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天使様はピュアっ子でした。
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「…ぶな」
「え?…」
今なんて?
「勝手に僕の名を呼ぶな」
「……」
え、呼ぶなって、じゃあなんて呼べばいいのよ。
「あの、ではなんとおよびしたらよろしいのですか?」
「しらない」
えー
何この子、見た目天使なのに口を開けばとんだ我儘っ子じゃないの、さ、詐欺だわ。私の感動を返せ!
「あの~、しらないというのは、いささかむりがあります」
それでもこのままではいられないため、私も必死に粘る、いくら私の顔が軽く引きつっていようが、怖い微笑みをしていようが、決して怒ってはいけない、いくらこの天使様にムカついてきたからって怒鳴ってはいけないわよルチアーノ。
「…では呼ぶな」
「……」
ひっひっふー、ひっひっふー、深呼吸を忘れてはいけないわ、こうすることで怒りも少しだけ緩和できるのだから定期的やらなくては。
あー、すっきりすっきり、ってなるかこの馬鹿!!
「あのですね?ひとからはなしかれられたらかえすというのがれいぎです!!」
「は?」
「まず!!なんですかあなたのたいどは!!じぶんよりもくらいがひくいものにはそのようなたいどをとるのがこうしゃくけのふつうなのですか!!!」
「おい、急にどうしたんだ!」
「どうしたもこうしたも、すべてはあなたのたいどがげんいんなのですー!このばかーー!!!」
「はーー!?」
はー、はー、はー、言ってやったぜ!!私!!
ざまぁみろ!!
「……」
あ、今思ったけど流石に馬鹿はないんじゃない?
これって不敬罪よね?
あ、詰んだ……………逃げよ。
「し、しつれいしました!!!」
と大きな声で謝罪をし、勢い良く頭を下げから、まだ未発達な足に精一杯力を入れて後ろに方向転換をする。
そして脇目も降らず私は走り出した。
でも、その足は後ろから聞こえてくる音に反応してすぐに止まってしまった。
「あ、おい待てっ!!……う、ごほっごほっ」
足を止めて後ろを振り返れば、地面に膝をつき地面に着くのではないかと思うほど前に倒した上半身が、激しい咳と同時に震えていた。
「ノアさま…!?」
私は一度走った道を引き返してノア様の元に駆け寄った。
「だ、だいじょうぶですか!?ノアさま!!」
「ごほっ、ごほっ…う、うる、さい、ごほっ、ごほっ、あ、っちに、ごほっ、いってろっ…」
「そんなことできません!!!」
そうだ、そんなことできるわけないじゃないか!!
こんな苦しそうな姿を見せておいて今更あっちに行けなんて、強がるのも大概にしろ!
近くに誰かいないのかしら?
というかこの御屋敷はなんでこんなに人がいないのかしら?
「あっちに、行けよっ、はぁ、はぁ、ごほっ」
「ちょっとうるさい!!」
私はとりあえずノア様の背中を摩った。少しでも良くなるようにそう願いを込めながら、ゆっくり、ゆっくりと摩ってあげた。
こんな小さな手だけど力の強い大人より良いはずだ。
お願い、おさまって…。
「はぁ、はぁ、…」
「だいじょうぶ、だいじょうぶです」
ゆっくり、ゆっくりと上から下へと上下にゆっくりと手を動かして少しでも安心させてあげる。
ノア様の病気が何なのかは分からないけど、前世で私は喘息持ちだったから少しだけ分かる。
きっとこれは発作で、咳が止まらなくなっているんだ。背中を摩ったところで効果は無いって分かってるけどしないよりマシなはず。
多分だけど、ある程度発作が起きれば喘息の場合しばらくは出ない。けど空気が乾燥していたり、暖かかったりするとまた変わってくる、本当に面倒で厄介な病気なのだ。
ただノア様は違う、ノア様が患っている病気が何か分からない以上、もしかしたら今、吐き気や頭痛だってあるかもしれない。
だから執念に私はノア様の背中を摩った。
「だいじょうぶです、わたしがいます、だいじょうぶ」
「はぁ……はぁ……」
体感だが10分くらいだろうか、それくらいの時間が経つとノア様の咳も落ち着いて、徐々に息遣いも落ち着いてきた。
私はポケットからハンカチを取り出して、ノア様の額にそっとあて、汗を拭き取った。
それでもまだ脳は興奮しているだろうから、落ち着けるためにも私は背中をさすり続ける。
それを5分くらい続けていると、ノア様の手が私の顔の前にそっと割って入った。
スっと呼ばされた手が私の顔の前で止まる。
「もう、いい……あ、ありがとう」
「はい、よかった」
そう言って笑うと、ノア様はふいっと顔を逸らしてしまった。その耳は少し赤くなっていて、きっと顔も赤くなっているから逸らしたのだろうと容易に理解出来てしまって、私は少しだけ笑ってしまった。
「な、何がおかしい…」
「いいえ、ノア様はピュアっ子なのだな~と思いまして」
「ぴ、ぴゅあ…?」
あぁ!これは前世の言葉でこっちの世界にはこんな言葉なかったわ!!
