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帝国編

陛下、城を飛び出す

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祝日なのに、ゆっくりできない!!
くそっ!遊びたいぜ!

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昨日、人身売買の組織の連中がこの帝国で何やら経路を作っていると報告に上がった。
それだけじゃない、帝国の西側に広がる海に外国船が無断船舶していたとか、帝国で多く輸入していた薬草が近々輸入出来なくなりそうだとか。
どれもこれも今すぐ解決できるような問題じゃない。なのに、毎日毎日決まって大量の案件が来る。私に何か恨みでもあるのか?

それに、最近やたらと父や母、果ては叔父上や叔母上までが私に「そろそろ結婚したらどうなんだ?」「いい歳なのですからそろそろ結婚なさい」と口を揃えて言われる。
だいたい、どこの国でもそうだが的年齢期が早すぎではないか?私はまだ21だぞ?

この前だって、「俺、14歳の令嬢と婚約したんだが、少し、いや大分子供で、とてもじゃないが恋愛対象としては見れないんだがどうしよう」と俺の数少ない友人が言っていたのを覚えている。

そんな体験談もあってかなかなか婚約のこの字も頭に浮かんでこない。

はぁ、と思わずため息が出た。

徐に机に置かれる透明なコップを見れば、2日間殆ど寝ていないせいか隈が出来ている自分がいた。

休みが欲しい...出来れば永久的に。

まぁ無理か......あいつが許してはくれないだろ。
それでもたまには息抜きくらいはしてもいいのではないか?私はこんなにも働いているのだぞ?少しぐらい良いだろう。


そうだ、遊びに行こう、出来れば城下に。たまには街の様子を見るのも立派な仕事だ。だから決して遊びに行くのではない、断じて違う。

が自然と緩む頬がその決意の信憑性を薄くしてしまう。

まぁ、取り敢えず行くか!

私は平民用の服に着替えてから必要な物を、と言っても殆どないが、それでも剣は腰に挿し、少しばかりの金をポッケにしまっておいた。

素早く準備を終えるとさっそくドアに向かって歩き出した。

が、運悪く誰かが入室の合図をしてきたと思う ったら、許可をしていないにもかかわらず扉が開いた。

ガチャ

「陛下、失礼します」



「...あ」

「陛下?どこに行くおつもりで?」

「いや...」

「まさか、逃げるつもりじゃないですよね?」

「逃げるわけじゃない!ちゃんと仕事に行く!」

「へぇ、じゃぁなんでそんな身軽でお忍び用の服を来てらっしゃるんでしょうか、それにローブまで持って」

アイザックか、なんでこんな時に、だから許可をとる前に入ってきたのか...それにあのアイザックの顔を見る限り絶対分かっている、バレたと言っていい。無理もない私は今お忍び用の服を着ている。バレルに決まってる。
それでも、今来なくてもいいでは無いか...今お前が来なかったら私は城下に行けたのだぞ?なんて事をしてくれる...



かくなる上は...




✱ ✱ ✱



やったぞ!やってやったぞ!あのアイザックを負かしてやった!!
見たかあのアイザックの顔を!あいつ私が屋根を走り出し時から顔面蒼白になって口をパクパクさせていたぞ!あんな顔を私は今までに見たことがない!なんて気分がいいんだ、まるで悪戯が成功した子供のような気分だ。

まぁそれはいいとして、上手く城を出る事が出来た!それもアイザックに気づかれた上で、だ!

あぁ、嬉しい。もうそれしか頭に浮んでこない。
このまま、どこか遠くに行ってしまおうか?
いや、それは流石に辞めておくか...やったあとが怖いからな。


まぁ、取り敢えず街に行こう!



✱ ✱ ✱


「そこの兄ちゃん!串焼きはどうだい!」

「...俺の事か?そうだな、1本もらおうか」

「1本な、毎度あり!」


私は街の露天で串焼きを1本買った。

こんなものが売られているんだな、知らなかった。やはり、逃げたい一心で出てきてはいたがこうして街の様子を見るのも勉強になるな...何より自分が統治している国がこんなにも活気づいているのを見れて嬉しい気持ちもある。

それに、私は皇帝になってから本当にこの政策が正しいのか常々思っていた、だがこの活気を見る限り心配はなさそうだ。良かった、私は間違ってはいなかったのだな。


暫く歩くと昼の時を知らせる鐘が鳴った。

ゴーン、ゴーン...

いつも城から聞いている音よりも何だか綺麗な音だな。まぁ、城から時計塔は離れている、音が少しばかり変なのは仕方の無いことか。


そうだ!この際だからあのお店に行ってみようか!実はさっき旅芸人のショーを見ている時、隣の2人組が「この近くに、食事をしながら演奏を楽しめる店があるんだって!」と仲良く話しているのが聞こえたのだ。

それに興味を持った私は、また、露店に行き食べ物や雑貨を買いつつ道を聞いて回った。



「ここか」


目の前には雰囲気の良さそうな白を基調としたハウス。扉は2面で今はどちらも開け放たれた状態で中の様子を見せてくれていた。


店の中に入ってみると程よい人の声と食器の音がした居心地のいい空間が広がっていた。
それに合わせピアノの音色が響き食事中のいいBGMとなっていた。


この店が人気なのも頷ける。


そんな事を思っていると演奏が終わり、また、夜になると今度はピアノだけでなくヴァイオリンも加わるそうだ。
出来ればそのヴァイオリンが聴きたいので私は一旦店を離れ再び露店が多く出ている街の方へと足を進めた。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お気づきの方もいらっしゃると思います。そうです!今回はハル視点です!

まだあと1、2話程続きます!

お読みいただきありがとうございました。
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