国を追い出された令嬢は帝国で拾われる

氷雨

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帝国編

令嬢、注目を浴びる

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お休みをいただきありがとうございました。
皆さんから体を大事になどの感想を頂いて涙が出ました!
また、更新始めますのでよろしくお願い致します。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「...!!」


不味い、ピアノの弦が切れてしまってるわ!

ピアニストの男性は大丈夫かしら?
急に切れたのだものきっと動揺してるはず、楽譜が飛んでなければいいのだけど...。


しかし、私の願いも叶わずピアノのテンポがズレ始め、一楽章が終わった今最初のような軽快さはない。客も流石に気づき始め1人また1人と席を立ち店を出ていってしまった。



このままではまずいわ、でもどうしたら...



そうだわ!!


私は店の端に置いてある荷物からヴァイオリンを取り出した。


実はさっき彼女らの物と思わしき荷物の傍に立てかけてあるヴァイオリンを見たのだ。


あの時は、「へ~2つも持ってるんだ」ぐらいにしか思ってなかったけどまさかこんな時に役に立つなんて...!私って凄いわ!




勝手に使うのはちょっと気が引けるけど、今は兎に角助けることが最優先よね...だから許して頂戴!


そう心の中でごちりながら、私は不自然にならないようにピアノに近づいていき、丁度ヴァイオリンを引き立てるフレーズに差しかかる時、私は弓を引いた。


「...!!」

どうやら、今まで自分の傍に人が近づいてきたことを知らなかったピアノ二ストの男性はこちらを見て驚いていた。


それだけ焦っていたんだわ...
私は、ちらりと視線を向け、小声で話しかけた。


「ピアノの音量を下げてください...後は私がやります」


私が端的にそう言えば男性は察してくれたようで、音量を下げた後上手く誤魔化し、鍵盤から指を離してくれた。


私はそれを横目で確認した後、今度は彼女に視線を移した。

彼女も察してくれたようで、此方に目礼をした後、小さな声で「ありがとうございます」と言われた。


よかった......迷惑ではなかったみたいね...


それにしても、意外と私も腕はなまっていなかったみたいね......王妃教育で時間がなかったために暫くヴァイオリンには触れていなかった......。
それに今演奏している曲も15歳の時に気に入り毎日弾いてはいたが、正直今になって弾くとなると少々不安があったのだ...




でも、あれね、急に飛び出してきてしまったから録に調律が出来てないわ...そこはまぁ、演奏中に追追合わせていくから、だからそれまでは許して頂戴......だって私はピアノ二ストの男性を助けるために来たんだもの......あまり演奏の技術は求めないでよね?



でも、良かったわ...だって隣で弓を引く彼女はさっきと打って変わって緊張の解けた笑顔に変わっていたから。


本当に良かったわ...




あら、曲もそろそろ終盤みたいね...気づかなかったわ.....次は何だったかしら、そう言えばセッションなんだし、2nd を弾いた方がいいわよね?
今になって思ったけど1stが2人もいたら曲の良さが落ちてしまうわ...最後の盛り上がりは彼女に譲りましょう!


さぁ!私が貴方を引き立てるわ!存分に弾いて踊って頂戴!


私は隣の彼女を見た。

私と同じように彼女も私を見た。



そして、私達はお互いに目を合わせ、相手の一挙手一投足に神経を注ぎ、まるで1人で弾いているかの様に息を合わせ、曲を奏でる。

2つの音が、2つの音色が一つの音になった。


そして、最後にハーモニーを奏でたヴァイオリンから綺麗な音色が一層響き、曲の最後を締めくくった。


シーンと静まり返る中、私達は笑顔を称えながらお辞儀をした。ここまでが演奏、最後まで気を抜いてはダメなのよ...!


「「ありがとうございました!!」」


私達が終わりの合図を告げれば、
1人、また1人と拍手が増えていき、最終的には店内が拍手喝采に包まれた。


私達はお互いに顔をあげ同時に笑った。




✱ ✱ ✱




演奏を終えた私は、彼女、名前をジーンとヘレナ
と言い、なんと2卵生の双子だそうで、その2人から必死の形相で「片付けが終わったらお礼に行きます!」と口を揃えて言われたので、じゃぁ、パスタ食べて待ってようかな、とか思って先程座っていた席へと戻ったのだが......


なんか、めっちゃ見られてるわ!


みんなの視線が痛い!!そんなに見ないで!穴空いちゃうわよ!!


確かに急に演奏し始めたから注目を浴びるのはしょうがない事よ?でもね年頃の若い娘をそんな穴が開く程見るのは宜しくないと思うの...


なので私はみんなの視線を無視しながら先程座っていた席へと腰掛けた。あたかも私は演奏なんてしてませんよ~と言う風に。(無理があるが)




席に着くと先程の店員がパスタを持ってきてくれた。わーい!お腹すいてたのよぉ、ありがとう店員さん!



「お客様凄いです!私、感動しました!!」

「ありがとうございます!」


そう言って貰えるとこちらも嬉しいわ!
やっぱり弾いたかいがあったわね!
演奏し終わって元の席に戻ってくる時は恥ずかしかったけど...。




と、そこへ急に隣の席から声をかけられた。


「いい演奏だったよ、ありがとう」

え?


そっと、人二人分ほどが通れるような道を挟んだ通路の先を見れば、茶色いローブで頭から体までを隠している凄く、すご~く怪しそうな人が此方を見ていた。



「そ、それは、どうも?」


「なんで疑問形なんだよ、あとそんなに緊張しないで...」


そう言った彼?からクックッと笑い声が聞こえてきた。

は?

今の発言のどこに笑う要素があったというの?
頭がおかしいのかしら?これは、医者を呼んだ方がいいわね。重傷者よ。


「おい、今なにか失礼な事を考えてはいないか?」

「えっ!?」


もしかして、人の心が読めるの?

「言っておくが、読めないぞ」

「......」

ダメだわ、この人危険だわ、離れましょ、よし、離れましょ!


思い立ったら即実行あるのみ、それでは何処かの誰か様、御機嫌よう!!


そう、心の中で言いながらパスタにサヨナラをし、席を立ち逃げようとすると、腕を掴まれた。


「逃がさないぞ」

「はぇ!?」

思わず素っ頓狂な声が出た。

そーと、相手の顔を伺えば......

笑ってる!?

まじですかー、なんて野郎だ......



「あのー離して欲しいんですが...」

と勇気をだして言うも


「いや、逃がさないと言ったが?」

と呆気なく返される。


「......」

「......」

この人なんなんですの?

盛大に疑問符が頭の中を埋めつくし、ミリアーナの頭は今軽くパニック状態に陥ったのだった。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

お知らせです。
カセドナ皇国から王国に変更致しました!
今まであれなんか違うと思って読んでいた皆様、少しでも気持ちよく読める文章に致しました。


ご指摘下さった皆様、また何か間違いがありましたら教えてください。改善致します。
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