「ノアさまはかわいいといったんです…ふふ」
「なっ…!?」
少し赤くなった顔が益々赤くなったことによりノア様は手で顔を覆い隠してしまった。
あぁ…せっかくの天使様の照れ顔が……
「お、おまっ、何が天使だ!頭おかしいんじゃないのか!?」
あらま、心の声が口に出ていたようです。
「ほんとうのことですわ」
「う、うるさいぞ!」
「はいはい、たくさんせきをしましたから、これいじょうはなすとのどをいためてしまいますよ?」
「う…」
私がそう言ってあげると渋々ながらも黙ってくれた。
「いいこいいこ~」と撫でてあげれば「う、うるさい!」とまた大声を出して恥ずかしがったので「めっ!」と両手でバッテンを作ってノア様のお顔の前に突き出せば、途端にしゅんっと静かになってしまった。
それがなんだか可愛くて面白くて、私は後世で久しぶりに心から笑ったのだった。
「え?…」
今なんて?
「勝手に僕の名を呼ぶな」
「……」
え、呼ぶなって、じゃあなんて呼べばいいのよ。
「あの、ではなんとおよびしたらよろしいのですか?」
「しらない」
えー
何この子、見た目天使なのに口を開けばとんだ我儘っ子じゃないの、さ、詐欺だわ。私の感動を返せ!
「あの~、しらないというのは、いささかむりがあります」
それでもこのままではいられないため、私も必死に粘る、いくら私の顔が軽く引きつっていようが、怖い微笑みをしていようが、決して怒ってはいけない、いくらこの天使様にムカついてきたからって怒鳴ってはいけないわよルチアーノ。
「…では呼ぶな」
「……」
ひっひっふー、ひっひっふー、深呼吸を忘れてはいけないわ、こうすることで怒りも少しだけ緩和できるのだから定期的やらなくては。
あー、すっきりすっきり、ってなるかこの馬鹿!!
「あのですね?ひとからはなしかれられたらかえすというのがれいぎです!!」
「は?」
「まず!!なんですかあなたのたいどは!!じぶんよりもくらいがひくいものにはそのようなたいどをとるのがこうしゃくけのふつうなのですか!!!」
「おい、急にどうしたんだ!」
「どうしたもこうしたも、すべてはあなたのたいどがげんいんなのですー!このばかーー!!!」
「はーー!?」
はー、はー、はー、言ってやったぜ!!私!!
ざまぁみろ!!
「……」
あ、今思ったけど流石に馬鹿はないんじゃない?
これって不敬罪よね?
