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帰国編
パーティーのお誘い
しおりを挟む私が心の中で叫んでいると、扉をノックする音がした。
でも、ノックをしただけで声がしない。
空耳かな?と思ったがコレットも不思議に思ったようで私を見てきた。どうやらコレットも聞こえたようだ。
よかった、私の耳は大丈夫だったようね。
でも、分からないからってこっちを見るのはやめてよね?だから私も知らないということを伝えるために首をぶんぶんと振って知らないことをコレットに伝えると、コレットは訝しりながらも扉を開けに向かった。
ガチャ
とコレットが扉を開けると、そこには陛下がいた。
え、ハル様?
どうしたのかしら、ていうかなんで何も言わずに突っ立っていたのかしら?
もし私もコレットも気づかずにスルーしていたら突っ立ったまま放置されていたのかしら?
あら、そう考えるとなんだか悲しくなってきたわ。
まぁそれはいいとして、本当にどうしたのかしら?まさかやっぱり出て行ってくれとか?
刺繍代とかで税金を使ったことに怒ってやって来たのかも。
どうしよう、そうなったら本当に行く場所がなくなってしまう、あっそうだ、またあの教会に行けば______「何かよからぬ事を考えていないか?」
「...へ?」
突っ立ったまま動かなかったハル様が声をかけてきたが、私はその声にビックリしてつい変な声を出してしまった。
「どうした?顔色が悪いぞ」
そう言うとハル様は近くに寄ってきて、至近距離で私の顔を見つめてきた。
ちょっ、顔が近いわ!
国宝級のお顔が目の前に...!!鼻血でそう。
「だ、大丈夫です!それで?どうしたんですかハル様」
「あぁ、それなんだが...」
そう言ってハル様は言い淀んだ。
どうしたのかしら?
「...ミア、パーティーに行かないか?」
「...え?」
「いや、嫌ならいいんだ、帰ろう」
「え!?、ちょっ、ちょっと待ってくださいハル様!まだ何も言ってませんよ?」
誘っておいて勝手に帰ろうとするハル様を慌てて引き止める、まず何故そんなことを言い出したかを聞かなければならない。
「ハル様、まずは説明してください、誘うのはそれからです」
「...すまない」
そう言うとたどたどしく話し始めた。
あの時の自信アリアリの顔をどこかに置き忘れたきたハル様は今や見る影もない。
「実はカセドナ王国で婚約披露パーティーがあるみたいで、我が国に招待状が来たんだ、私は一応国をまとめるものとして出席しなければならないのだが...未だに婚約者がいない、あっちでパートナーを探すのもいいのだが、時間もないだろう、だからミアに一緒に来てもらいたいのだが、構わないだろうか?」
一気に捲し立てたハルは真剣にミリアーナを見つめる。色々と突っ込みたい内容があったが今はいいとカセドナ王国、婚約披露などの言葉を飲み込みミリアーナはハルに返事をした。
「構いません、ハル様が良ければ私は貴方のパートナーになりましょう」
とかっこよく言ってはいるが、実際は違った。
最初ハルのカセドナ王国という言葉に驚きはしたものの、ミリアーナはこれを利用しようとしていた。
_____もしかしたらお父様に会えるかもしれない
そう思った私はハル様を利用する事にしたのだ。
ハル様はパートナーが欲しい、私はお父様に会いたい、お互いの利害が一致している今winwinの関係だ。
だから悪い気もしない、心置き無くパートナーになれるわ。
「ハル様、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼む」
そう言うとハル様は儚く笑った。
先程の弱々しさとは違い、今は晴れやかな分、少し儚さがあった。やっぱり疲れていたのね、だからいつもの自信満々の顔が無かったのか、と、ミリアーナは自己完結したのだった。
実はミリアーナを誘うのが恥ずかしくて、ミリアーナの部屋に来るまでに心が緊張に耐えられなかったために気疲れしていたなどミリアーナは知らなかった。
「ハル様、詳しい内容を聞かせて貰えますでしょうか」
まだ、詳しい日取りなどを聞いていなかったので早速ハル様に聞いてみることにした。
「そうだったな、日取りは今日から丁度3週間後にある、あぁそうだ、そのパーティーでは是非ドレスを送らせてくれ、流石に今回ばかりは断ったりはしないな?」
「はい、有難く受け取らせていただきます、ありがとうございますハル様」
「それは良かった、して、他に聞きたいことはあるか?」
「いいえ、もう大丈夫です、ありがとうございました」
「では、そろそろ戻るが体には気をつけろ、先程外に出ていたようだが今の季節の帝国は温暖差が激しいから、外に出る時は上衣を持っていくといい、それではまたな」
そう言うとハル様は扉の方に歩いて行かれた。
あっ、お見送りしなくちゃ!!!
ハル様があんなに女性を気遣える人なんて思いもしなかったから思わず固まってしまったわ!
私は慌ててハル様を追った。
だがハル様のあの長いコンパスに勝てる訳もなく、ハル様が部屋を出ていったあと漸くや私は扉の前まで来たのだった。
私一応平均よりも高い身長なのに追いつけなかったわ...!!
どんだけ長いのあの足は!!
そんなことを思いながらも私は少し浮かれていた。勿論お父様に会えるかもしれないというのが大きいだろうがそれでも、ハル様と2人で行けることが何より楽しみであった。
その事に気づいた私は自然と顔が赤くなり、壁にいつの間にか控えていたコレットにバレないように手で顔を覆ったのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
今日も2話だけですが再投稿出来ました!!
残りも頑張ります!!
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