国を追い出された令嬢は帝国で拾われる

氷雨

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復讐編

陛下のもとへ

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ドレスに着替えた私は、お父様にエスコートされ門の前に控えている馬車まで歩いていた。

後ろでは使用人達全員が見送りに来ていた。

皆に「いってまいります」と言ってお父様と一緒に馬車に乗ると馬車が動き出した。

ガタゴトと揺られる中私は考える。

そういえば私、パーティーになんて参加してもいいのかしら?と。

だって、よく考えたら私、国外追放されてるじゃない...

お父様が何も言わないから忘れていたけど、これってとても重要なことじゃないかしら?
なんで今まで忘れていのか不思議でならないわ。

取り敢えずお父様に聞いてみましょ。


「お父様、今更なのですけど、私は国外追放になっています、パーティーには参加できないと思うのですが...」

まぁそれはそれで、変装してでもなんでも無理やり行くつもりだったし、それじゃなくても私はあっちの方で仮として住民登録しておいたから(なんで仮かは分からないけど)クラシウス帝国の人間として行くから問題ないと思う、それでも...やっぱり心配なのよね。

「あぁ、その事だけど、宰相に破棄してもらったよ」

「この国はあんな名ばかりのやつより宰相の方が権力を持っているし、なりよりあの愚王の言うことは誰も聞かないと思うよ」とお父様は付け加えた。

え!?破棄したの!?

え!?


「お、お父様、それは本当ですか!?」

「あぁ、本当だよ...私がミアを追放になんてさせるわけないじゃないか」

とニッコリとした笑み付きで言われた。
心無しか黒い...。


あ、お父様の差し金だったのね...

今の言葉で分かっちゃいましたよ、ありがとうございましたお父様。


心の中でお礼を言って、序に脅されたであろう宰相様に手を合わせ、あの綺麗な髪が薄くなっていないように!と拝んでから私は窓の外を見た。

建ち並ぶレンガ造りの建物、時計が嵌め込まれた尖塔、どれも慣れ親しんだ風景だった。
でも、帝国に居たからか懐かしくもあった。

そんなことを考えながら外を眺めていると城が見えてきた。白亜の塔だ。

お父様も気づいたようで、

「そろそろ着くね」

と言ってきた。

「そうですね...久しぶりです」

最後の方は少しだけ小さくなった。
何だか急に行きたくなくなってきたからだ。
だってあの人達のパーティーなんて、私が行ったってしょうがないし、それに、多分ジルクレイド様の顔を見たら、きっと______


_______殴り飛ばしてやりたくなるもの!!


あら、私ったら、なんて野蛮な考えを...!おほほ。



...
......
.........

今の無しで。



あー、やっぱり行きたくなってきたわ!こう、何と言うのかしらこの気持ち、怒り?復讐心?

そうよ、こうやって私が元気な姿で現れたら、なんとも思ってませんよ、幸せですよ~感を出せばあっちもいい気がしないはずだわ...!

そうと決まればやる事はただ一つ!

あいつらを見返してやる!!



✱ ✱ ✱


城に到着した私達は騎士に招待状を見せ、城の中へと入場した。
その際やはりと言うか、皆とても驚いていた。
まぁ、婚約破棄されたのに、こんな気合い十分な格好をして参加しに来たんだからね、そりゃビックリするわ。

ハル様はきっと控え室にいるわよね?
ここは誰かに聞いておくべきかしらね。


「ミア、陛下は華の間にいるはずだよ」

私が困っていたことを察したのか、お父様が助けてくれた。確かに貴族よりも上位の者達しか使えないと言う部屋は華の間だけだった。

因みに、華の間 > 鈴の間 > 智の間となり、華の間は王族やそれに準ずる者達が、鈴の間は貴族が、智の間は商人や学者達が使う控え室だった。

何故こんな身分で区分されているかと言うと、今の王も含めて何代にも渡りとても身分にこだわっているからだ。

まぁ、簡単に言うと「自分が一番偉い」と示したい、ただそのどうでもいい我儘の為に作られた部屋なのだ。


「そうでしたね」

私はお父様にエスコートされながら華の間を目指して歩き出した。


暫く歩くと鈴よりも一層豪華な道に出た。
正面には両開きの豪華な部屋があり、きっとハル様はあの部屋だ、と瞬時に理解出来た。


ふと思う。
王族の控え室でこんな豪華なら、この国の王の部屋はどうなっているのだろう?と。


そんなことを考えていると、いつの間にか部屋の前に来ていて、丁度お父様は扉をノックをしているところだった。


「陛下、ミリアーナを連れて参りました」

「入れ」

お父様が声をかけると、短く返答がかえってきた。

お父様に扉を開けてもらい、一足先に部屋に足を踏み入れた私はソファの側に経つハル様の元まで歩いていき、

「陛下、この度は父のもとまで送っていただき、また会わせてくださったこと心より感謝致します、本当に、本当にありがとうございました」

とガバッと頭を下げハル様にお礼を言った。

きっとハル様はなんとも言えない顔をしているだろう。でも耐えて欲しい、私はハル様に今日返しきれない恩を貰ってしまったのだから。

それに、私を拾ってくれたこと、私に部屋をくれたこと、私をお父様に会う機会をくださったこと。もう返しきれないほど恩をもらった。


だから、ハル様に私は精一杯の感謝を伝えたい。


「陛下、私からも、ミリアーナを拾って下さり、また再び公爵家に送り届けてくれたこと、感謝致します」

とお父様も私に続いてお礼を言った。

「クルシュナード公爵、ミリアーナ嬢、どうか顔を上げてください」


言われて顔を上げると、ハル様は困ったように笑っていた。

そしてこの話はもう終わりだと言うように、ハル様は話題を変えた。


「クルシュナード公爵、ミリアーナ嬢を連れてきて下さり感謝する、そろそろ時間故、私とミリアーナ嬢は会場へ向かうが公爵はどうする?」

「はい、私も急ぎ会場に向かおうと思います」

「そうか、では行くか......ミリアーナ嬢、手を」

そう言って手を差し出されたので、私もその長く細長い綺麗な手に自分の手を重ねた。

これからだ、これからパーティーが始まる。
そう思うと途端に体に緊張が走った。
その緊張が触れた指から伝わってしまったのかハル様がぎゅっと握り返してくれた。


「ミア、綺麗だ」

「...!!」

ハル様の突然の言葉に私は固まった。

「青いドレスはやはりミアの黒髪に映える、その靴も髪飾りもよく似合っている」

「あ、ありがとう、ございます」

お礼は言えたがきっと私の顔は真っ赤になっているだろう。ただでさえ、ハル様の御髪と同じ色で緊張していたのに。

パートナーと同じ色を纏うのは婚約者だったり、私は貴方のことが好きと伝えているようなものなのに......本当にこのドレスが送られてきたと聞いた時はびっくりした。

でもそれは陛下にはしっかりとしたパートナーがいるということを教える最も最適な手段と言える。だから私は仕方なく、本当に仕方なくこのドレスを着たのだが、いざ面と向かって本人から褒められると恥ずかしくなった。


でも、悪い気はしなかった。

それよりも嬉しい、と、思った。


頑張ろう、陛下に恥じないパートナーとして皆に見せつけてやろう!

私はそっとハル様の手を握り返した。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

なんかいい案が浮かんだので、もしかしたらお盆あたりに短編小説を投稿するかもしれません。
その際は是非読んでくださると嬉しいです!

なんかちょっと走っちゃった感じがしなくもないですが今回もお読みいただきありがとうございました!
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