国を追い出された令嬢は帝国で拾われる

氷雨

文字の大きさ
上 下
11 / 53
帝国編

令嬢、助けられる

しおりを挟む


バンッ!!!


「なんだ!?」




「うぉ!!」

「がっ!」


え、何?

なんか、騒がしくなったな...
どうしたんだろ?

私は、今まで下げていた頭をゆっくり持ち上げ辺りを見回した。

やっぱり殆ど見えないや...

辺りはすっかり暗くなってしまい、先程出ていた月も今は雲に姿を隠してしまっていた。


でも、何となくは分かる...

目の先には先程私を拉致った男性達だろうか?その男達が床に伸びていた。多分...

なんで?

もう1回確認するために膝立ちになり前のめりに男達と思わしき人達を見据える。

丁度その時、今まで隠れていた月が顔を見せ、暗闇で包まれた部屋を明るく照らしだした。


これで見える。と思いながら窓から視線を離してまた、男達を見た。

え?

誰?

目の先に転がる男達は見つけた。でもその傍に立つ男性は見たことがなかった。


暗闇に溶け込みそうな青髪に対照的な光り輝く金色の瞳のもつ男性が静かに此方を見ていた。


「...無事か?」

「...!!」

急に声をかけられ、驚く。
この人が、倒したのだろうか?

でも、1人で?それに、私を知っているような口ぶりで...どこかで会ったかしら?

それに、この人の声、何だか初めて聞いたわけじゃないような......気の所為かしら?


そんなことを考えていると、何も答えない私に痺れを切らしたのかズカズカと此方に近ずいてきた。


「おい!無事か?」

二度目の質問に少しだけ回ってきた頭でなんとか答える。

「...はい!ぶ、無事です!」


「本当か?なら、いいが...」

「あの...貴方は?」

「え?忘れたの?」

忘れたの?ですって!?こんな人間離れした美形の人に会ったら一生忘れ無さそうなのだけど...本当に何処かでお会いしていたのかしら?だとしたら私は相当ボケていることになるわ...

「あぁ、すまない忘れていた」

そう言うと彼は、先程の場所よりも離れた端に置かれているローブを手に取ると此方に戻ってきた。

「これを見て分からないか?」

茶色いローブ...?
これがどうしたの?ってえ?これってついさっき見たような...
いやいやだからってあの暴君が目の前の男性なわけ...

一応確認のために聞いてみよう。

「...貴方...もしかして、私とさっき会ってる?」


「あぁ、会ってる」

彼は私の問いに即座に答えた。


嘘よ...まさか、こんな所まで着いてきたの?
まさか、この人もあの人達の仲間なんじゃ...


「いや、違うからな?」

「え!?」

心を読まれた!?

あれ、こんなやり取りさっきもした様な...

あれ...?と思った私はついに気づく。


「貴方やっぱりお店で会った...」

「やっと思い出したか」

やっぱりあのお店で会った暴君!!

「わざわざ助けに来てくれたの?」

「あぁ、迷惑だったか?」

「別に!逆にお礼を言うわ!でも...」

「でも...?」

「何でお店では手を離してくれなかったの?私にして見ればあれは迷惑以外の何者でもなかったのだけど...」

そうなのだ、実際あの時、ずっと離さなかったことに対して少なからず私は怒っている。
それを思い出し少し怒り口調で言ってしまった私の雰囲気を感じ取ったのか彼は焦って謝ってきた。


「...!!すまなかった」

「...!!」

なんだ、謝れるんじゃない...案外悪い人じゃいのかもしれないわね...
なのになんであんな行為をしたのかしら?
でも、そうね...今はもういいわ。だって、さっきなにをされていようが今助けてくれたのは彼だから。

良かったわ...本当に良かった...



「泣いているのか?」


泣いてる?誰のことを言っているの?
けど、直ぐに頬に伝う暖かい雫が自分が泣いていたんだと教えてくれた。

さっきまで涙なんて一滴も出なかったのに、彼の前では何だか安心するわ。だからかしら?涙が出てしまったのは。


彼は少し躊躇したがゆっくりとしゃがみ込み壊れ物を扱うようにそっと抱きしめてくれた。


少しの間、彼の胸を借り、静かに泣いた私はそっと彼から離れた。彼に言わなくてはいけないことがあるからだ。


彼は私が離れると、名残惜しそうに私の顔を見たあと私が何かを言おうといていることを察したのか聞いてきた。

「どうした?」

「あの、そろそろ縄を切ってもらいのだけど...お願い出来るかしら?」


「そうだった!!すまない、痛くはなかったか?」


「今解く」と言うと腰に刺した剣を抜き私の背後に差し入れ素早く縄を切ってくれた。

「ありがとう、これで少し楽になったわ」

「どういたしまして」

そう言った彼はニコッと色気たっぷりに笑った。

何その笑顔、反則よ!

美形の笑顔は女を殺すのよ!!全くもう!
泣いた後でスッキリしたのかさっきの憂いが綺麗さっぱり無くなり、心無しかテンションが高くなっている。


「ねぇ、君の名前ってミリアーナ、で合ってる?」

「えぇ、でも私貴方に名乗りましたっけ?」

「いや、シーラさん達が君の名前を呼んでいたから」

「あ、そうね」


そうだったわ...


「じゃあ、私にも貴方の名前を教えてください」

そう言うと彼はさっきと打って変わって子供のようにぱぁっと顔を輝かせた。

「やっと私に興味を持ってくれたね!いいよ!好きなだけ呼んで!」

何この人、犬みたいだわ...なんか、可愛いかも。


「私の名前はハル=ディランだ。ハルでもディランでもいい、好きに読んでくれ」

「じゃぁ、ハル様と呼ばせてもらいますね」

「様は付けなくて良いんだが...」

「えっと、まだ会って間もないですし...」

「まぁいいか、それと私はミアと呼ばせてもらうが良いだろうか?」

「いきなり愛称は照れますよ...」

「慣れてくれ」

「...」

やっぱり暴君だわ...絶対どこかのお金持ちのボンボンよ...人のこと言えないけど...


「それと、ミアはこれからどうする?家に帰るのか?」

「あっ...」

宿取ってない、それにパスタ食べ損ねた...
今頃あの麺は伸びているのかしら...食べたかったわ...けど困ったわね...私は国外追放された身(多分)
だし、それに、森に捨てられて国を超えて来ましたなんて言えない...。どうしよう...

「その様子だと、帰る場所がないみたいだが、家出でもしてきたのか?」


「いえ、そういう訳では...」


「何だ?言えないことなのか」


「...はい」


「そうか、なら私の家に来い」

「え?」

「嫌か?」

「いえ!嫌とかじゃなくて、逆に聞きますが私があなたの家に泊まったとして迷惑ではないのですか!?」

「あぁ、それは心配するな、家は広い、1人2人増えたところでなんの支障もない、だから安心してうちに来い」

「...そ、そんな...でも」

「もういい」

そう言い捨てるとハル様は私の足と背中に手を滑り込ませ持ち上げ、横抱きにした。


「ひゃっ!?」

「しっかり捕まっていろよ?」

な、な、なんでこんな格好に!?
まさか無理やり連れていく気じゃ!!


やっぱりこの人、暴君だわ!!


深夜のテンションとは思えないほどミリアーナの心はハイになっていた。

しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...