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帰国編

我が家へ

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ドレスを着て、コレットに軽く化粧を施してもらった私は晩餐に向かった。

ダイニングに入るとハル様は既に着席されていた。

「ハル様遅れて申し訳ありません、それと、このような素敵な晩餐に招待してくださりありがとうございます」

そう言って私はカーテシーをとった。

「淑女には色々準備があるだろ、全く構わない、それに、貴方を待つ時間はとても楽しかった」

ハル様が爽やかに微笑んで言った。

私はその言葉に顔が熱くなるのを感じた。

「そ、それは...」

「ん、どうした?」

「い、いえ、なんでもありません」

私は赤くなっているであろう顔を隠しながら静静と席に座ったのだった。

全く、ハル様は天然のたらしね...

それから順調に晩餐は進み、現在私達はデザートを食べているところだった。
その途中で色々とお話をした。
主な内容はカセドナ王国の婚約披露パーティーの事で、ハル様はどうやら祝いの品が余りお気に召さなかったようで(アイザック様が選んだ物)私に良い品はないかと聞いてきた。


「そうですねぇ......あ、因みにアイザック様は何を選ばれたのですか?」

「......祝福を意味するレイアーの花を大量に贈ると言っていた.....」

それはなんとも...普通ね。
でも私はそれでいいんじゃないかと思うのだけど、ハル様の合格基準はどれだけ高いのかしら?
それとも、ただ単にハル様の美的感覚とかがないのかしら?

まぁそれはいいとして。

「それでは、その花と一緒に帝国でしか手に入らない辛香料や、果物、宝石などを贈ってみては如何ですか?」


あくまで私の勝手な意見ですけどね。
決めるのはハル様です。


「それはいいアイデアだ、是非その案を取り入れることにする!」


そう言うとハル様は満面の笑みで給仕の者を呼び何かを伝えているようだった。


それからも有意義な晩餐は滞りなく進み、私達は解散したのだった。








あれから2日経ち、現在私はコレットの手によって色々と施されていた。
いつもより早いまだ日が昇らない頃、急に布団を剥ぎ取られたと気づいた頃私は既にお風呂場にいた。

早すぎやしないだろうか、まさか私は瞬間移動なんてしちゃったりなんか........寝ぼけてただけだわ、何を勘違いしているの私。


お風呂場に連れてこられた私はまたもや5人のメイドに囲まれ、身体中を綺麗に洗われた。


ふふ、あんなの、私にとっては些細なことだわ...ふふ、あはは...。


それからサロンに行き、香油マッサージを施され、またもや鏡の前に座らせられ髪を艶々にしてもらった私は気疲れ半分、体の疲れがとれてスッキリ半分だった。


「さ、ミリアーナ様、そろそろ6時の鐘が鳴ってしまいますのでお着替えしますよ!」

コレットに諭され部屋着の軽装ドレスに着替えた私は、「早い時間からお疲れ様、ありがとう」と皆に言ってからメイドが運んできてくれた朝食を食べた。



✱ ✱ ✱


準備は滞りなく進み、いよいよ出発の時間となった。私とハル様は馬車の前に立ち、朝早くから(と言っても8時頃だが)集まってくれた騎士やメイド達にお見送りされていた。

皆、数日の別れというのに涙を流しお見送りしてくれる。中には鼻水が出るほど泣いてる人もいた。大袈裟じゃないかしら...?

そんなこんなで予定よりも長引いたお見送りは漸く終わり、私とハル様の乗った馬車は城を旅立ったのだった。

あ、因みにアイザック様は私達の後ろの馬車に1人で乗っている。

贅沢だな!




1日目は帝国内にある侯爵家の領地でお世話になり、2日目はその先にあるカセドナ王国に近い伯爵家の領地でお世話になった。

そしていよいよ私達はカセドナ王国に到着したのだった。


久しぶりの王国だわ......あの建物も、あの場所も、みんなみんな変わってない。
ほんの1ヶ月程母国を離れていただけでこんなにも懐かしく思うなんて...。

お父様は元気かしら?
あぁ、今すぐ会いに行きたい...会ってあの優しい胸に飛び込みたい...!!
はしたないと言われようが私はお父様の胸に思いっきりダイブしよう!!

外を眺めながらそんなことを考えていると、ふと窓ガラスに映る自分が泣いていることに気づいた。

私、いつの間に泣いていなのかしら?
どうしましょう、こんな所で泣いてはダメだわ。
今すぐ涙を引っ込めなくては...

