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第三章 シャーロットでの生活
薬の配達
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ある日のことエリナがいつもの様に広場で薬を売っていると、ゆったりとした仕立ての良い服を着た老人がエリナに声を掛けて来た。
「広場で薬を売っているというのは君のことかな?」
「はい、今ならノドの薬と、目薬、胃の痛みに効く薬がありますけど……」
エリナはバスケットの中身を確認した。
「虫刺されに効く薬は無いのか?」
「どうかされたんですか?」
「実はな……うちの屋敷の裏庭に大きなハチが巣を作りおってな……そいつに刺されて困ってたんだよ」
よく見ると老人の右腕にはハチに刺され腫れた跡が残っていた。
「まあ、ひどい腫れじゃないですか」
「そのうち腫れは引くと思うんじゃが……屋敷の者がうるさくてな」
「それはお困りですね……今は持ち合わせが無いんですけど。薬の調合も出来ますので後ほどご自宅まで届けましょうか?」
商売上手のエリナは、後で配達することを申し出た。
「なんと、そんなサービスをしてくれるのか? この年になると病院まで行くのもおっくうでな、家の奴らなんでも大げさに言いよる」
「フフフっそうなんですね。ご自宅さえ教えて頂ければわたしがお届けします」
「そうかい。散歩がてら寄ってみたが、いい娘に出会ったもんだ」
届けてくれるという話を聞いた老人はたいそう喜び、住所の書いたメモを手渡した。
「では待ってるぞ。君、名前はなんて言うんだい?」
「エリナです」
「よろしく頼んだよエリナ君。わしはクロップという者だ」
そういうと杖をついた老人は去っていった。
新しい薬を届けることになったエリナは、広場を離れるとまだまだ改装中の家まで戻った。
家に戻ると、高いハシゴに上ったロディが天井に空いた穴を修理していた。
「ロディ~~! ちょっといい?」
「あ、エリナ? 今日は早かったね」
「ちょっと相談があるんだけどいいかしら?」
「分かった、今下りるから待っててよ」
ホコリまみれで天井から下りてきたロディにエリナはさっきの老人の話をした。
「つまりハチの毒の解毒剤を作ればいいんだね」
「そういう事。相談もしないで勝手に受けてしまったけど大丈夫?」
「任しといてよ! 今ある材料で作れるはずだから……」
「さすが、ロディ」
「少しだけ待っててくれる?……乾燥させたナラナラの葉っぱと………ホルミの実を混ぜて軟膏を作ってみるかな……」
ロディはブツブツと謎の植物の名を呟きながら地下室に下りていった。しばらくすると地下室から外に伸びた配管から変なにおいの煙が上がってきた。
30分ほど待っていると、ロディは瓶に入った茶色い塗り薬を持ってきた。
「完成したよエリナ……これを塗れば消毒も出来るし、腫れも治まるはずだよ」
「じゃあ早速、届けることにするわね」
「いってらっしゃーい!」
エリナを見送るとロディは再びハシゴに登り天井の修理を始めた。
家を出たエリナは、再び街の中心付近までやってきた。
「住所をみると、この辺なんだけどな~~」
エリナはもらったメモを頼りに老人の家を探していた。しかし、それらしい建物が中々見つからなかった。
「おかしいな……まさか……この建物かしら?」
エリナはさっきまで役所か何か公共の建物だと思っていたものが、メモの住所と一致することに気が付いた。
「これが家なの……すごい豪邸じゃない……」
エリナは言葉を失った。真っ白な大理石で作られた建物はまるで外国の大使館のようだった。
鉄柵に囲われたその建物の入り口の門には、なにやら立派な紋章が施されており門から建物までは離れていて少し歩かなければいけなかった。
「いきなり捕まったりしないわよね……」
勇気を出して門を開いたエリナは、建物の入り口まで歩いていった。
「すいませ~~ん。薬屋のエリナです」
エリナは入口のある小さなベルを鳴らした。しばらくすると重厚なオーク材の扉が開きクロップ爺さんが出てきた。
「お~君かね、待っていたよこんなに早く来てくれるとは驚いたな」
「お薬を持ってきました」
「もう薬を調合したというのか? 君は優秀な錬金術師だな」
「ありがとう。でも薬を作ってるのは、わたしじゃ無いんです」
「そうかい。まぁいい。作った錬金術師にもお礼を言っといてくれ」
「はい、伝えておきます。ちなみにですがハチの巣はどこにあるんですか?」
「実は……未だに巣の場所は分からんのだよ……」
「え!?」
「庭が広すぎてな、使用人もいるんだが怖がって見つけられんでいる」
「じゃあ、また刺される可能性もあるんですか?」
「そういう事だ。ギルドの冒険者にでも頼もうかと思ったが、こんな依頼を受けるやつはいないだろう?」
「う~ん、どうでしょう? そんな事も無いと思いますよ。じつはわたしこう見えても冒険者なんです。まだレベル3の初心者ですが……」
「ほ~~、そうなのかい? こんな可愛いらしいお嬢さんが冒険者とは驚いたな」
