国を追い出された令嬢は帝国で拾われる

氷雨

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帰国編

王国からの文書

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内容の修正に伴い章名も変えました!


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「ちょっとあなた、砂糖の数が違うじゃない!」

澄み渡る青空の下、綺麗な薔薇園に甲高い声が響き渡った。

「す、すみません!!」

レイラ付きのメイドが今、砂糖の数を間違えただけで怒られ、目に涙を溜めながら必死に謝っていた。しかし、メイドは知っている、レイラは毎日砂糖の数が違うのだと。

「あなたもう帰っていいわよ」

心の中で「そんなめちゃくちゃな...!」と思いながらもメイドは必死に謝る。王城で首になどなってしまったら誰も雇ってくれず、行く宛が無くなってしまうからだ。

「...すみません!お願いします、解雇だけはやめてください!!」

怒りよりも解雇された後のことを想像して、益々青ざめたメイドはそれでも必死に謝った。

だが、

「うるっさいわね!!」

バチンっ

「きゃっ」

レイラはメイドの頬を叩き、その衝撃でメイドは横に倒れ、尻もちを着いた。

「消えなさい」

冷たくレイラは言い放った。


メイドは泣きながら、小さな声で答えた。

「.........はい」






✱ ✱ ✱


「レイラ聞いたよ、また1人メイドを解雇したんだってね」

「はい、本当はそんな事、したくなかったんです...でも......!!」


そう言うと同時にレイラはその大きな瞳に大粒の涙を浮かべ泣き出した。
その姿はまさに庇護欲をそそるほど愛らしく、思わず守ってやりたいと思えるほどか弱く見えた。

「どうしたんだい!?まさか、虐められでもしていたのかい?」


「......はい、そうなんです。私、怖くって、毎日、毎日、影で悪口を言われたり...紅茶にわざと沢山の砂糖を入れられたり、していたんです...」

「それは本当か!?」

「はい...でも、大丈夫です、メイドはもう居ません。それに私にはジルクレイド様が居ますから」

「ですから、ずっとお傍に居させてくださいね」とレイラはジルクレイドに上目遣いに言うと、そっとジルクレイドの肩に頭を載せる。

「レイラ...君はなんて優しいんだ、私は益々君が愛おしくなったよ」

「ふふ、私もですわ!」


そんなイチャイチャラブラブしている中で、壁に控えている数名のメイドは口から砂糖を吐きそうなほど、ある意味心身共に疲弊していた。
だがこの状況を見て誰もがこうも思った。

...なんて人だ。

この人は、自分から砂糖を入れろと言っておきながら、いくつ入れるのか聞けばそんなことも分からないのかと怒られ、数がわからないため平均的な数を入れれば、数が違うと怒鳴られる。
それに、私達は決して悪口など言っていない。
精々、最近ムーナス商会の耳飾りを手に入れたとか、白い苺を使ったケーキが流行っていて1度でも良いから食べてみたいなどの在り来りな会話だった。それに、私たちメイドは主に対して必要以上に語ってはいけない決まりがある。主を侮辱したり、悪口を言うことはメイドにとってとても下品であるから。



それなのにレイラがメイド達の行動をジルクレイドに悪く伝えたために、メイド達は静かに怒っていた。


「レイラ、今日は君にとっておきのプレゼントを持ってきたんだ、聞いてくれるかい?」

「勿論ですわ!ジルクレイド様、何を持ってきてくださったんですか?」


「実は物ではないんだ、プレゼントと言うのはね...」

そこまで言うとジルクレイドは言葉を止めた。
そして少し頬を赤らめ再び口を開く。


「私とレイラの結婚式の日が決まったんだ!」

「まぁ!!本当ですか!?レイラとっても嬉しいです!」

そう言うとレイラはジルクレイドに抱きついた。


「あぁ、喜んでもらえて嬉しいよ。必ず2人で幸せになろうねレイラ」

「はい、ジルクレイド様」



それから宰相を初めとした者達の迅速な手配により着々と日取りなどが決まり、一週間後に近辺諸国に招待状が届けられた。


招待状は勿論近辺諸国であるクラシウス帝国にも届けられる事になった。





✱ ✱ ✱



アイザックの執務室前に一通の文書を持った男が立っていた。彼の部下である。
朝方王国の使者が文書を持ってきたことにより陛下に通す前に悪い内容がないかを宰相に確認してもらうため、彼の部下が届けに来たのだった。



コンコン


「入りなさい」

素早く中から了承の旨が聞こえた。

「失礼します」

部下の男が断りを入れドアを開いた。

ガチャ


「宰相閣下、カセドナ王国よりある文書が届けられました。」

「カセドナ王国...?」

普段あまりいい噂を聞かない(と言っても裏の方での話だが)その国から文書が届けられたことによりアドルフは少なからず怪しんだ。

「はい、こちらになります」

「ありがとう」


訝しりながらも部下から文書を受け取ってはらりと紐をとくとアイザックは慎重に文書を眺めた。


「宰相閣下...王国は何と?」


文書を眺め出してから一向に顔を上げない上司に痺れを切らした部下が尋ねる。

すると、僅かに顔を顰めたアイザックが顔を持ち上げ、口を開いた。

「...カセドナ王国の王太子が妃を娶るそうだ、半年後に結婚式を挙げ、それに伴い1ヵ月後に婚約披露パーティーを開くらしい」


「......あの国はなんとも呑気ですね...」

あまりの内容に部下が呆れて口にする。

「全くその通りだよ」


2人の目がどこか遠くを見るような目になると

「「はぁ」」


と2人のため息がハモった、それだけこの文書の内容が呆れるものだったからだ。


「全く、あの国の王は何を考えているでしょうね」

「考えてはいないだろうね、自分の欲に忠実なんだ......子供と一緒だよ」

「...はい、私もそう思います」

「だよね、まぁこれは一応陛下に報告しておくよ、君は下がっていいよ、ありがとうね」

「はい、それでは失礼させていただきます」

 

バタン

とドアを閉め部下が出ていくとアイザックはなんとも言えない気持ちになった。


「...はぁ、これを報告したら陛下は怒るだろうな...」


そう言ってまた何回分かを溜め込んだ重たく長いため息がでた。

なんて言ったって、あの人はパーティーが苦手だからな...今から気が思いやられる...
それでなくてもあの人は外交が苦手なんだ。
あぁ見えて少々人見知りだからな。

上に立つ者としては是非とも直して欲しいことだが、ハルには無理をして欲しくないと言う気持ちもある。それに、ハルがそうなってしまったのは
私のせいでもあるのだ。

なんて言ったってハルは私以外の貴族達と公の場で話すことはあっても遊んだことは無かったし。
常にハルの傍には私がいた。それは将来支える人であるハルの傍で、ハルのことをよく知るためと支えるため、また信頼関係を築くためだった。

だから友達と言える者は私しかいないだろうな。



そんな事を思いながらアイザックはまた執務机と向かい合いながら今日中に片付けなければならない書類を片付けていくのだった。


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お読みいただきありがとうございました!






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