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帰国編
懐かしい人
しおりを挟む遡ること一週間半前、アドルフは城を訪れていた。城での最後の仕事を片付けるためだ。
しかし急に登城したアドルフに勿論周りは驚き「え、公爵様!?!!」「クルシュナード公爵様がいるぞ!!」などとメイドや騎士、文官達が道行く先々で騒いでいた。それらを軽くスルーし、アドルフは宰相の執務室へ歩いて行った。
そこである顔見知りのメイドが目の前から歩いてくるのが見えた。
近くまで来るとあちらの方から声をかけてきた。
「まぁ!アドルフ坊ちゃんではないですか!!お久しぶりですね、元気でしたか?」
40代後半といった年輩の女性が親しげに話しかけてきた。
実はこのメイド、アドルフの乳母だった人で、小さい頃、4年ほどお世話になっていたのだ、今は契約が切れ、城のメイド長として働いているのだった。
「マーサ、久しぶりだな、それと坊ちゃんはやめろと言っただろう?私はもう子供ではないのだぞ」
そう言うと、はぁとため息を吐いた。
だがその表情はやれやれと言う感じで、とても怒ってるようには見えず、このやり取りを楽しむうな懐かしんでいるような表情だった。
「はぁ、全く懲りないなマーサは、それで、マーサはこの東棟で何をしているんだ?」
今いる東棟は政治を行う側ら、メイドなどが用のある場所ではない、それに今は昼だ、部屋の掃除は朝一で終わっているはず、それにも関わらずマーサはこの東棟に居る、どうしたんだ?とアドルフは不思議に思い聞いたのだがマーサの反応が急に悪くなった。
それを見たアドルフが眉根を寄せる。
「...実は坊ちゃん、ある人に頼まれごとをされているのです、それが丁度東棟と言うだけのことです」
「説明しろマーサ」
「.....いえこれはメイドの暗黙の了解として、主のことに関しては口にしてはなりません...ですから」
と、渋るマーサをアドルフはキツく睨みつけた。
その表情に押されたマーサは、我が子のように可愛がっていたアドルフに勝てるはずもなく、呆気なく折れたのだった。
そして、マーサは周りを気にしながらぽつりぽつりと話し始めたのだった。
「実はレイラ様に、最近こちらの棟の警護に配属になった騎士を探して欲しいと言われて、この東棟に来たのです」
「騎士だと...?」
その言葉にアドルフは首をかしげた。
気に入った騎士でもいたのか?
と、最初思うも、それは違うと瞬時に悟った。
アドルフには思い当たることがひとつあったのだ。
実はアドルフはミアが居なくなってしまってから公爵家の暗部の者達に調べさせていたのだ。
あの日、あの場所からどう動いたのかをロイの証言のもと綿密に調べさせ、決定的証拠を見つけようとしていた。
そしてそれはミリアーナが居なくなってから3日ほどたった日に見つかる。
あの場所に、着切れが落ちていたのだ。
それは騎士のものであり、丁度袖の部分の刺繍が施された場所のものだった。
それ故に、その着切れをアドルフが受け取った時、アドルフは確信した。
これは城の何者かがミリアーナを陥れるためにした事だと。だがその犯人は分からなかった。
いくら騎士の服の着切れが落ちていたとして、ミアとなんの関係がある?城お抱えの騎士が何故なんの関わりもないミアにあのような事をした?
おかしい、全てがおかしいのだ。
だが、アドルフはマーサの証言により遂に真犯人へとたどり着いた。
______犯人はレイラだと。
レイラは一見儚く見えるが心の中は真っ黒だ。
それ故に、悪い輩に取り込まれぬよう日々腹の探り合いをしているアドルフにはレイラの性格が手に取るように分かったのだ。
アドルフは思う。
あの女は屑だ、それもタチの悪い面倒くさい女だ。
今のところミアがいなくなったことは公爵家が秘権しているが、時間の問題だ。
今あの女は消えた騎士を探しているのだろう。
きっと騎士は怖くなって逃げたのだ、我が公爵家が怖いばかりに。
だがそれももう遅い、私がお前を探すからな、お前はもう逃げられない、恨むならレイラに釣られた自分を恨め、どうせミアの拉致に加担したのはレイラに騎士にでもしてやると言われのだろう。
全く馬鹿な奴だな。
あのような女の口車に乗せられるなど。
「マーサ、今の情報感謝するよ、それとたまには公爵家に顔を出してよ?家のメイド達がうるさいんだ、やれマーサに会いたいだの、マーサがいないと公爵様は言うことを聞かないだのと、全く揃いも揃って私を何歳だと思っているのやら...まぁ兎に角みんなマーサに会いたいみたいだからね、それじゃあねマーサ」
そう言ってアドルフはマーサを置いて早足に歩き出した。
1分1秒という時間が惜しいからだ。
アドルフは密かに喜んでいた。
やり場のない怒りが募っていくばかりの数日間、腸が煮えくり返りそうな中ずっと、アドルフは犯人への復讐心が募っていった。
アドルフは分かっていた、ミアが死んでいないことに、そして今も元気に帝国で暮らしていると。
その情報を聞いた時アドルフは泣いて喜んだ。
だからこそ、ミリアーナが生きてるとわかった今だからこそ親としてアドルフは犯人を許せなった。
ただひとつ、アドルフには予想外のことが起こっていた。
まさか、皇帝が城の部屋を与えたなど...!!
予想外のことだった、ただミアなら持ち帰りたい気持ちは分かる、ミアは天使だからな!!
ミアを拾ってくれたことは感謝する、だがそれは違うだろ皇帝!!
家を買ってあたえればそれでいいだろう!!?
なぜミアに部屋をあげたんだ!!
くそっ、まだ嫁になどやらんぞ!!!
アドルフは悔し涙を流しながらも足を動かし、西棟を目指したのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
男親は色々と面倒くさいですね笑
by ヤマメの心の声
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