国を追い出された令嬢は帝国で拾われる

氷雨

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後日談&番外編

気づいた気持ち

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豪華爛漫とするホールには、赤や青、白や黄色など皆思い思い好きな色のドレスを纏った貴族達がパーティーを楽しんでいた。

そして、皆は待っていた。

誰を?と思うかもしれないが、この会場に集まる貴族達は皆ある1人の人物を待っているのだ。

王国の民は皆理不尽な王の取り決めに悩まされていた。ただでさえ多い課税を自分の私欲を満たすために増やされ、使われる。
国の発展に使うこともなく、関心を向けることもなかった。王は民草の事など考えてはいなかった。いや、ただ単に興味がなかったのだ。そんなもの家臣がやってくれる、私は関係ない、と王は政から目を逸らした。

そんな王を誰が敬おうか、誰が喜ぼうか。

貴族も街の民達も皆限界だった。
豊作に恵まれても課税がそれを許さない、金が多く入ればその分絞り取られる。
金がないから景気も悪くなる、ここでなどやっていけないと他国に出稼ぎに行く者、果ては国を出て行く者たちもいた。

皆大変だった。

毎夜毎夜行われるパーティーは豪華にと彩られ、影ではまた金が注ぎ込まれる。

華やかなドレスを着なければいけないのに、新しいドレスが買えない。

貴族達も愚王にうんざりしていた。
言うことを聞かないと、家ごと潰されるか売り飛ばせれる、貴族達は知っていたのだ、王が他国の奴隷商と繋がっているのを。

貴族達も怖かった、子供のような頭で好き勝手に生きる王がいつしか悪魔のように見えてきたのだ。だから王の気に触れないように、怒らせないように言うことを聞いてきたのだ。


だが同時に、王も知らなかった。
自分が世界で一番偉いのだと疑わなかった愚王は、自分より上がいるということを。


民も貴族達も救われた。
この長い地獄から解放されたのだ。

だからこそ、その人物を、我々を助けてくださった皇帝陛下を皆は今か今かと待っているのである。


そして今、皆が見つめる扉がゆっくり、ゆっくりと開け放たれたのである。





✱ ✱ ✱








「ミア、緊張してるのか?」

「勿論ですわっ…」

今、私は何時ぞやのようにハル様と扉の前に立って入場を待っていた。

ただ一つ違うのは、ハル様だろう。


「あの、気のせいでなければ…私のことを先程から見てますよね?余計に緊張してしまうのですが…」


「…え、あ、すまない」

「?…はい」


どうしたのかしら?

そんな反応を返されるとは思わなかった私は戸惑う、チラリとハル様を見れば片手で口元を塞いで何やら呟いている、心做しか耳も赤いような…

急いで視線をハル様から逸らし私も私でフリーズする。


ど、どういうことかしら!?
ハル様はなんで私の事を!?も、もしかして何か着いていたからいつ教えてあげようかと悩んでいたのかしら?それで私からそれを指摘されて変に勘違いされたと思って、照れた?

うん、そうよ、きっとそう!!それしかないわ!!


私をただ単に見てたなんて自意識過剰な事は考えるべきではないわ!!

そんな風に二人揃ってフリーズしている状態を傍に控えて見ていた騎士たちは何を思っただろう…うん、ろくな事じゃないわね、考えるのはやめましょう、そして今すぐ忘れましょう。


そんな事を考えていると、傍に控えて見ていた騎士達が動き始め、扉の前を固めた。



そろそろか…


私は深呼吸をして、ハル様に聞こえるように口を開いた。


「楽しみましょうね」

「あぁ」

短い返事が帰ってきた、ハル様の表情は分からない、けど声がとても優しかったから、きっと笑っているのだろう。
それが分かって、私の心はぽかぽかと暖かくなった、もう緊張はしていない、だから堂々と、ハル様のパートナーとしてそれに見合った行動をしなければならない、今日はハル様が主役だ、ならばしっかりとハル様を引き立てないと!

私は心の中で静かに決意し、もう一度深呼吸をした。


静かに扉が開かれる。


それに合わせるように私達も歩調を合わせ、前へと歩き出したのだった。





✱ ✱ ✱




婚約者でも、ましてや妻などでもないため王座へはハル様だけが座っている。

勿論私は壁の花となっている、勿論料理やお菓子なども啄む程度には食べているが。

私が何をしていようと私にさして興味はないようだった。
一応私陛下のパートナーなんですがね。

まぁそれは置いておいて、皆の気持ちもわかる。

陛下は多分だけどこの世界で一番美しいと、私は思う、だから見惚れている。それで私への関心はそっちのけで皆ハル様へと興味が行ってしまうのだ。

分かってる、それは分かってるんだけど、心が苦しくなる。

この気持ちに気づいてしまったからだろうか?
でもきっと私は、気づいていなくても切なくなっていたと思う。

あの時、マリーに刺された時、私は確かに後悔した。死ぬことよりも、あの人に気持ちを伝えられなかったことを何よりも後悔していた。


でも、後悔したからって私は何をしたらいいかわからない。

私は確かに公爵令嬢で身分は高い、でも高いからってあの人の隣に居れるほど私は偉くはない。

私は、諦めるべきなのかもしれない。

いずれ、私じゃない妃を娶るだろう、それを私は祝福できるだろうか、ううん、できないわ。

だからもう、諦めるしかないのかもしれない。

でも、せめて、気持ちだけは伝えたい。

伝えないまま終わるのは嫌だ。


だから、このパーティーが終わったら、私はあの人に気持ちを伝えよう。


伝えてダメでも、きっとコロナが慰めてくれるわ、だから、ハル様、この気持ちをどうか受け取ってください。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


関係ないですが、いつも使っていた✱マークがアップデート後に変わっていました!(何これすごい!濃くなってる!)

すいません、どうでもよかったですね。

お読み頂きありがとうございました!



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