国を追い出された令嬢は帝国で拾われる

氷雨

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帰国編

アイザックの説得

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「......今なんといった?」

「ですから、カセドナ王国からパーティーの招待状が届いたんです。これで4回目ですよ?」

そう言ったアイザックの言葉を無視するようにハルが顔を歪め吐き捨てる。

「燃やせ」

「何言ってんですか?そんなこと出来るわけないでしょう?」

そう言えば今度は眉間にシワを刻み、組んでいた足を入れ替えた。

気が立っているようだ、とアイザックは瞬時に思った。それでもハルにはこのパーティーには参加してもらいたい。我が国は大国だ、それ故に祝いの品もそれ相応の豪華な物を送らねばいけないし、我が国の最先端を陛下の身に纏う服や装飾品を他国に宣伝してもらわなければならない。

だから是非とも陛下に参加してもらいたいのだが、如せん陛下はパーティーが苦手で尚且つ嫌いだ。

「お願いです陛下、どうか参加してください」

「嫌だ」

「陛下!」

何度頼んでも行くと言ってくれない陛下に痺れを切らしたアイザックが遂に怒鳴り口調になってしまった。
それに気づいたアイザックは慌てて頭を下げて謝った。そして再び陛下に参加して欲しいと頼むつもりで顔を上げた時、ある1人の女性が目に入った。


外に見える庭では今、ミリアーナが散歩をしていた。それを見たアイザックはあることを思いついた。


これはもしかしたらもしかするんじゃないか?
意を決してアイザックは口を開いた。

「陛下...、パーティーにミリアーナ嬢を誘っては如何ですか?」

「ミアを誘う?」

その言葉に反応したハルが続きを話してみろと言うようにアイザックを見る。
それを見たアイザックはこれ幸いにとハルに説明を始めた。

「私が思うに陛下はとても奥手で未だに恋人も婚約者もいません」

「おい!!」という声が聞こえたがアイザックは話を続けた。

「ですから行くとしても私の妹となってしまいます。けれど陛下も嫌という程わかるようにあの子の愛は重い、変に勘違いさせるのはよくありません。ですが!!今この城に陛下の唯一がいたではありませんか!!」

そう言ったアイザックの言葉が理解出来ないと首を傾げるハル。
すかさずアイザックの言葉がとぶ。

「窓の外を見なさい!」

「窓...?」

ハルは一体なんなんだと心の中で思うも一応窓の外を見た。そしてミアが外で散歩をしているところを見るとハルは先程のアイザックの言葉を瞬時に理解した。

「まさかミアのことを言っていたのか?」

「はい、何か間違いでも?」

そうなんでしょう?と言うようにアイザックの目が余りにも真面目だったのでハルは苦笑した。

「はぁ、分かった、了承してくれるかはミア次第だが誘ってみるよ」

「本当ですか?!」

「本当じゃなくていいのか?」

「いいえ!ありがとうございます陛下!」

「あぁ」

一通りハルと話したアイザックは満足顔で執務室を出ていった。
話したと言ってもハルは「そうなのか」「あぁ」など返すだけで、話していたのはアイザックだけだった。

執務室から出ていったアイザックのことはさほど気にせずハルはある1人の女性の事について悩んでいた。
ミリアーナの事だ。

その長いコンパスを動かし窓まで歩み寄るとハルはミリアーナの様子を眺めた。


私は何故あの嫌いなパーティーに参加すると言ってしまったんだろうか?

ただこれだけは言える、唯一と言われて悪い気はしなかった。それに、貴族でありながらあのように平民の服を着たがるミアにドレスを着せてやりたかった。

あの日出会ってから私は何度もドレスや装飾品を送ったが、どれも断られてしまった。

『私には勿体ない物です、私のような者に送るのではなく是非陛下の大切な人に送ってあげてください。』

そう言ったミアの言葉を今になってもはっきり覚えている。

私に大切な人などいない、それに私は女性が苦手だ。それ故に今まで女性に自分から送ったことは無かったというのに、まさか初めてをこのような形で奪われることになるとは。

それでも、私は何故かミアのドレス姿が見てみたかった。だから参加を了承してしまったんだろうか。


まぁ、分からないことを何時までも考えていてもしょうがない、今は溜まった執務を片付けるのが先だな。


そう考えてハルは再びその長いコンパスを動かし椅子に座ると書類を片付け始めた。


✱ ✱ ✱


朝方アイザックの執務室へ文書を届けた部下であるニック・バートが鍛錬にでも行こうと兵舎を目指していると、通りかかった騎士の者に声をかけられた。


「ニック卿、今お時間ありますか?」

「どうした?」

「実は...この前捕らえた者達「待て、場所を移そう」はい、失礼しました」


場所を移動して、人があまり通らない部屋へと入ると、騎士が本題を話し始めた。

「実はですね、先程人身売買を行っていた者達が情報を漸く吐いたんです」

続けろと言うふうに無言の圧力で兵に諭すニック。それを読み取った騎士が再び話し始めた。

「それがどうにもこちらで扱っていい情報ではないほど重大なものでして...」

「宰相に報告すればいいんだな?」

「はい」

「分かった、お前はこれからどうするんだ?用がないようならこのまま報告に行く」

「大丈夫です、このまま行きましょう」


2人は歩きだし、宰相の執務室へと早足に向かった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

どうでしょうか?
書いてる身としてはよく分かりませんので出来れば感想をくださると嬉しいです。

近況ボードでも報告しましたが7/31までには全て再投稿できてると思います。
今日は朝2話再投稿出来ましたのでこの調子で頑張りますね!
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