縁の鎖

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禍の足音

王家の思いと学園の思い

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フィサリスの編入試験から数日が経っていた。


「陛下。エガリテ学園の学園長が応接室に到着されました。」
「うむ。今行く。」

国王が、非公式に要人と会うための応接室へ向かう。
謁見の間でははばかられる時に使う、密会場である。


「すまぬ。待たせたな。」
「陛下に在られましては、ご健勝の…」
「構わぬ。構わぬ。挨拶は抜きに、本題に入れ。結果はどうであった?」
「はい。座学の試験結果は、99%の正解率でした。魔力は…。」
「どうした?魔力は有ったのか?無かったのか?どうなんだ?」
「結論から言いますと“判らない”と言うことです。」
「判らないとはどう言う意味だ!?」


“判らない”には理由があった。
試験官がエガリテ学園の宝物庫へ、水鏡を戻した時のこと。
保護具を外すと、水鏡にピオニーの花が浮かんでいた。
後にも先にも水鏡に素手で触った者は、フィサリス以外にいないこと。
公爵領から持ち帰る際、確かめたが水鏡に変化はなかったこと。
学園内でもフィサリスに魔力が有るのか、無いのか意見が二分している。


「と言う事なのです。私共エガリテ学園は、フィサリス嬢を一度入学させ今後の成長を見ていきたいと言う意見でまとまりました。座学の方も99%の正解率です。優の成績を与えるのに、申し分ありません。」
「しかし、ではない。と言う事では、優は過分な成績ではないか?」
からこそ、今後の成長を見たいのです。それが教職員の性なのです。試験官は、自分に魔力が無い事を安堵しつつ悲しそうに顔を伏せる姿を見て、胸に突き刺さるモノがあったと言っておりました。」
「フィサリス嬢の中に、葛藤があることは分かる。しかし…。」
「こう言っては何ですが、魔力が無いと決めつければ、フィサリス嬢の母君の二の舞に成りかねないかと…。」
「…うむ。一理あるか。仕方がない。入学を許可しよう。だが、こちら側の意向も呑んでもらう。学園に王家の監視を入れさせてもらう。良いな?」
「仕方が有りませんね。では早速、ソーディア公爵家へ通知を出したく存じます。」
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