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帝国編

陛下、令嬢を助ける

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ハル視点も今日で最後です。

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いったい彼女はどこへ向かって走っていったんだ?あれから暫く探しているが一向に見つからない。このまま見つからないとなるとまずいな。
なんせ最近人攫いが相次いで何かと物騒なんだ、
それもこれも帝国に流通経路を確保しようとしている奴らのせいだが、はやく始末しなければな。


しかし、このまま探したところで見つかるのか?
もしかしたら彼女は宿にでも帰っているんじゃないか?


いや、そんなことを言って、もし攫われでもしていたら大変だ。安易な考え方は辞めるべきだ。
だが、やはりどうしたら...闇雲に探したところで恐らく見つからない、となると街の警備兵にも手伝って貰った方が良いかもな、1人で探すより確実に効率がいいからな。


そんな事を考えていると、ふと街の路地から数人の男達が出てくるところを見かけた。


こんな時間に何をしているんだ?


あたりを見回せば当然、こんな時間に出歩く者もいないため、私以外に誰も居なかった。それなのにあいつらはなんの為にあそこに居るんだ?

やはり怪しいな、付けてみるか。


あの男達に気づかれないように壁に寄り視覚になるような場所まで移動した。
すると男達は狭い路地に入っていき、何とも怪しい路地に出た。そこはお店などはなく只只古びた宿のような、家のような物ばかりで、街の中で見るレンガ造りではなくどれも木造の物で所々が腐っていた。



こんな所があったとはな...



びっくりしたものの男達は止まらないので、尾行を続ける。しかし、ふと男達が周り警戒し始めたため、慌てて物陰に隠れた。誰もいないと判断したのか男達はひとつの古びだ二階建ての建物に入っていった。


ここか?


いったい何をしているんだ?
さっきから見ていたがどうにもあの男達の行動は不可解な点が多すぎる。何かを隠していますと言っているようなものだ。やるとしたらバレないようにしろ。ってそうじゃないか...。


まぁそれは置いといて、このまま1人では何かあった時対処ができない。だから一先ずは警備兵を数人連れてこよう。今は数人が起きて警備しているはずだ、大事な睡眠時間を奪うことになるが、これも仕事だ。済まないが今起きているものを連れてくるとしようか。





✱ ✱ ✱



一先ず数人の警備兵を連れてきた。
そして今はあの怪しい男達が入って行った建物の様子を見ているところだった。


「5分後に決行しよう」

「ご、5分後ですか!?」

「あぁ、きっとあいつらは朝が明ける前に動くはずだ。今は深夜、あいつらだって人間だ、今頃作戦を立てるなり、寝るなり好きにしているだろう、だからそこをつくぞ」

「「「はっ」」」


兵達は出来るだけ声を抑え、キレのいい返事をした。







「時間だ」

私は兵を一旦その場に残し、1人で建物に向かった。そして、埃の被った窓から中を覗き込むと、予想通り先程の男達とあと数名の男達がテーブルに置かれたランプを囲み何やら話し合っていた。

 
これは1人では無理だな。


私は後ろに控えている兵達に合図をし此方に近づいてきてもらった。

「中に5人ほどいる、恐らく上に何人か逃げるはずだ、私はそいつらを捕まえる。残りの者達は任せだぞ」

「「はっ」」
「了解しました!」

静かに扉を開け、数秒様子を見て突撃した...!


「何だ!?」
「おい、どうなってる!」
「まさか、バレたのか!?」
「うわぁ、助けてくれ!!」

やはり、何かよからぬ事を企んでいたようだ。


「あとは頼んだぞ!!」
「「はい!!」」

予想通り数名が上に逃げたようだが、上に逃げるなど全く馬鹿だな。


「うわぁ!来るな!」

躍起になった男が飛びかかってくるがそらを躱し、逆に頭を掴み、壁に押さえつける。

それを見ていた男も防衛本能が働いたのか、はたまたやけになったのか、同じく飛びかかってきたが、それも難なく躱し、今度は回し蹴りで鳩尾を殴った。少々手荒だが仕方がない。


あの部屋にも誰か居るな。


どうやら、今の音で2階に居た者も騒ぎに気づき始めたようだ。1人だが仕方ない、行くか。


バンっ!!!


「なんだ!?」

もろい扉だな。そのせいで男達が余計に慌て始めてしまったぞ。

私はすかさず1人の男の意識を奪うと、続けて隣の男も同じように意識を借りとった。



そして当たり前のように前を向いた、が。

え?

そんな、まさか...





目の前には先程まで必死に探していた彼女が、いた。下を向いてはいるものの、あの綺麗な黒髪は彼女しかいない。

まさか、捕まっていたなんて。


今になりあの男達への怒りがふつふつと湧き上がり、行き場のない怒りをどうしようか考えていると、彼女がゆっくりと顔を上げた。


彼女は暗闇に目が慣れていないせいかキョロキョロと視線をさ迷わせていた。


「無事か?」

取り敢えず声をかけてみる。


しかし、彼女の目に移る思いは驚愕と、私に対しての疑惑のようなものを向けられた、気がした。無理もない、こんな事をされて素直に人を信じられるはずがない。だが、もう大丈夫だ、私はお前の見方だ。だからそんな目で見ないで。私は絶対君を傷つけないよ。


ゆっくりと彼女のもとへと駆け寄り、もう一度声をかけた。

最初こそ警戒されされてはいたが、話していくうちに次第に緊張も溶けていき、店であ会った私だと気づいてくれたようだった。

だが、緊張が溶けた彼女の大きな瞳から、涙がひとつ、またひとつと零れ始めたのだ。またしはそれを見て慌てた。

そして、彼女が安心できるように抱きしめた。

なんて華奢なんだ...それにぎゅっと弱いながらも力強く握る手が私を離さない、思わず守ってやりたくなるほど庇護欲を注がれる。


彼女は、なんと言うか、可愛いな。


今まで女とははっきり言うと煩わしいものだった。必要以上に香水を付け、下品にも肌を露出させ擦り寄ってくる、そんな女どもばかりだった。だから私は昔から貴族の令嬢は苦手だ。
だが、彼女は違った、一見貴族の様でいて貴族らしくなかった。ほんの少しの間しか一緒に居なかったが、あの時間だけで私は君のことを相当気に入ったようだ。


腕の中でスヤスヤと眠る顔は幼く、それでいて綺麗で見ていて飽きない。あの綺麗なアメジストの瞳は今は瞼で隠されている。見たいとは思うが、今は寝かせておいてあげよう。


ミア、君が起きたら真っ先におはようを言いに行くよ。


さて、城に帰ったらあいつにどう説明するか。
色々説明することになるだろうが、まぁいいだろう、何せ今日はひとつ仕事を終わらせたからな。きっとあいつも喜ぶはずだ。

まさか、人身売買の組織が見つかるなんてな、これを土産に持ってけば機嫌も良くなるだろう。

私は呑気にもそんな事を考えてはいたが、事態はそんな軽く済むはずもなかった。




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次回はなんとアイザック視点です!
そんな登場してないんですがw

まぁ、お楽しみに!

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