あ、詰んだ……………逃げよ。
「し、しつれいしました!!!」
と大きな声で謝罪をし、勢い良く頭を下げから、まだ未発達な足に精一杯力を入れて後ろに方向転換をする。
そして脇目も降らず私は走り出した。
でも、その足は後ろから聞こえてくる音に反応してすぐに止まってしまった。
「あ、おい待てっ!!……う、ごほっごほっ」
足を止めて後ろを振り返れば、地面に膝をつき地面に着くのではないかと思うほど前に倒した上半身が、激しい咳と同時に震えていた。
「ノアさま…!?」
私は一度走った道を引き返してノア様の元に駆け寄った。
「だ、だいじょうぶですか!?ノアさま!!」
「ごほっ、ごほっ…う、うる、さい、ごほっ、ごほっ、あ、っちに、ごほっ、いってろっ…」
「そんなことできません!!!」
そうだ、そんなことできるわけないじゃないか!!
こんな苦しそうな姿を見せておいて今更あっちに行けなんて、強がるのも大概にしろ!
近くに誰かいないのかしら?
というかこの御屋敷はなんでこんなに人がいないのかしら?
「あっちに、行けよっ、はぁ、はぁ、ごほっ」
「ちょっとうるさい!!」
私はとりあえずノア様の背中を摩った。少しでも良くなるようにそう願いを込めながら、ゆっくり、ゆっくりと摩ってあげた。
こんな小さな手だけど力の強い大人より良いはずだ。
お願い、おさまって…。
「はぁ、はぁ、…」
「だいじょうぶ、だいじょうぶです」
ゆっくり、ゆっくりと上から下へと上下にゆっくりと手を動かして少しでも安心させてあげる。
ノア様の病気が何なのかは分からないけど、前世で私は喘息持ちだったから少しだけ分かる。
きっとこれは発作で、咳が止まらなくなっているんだ。背中を摩ったところで効果は無いって分かってるけどしないよりマシなはず。
多分だけど、ある程度発作が起きれば喘息の場合しばらくは出ない。けど空気が乾燥していたり、暖かかったりするとまた変わってくる、本当に面倒で厄介な病気なのだ。
ただノア様は違う、ノア様が患っている病気が何か分からない以上、もしかしたら今、吐き気や頭痛だってあるかもしれない。
だから執念に私はノア様の背中を摩った。
「だいじょうぶです、わたしがいます、だいじょうぶ」
「はぁ……はぁ……」
体感だが10分くらいだろうか、それくらいの時間が経つとノア様の咳も落ち着いて、徐々に息遣いも落ち着いてきた。
私はポケットからハンカチを取り出して、ノア様の額にそっとあて、汗を拭き取った。
それでもまだ脳は興奮しているだろうから、落ち着けるためにも私は背中をさすり続ける。
それを5分くらい続けていると、ノア様の手が私の顔の前にそっと割って入った。
スっと呼ばされた手が私の顔の前で止まる。
「もう、いい……あ、ありがとう」
「はい、よかった」
そう言って笑うと、ノア様はふいっと顔を逸らしてしまった。その耳は少し赤くなっていて、きっと顔も赤くなっているから逸らしたのだろうと容易に理解出来てしまって、私は少しだけ笑ってしまった。
「な、何がおかしい…」
「いいえ、ノア様はピュアっ子なのだな~と思いまして」
「ぴ、ぴゅあ…?」
あぁ!これは前世の言葉でこっちの世界にはこんな言葉なかったわ!!
「ノアさまはかわいいといったんです…ふふ」
「なっ…!?」
少し赤くなった顔が益々赤くなったことによりノア様は手で顔を覆い隠してしまった。
あぁ…せっかくの天使様の照れ顔が……
「お、おまっ、何が天使だ!頭おかしいんじゃないのか!?」
あらま、心の声が口に出ていたようです。
「ほんとうのことですわ」
「う、うるさいぞ!」
「はいはい、たくさんせきをしましたから、これいじょうはなすとのどをいためてしまいますよ?」
「う…」
私がそう言ってあげると渋々ながらも黙ってくれた。
「いいこいいこ~」と撫でてあげれば「う、うるさい!」とまた大声を出して恥ずかしがったので「めっ!」と両手でバッテンを作ってノア様のお顔の前に突き出せば、途端にしゅんっと静かになってしまった。
それがなんだか可愛くて面白くて、私は後世で久しぶりに心から笑ったのだった。
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