神様が出迎えて・・・。 えっ?! 俺間違って死んだの! なんだよそれ・・・。  仕方なく勧められるままに転生した先は魔法使いの人間とその他の種族達が生活している世界で、刀鍛冶をしたい俺はいったいどうすりゃいいのよ?  人間は皆魔法使いで武器を必要としない、そんな世界で鍛冶仕事をしながら獣人やら竜人やらエルフやら色んな人種と交流し、冒険し、戦闘しそんな気ままな話しです。 作者の手癖が悪いのか、誤字脱字が多く申し訳なく思っております。 誤字脱字報告に感謝しつつ、真摯に対応させていただいています。 読者の方からの感想は全て感謝しつつ見させていただき、修正も行っていますが申し訳ありません、一つ一つの感想に返信出来ません。 どうかご了承下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平和国家異世界へ―日本の受難―

あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。 それから数年後の2035年、8月。 日本は異世界に転移した。 帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。 総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる―― 何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。 質問などは感想に書いていただけると、返信します。 毎日投稿します。

処理中です...