でもそんな私の気持ちを裏切るように涙はどんどん溢れた、もう少ししたら嗚咽が出るかもしれない。そんな事を思っているとふわっと抱きしめられる感触がした。

見上げると眉を八の字にしたハル様のお顔が...

いつの間に隣に座ったのかしら...?

「...悲しくなったのか?」

そうかも、しれない...でもそんなことハル様には言えない。
だから私は強がった。

「いえ、悲しくなど...」

「では何故泣いている?」

そんな私に本当のことを言えと言うようにハル様が聞いてくる。


「それは...」

私はハル様の言葉に何を返していいか分からなくなり、口ごもってしまった。

そんな私にハル様は私が言いたいことを言ってくれた。


「ここがミアの故郷なのだろう?」

「......」

そう、ね、私が泣いたのは此処が私の故郷だからなのだろう、例えこの国が帝国程綺麗じゃなくて、人もいなくても、そうさせたのが大嫌いな愚王でも、やっぱり此処が私の生まれ故郷だからなのだろう......

それに、唯一甘えられるお父様と毎日一緒にいたのに急に会えなくなって...でもこうやってまた、会えるチャンスが巡ってきたかと思うと凄く嬉しくなったのだ。


そんな私にハル様は言った。


「ミア、家族に会いに行け、私は一足先に王城で待っている」

「...え、そ、それではハル様のパートナーがいなくなってしまいます、確かもう城にはパートナーを連れていくと伝えているはず、私がいなければ問題が起きます!!......それに、何故私の家族のことを知っているのですか?」

「......ちょっと調べたんだ、それとパートナーなら別に構わない、問題が起きようが私が一言いえばあちらは口出しが出来ないだろうからね、家族との再開に比べたら些細なことだ、だからミアは家族に会いに行って」

そう言うとハル様にぎゅっと抱きしめられ、背中を幼子をあやすようにトントンとされた。

私はそのハル様の優しさにまた涙が出そうになった。ハル様の温もりがよりそうさせる。


本当にハル様に会えて良かったと心底思った。


実は私たちの乗る馬車は最初から王城ではなくクルシュナード公爵家に向かっていたみたいだ。

外を見ていた私はその事にようやく気づきハル様にまたお礼を言った。現在隣にいるハル様は私を見下ろし、優しく微笑みながら「お礼はいいよ」と言った。
本当にハル様はお優しい。
今日それを改めて私は知ったのだった。


それから10分程かけて私はクルシュナード公爵家に到着した。
ハル様は私を馬車からゆっくりと下ろすと再び馬車に乗り込み王城を目指して行かれた。
一緒に行こうかと言われたが、急に帝国の陛下が来たら騒ぎになってしまうからと丁重にお断りした。


急なことで屋敷からメイド達が出てくる事はなかった。それでも門の傍で警護をしていた兵達が驚いた顔でこちらを見ていた。
その兵達の元まで行き私は

「ただいま戻りました」

と笑顔で言った。

すると放心する兵士の1人が慌て始めもう1人が駆け出し屋敷にまで走って行った。

やっぱりビックリさせちゃったみたいね。

「...し、失礼ですが、ミ、ミリアーナ様ですか?」


と兵士の1人が恐る恐る尋ねてくる。

「はい...ご迷惑をお掛けしました...」

そう言って私は頭を下げた。


「ミリアーナ様、平民に頭を下げるのはおやめくだはい!!」

と怒鳴られた。
そりょそうよね、私は今やっていけないことをしたわ、でも言いたかったのよ。

そんなやり取りをしていると屋敷の方が騒がしくなり、中からメイド達が出てきて早足にこちらに駆け寄ってきた。その先頭にはお父様がいた。


お、お父様...!!

私ははしたなくも全力で走った。
そして途中から走る速度を落としたお父様の胸にダイブした。

「お父様、おとうさまぁ...!!」

と泣きじゃくりながら胸に顔を押し付けぎゅっと抱きつく私にお父様も泣きながら言った。

「ミア、あぁ、ミア、帰ってきてくれたんだね、陛下から話は聞いているよ、う、おかえりミア...」

お父様も私をぎゅっと抱きしめ、しばらく私達は涙を流しながら再会を喜んだのだった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

最後らへん走っちゃったかな?と思ったので時間がある時少し修正しようと思います。

次回から新章に入ります。
今までお付き合い下さりありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします!





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