エリナが冒険者と聞いたクロップは、ついでとばかりに仕事を依頼することにした。
「どうだろう? 君たちでハチの巣を見つけて森に戻してくれんかね?」
「巣を森に戻す? 仕事の依頼ですか?」
「あぁ、そうだ君なら信用できると思ってな」
「ありがとうございます。やってみます。あ、あの早速、仲間を呼んできます」
「頼んだよ!エリナ君!」
急遽ハチ退治を依頼されたエリナは、再び家に戻ることになった。
「広場で薬を売っているというのは君のことかな?」
「はい、今ならノドの薬と、目薬、胃の痛みに効く薬がありますけど……」
エリナはバスケットの中身を確認した。
「虫刺されに効く薬は無いのか?」
「どうかされたんですか?」
「実はな……うちの屋敷の裏庭に大きなハチが巣を作りおってな……そいつに刺されて困ってたんだよ」
よく見ると老人の右腕にはハチに刺され腫れた跡が残っていた。
「まあ、ひどい腫れじゃないですか」
「そのうち腫れは引くと思うんじゃが……屋敷の者がうるさくてな」
「それはお困りですね……今は持ち合わせが無いんですけど。薬の調合も出来ますので後ほどご自宅まで届けましょうか?」
商売上手のエリナは、後で配達することを申し出た。
「なんと、そんなサービスをしてくれるのか? この年になると病院まで行くのもおっくうでな、家の奴らなんでも大げさに言いよる」
「フフフっそうなんですね。ご自宅さえ教えて頂ければわたしがお届けします」
「そうかい。散歩がてら寄ってみたが、いい娘に出会ったもんだ」
届けてくれるという話を聞いた老人はたいそう喜び、住所の書いたメモを手渡した。
「では待ってるぞ。君、名前はなんて言うんだい?」
「エリナです」
「よろしく頼んだよエリナ君。わしはクロップという者だ」
そういうと杖をついた老人は去っていった。
新しい薬を届けることになったエリナは、広場を離れるとまだまだ改装中の家まで戻った。
家に戻ると、高いハシゴに上ったロディが天井に空いた穴を修理していた。
「ロディ~~! ちょっといい?」
「あ、エリナ? 今日は早かったね」
「ちょっと相談があるんだけどいいかしら?」
「分かった、今下りるから待っててよ」
ホコリまみれで天井から下りてきたロディにエリナはさっきの老人の話をした。
「つまりハチの毒の解毒剤を作ればいいんだね」
「そういう事。相談もしないで勝手に受けてしまったけど大丈夫?」
「任しといてよ! 今ある材料で作れるはずだから……」
「さすが、ロディ」
「少しだけ待っててくれる?……乾燥させたナラナラの葉っぱと………ホルミの実を混ぜて軟膏を作ってみるかな……」
ロディはブツブツと謎の植物の名を呟きながら地下室に下りていった。しばらくすると地下室から外に伸びた配管から変なにおいの煙が上がってきた。
30分ほど待っていると、ロディは瓶に入った茶色い塗り薬を持ってきた。
「完成したよエリナ……これを塗れば消毒も出来るし、腫れも治まるはずだよ」
「じゃあ早速、届けることにするわね」
「いってらっしゃーい!」
エリナを見送るとロディは再びハシゴに登り天井の修理を始めた。
家を出たエリナは、再び街の中心付近までやってきた。
「住所をみると、この辺なんだけどな~~」
エリナはもらったメモを頼りに老人の家を探していた。しかし、それらしい建物が中々見つからなかった。
「おかしいな……まさか……この建物かしら?」
エリナはさっきまで役所か何か公共の建物だと思っていたものが、メモの住所と一致することに気が付いた。
「これが家なの……すごい豪邸じゃない……」
エリナは言葉を失った。真っ白な大理石で作られた建物はまるで外国の大使館のようだった。
鉄柵に囲われたその建物の入り口の門には、なにやら立派な紋章が施されており門から建物までは離れていて少し歩かなければいけなかった。
「いきなり捕まったりしないわよね……」
勇気を出して門を開いたエリナは、建物の入り口まで歩いていった。
「すいませ~~ん。薬屋のエリナです」
エリナは入口のある小さなベルを鳴らした。しばらくすると重厚なオーク材の扉が開きクロップ爺さんが出てきた。
「お~君かね、待っていたよこんなに早く来てくれるとは驚いたな」
「お薬を持ってきました」
「もう薬を調合したというのか? 君は優秀な錬金術師だな」
「ありがとう。でも薬を作ってるのは、わたしじゃ無いんです」
「そうかい。まぁいい。作った錬金術師にもお礼を言っといてくれ」
「はい、伝えておきます。ちなみにですがハチの巣はどこにあるんですか?」
「実は……未だに巣の場所は分からんのだよ……」
「え!?」
「庭が広すぎてな、使用人もいるんだが怖がって見つけられんでいる」
「じゃあ、また刺される可能性もあるんですか?」
「そういう事だ。ギルドの冒険者にでも頼もうかと思ったが、こんな依頼を受けるやつはいないだろう?」
「う~ん、どうでしょう? そんな事も無いと思いますよ。じつはわたしこう見えても冒険者なんです。まだレベル3の初心者ですが……」
「ほ~~、そうなのかい? こんな可愛いらしいお嬢さんが冒険者とは驚いたな」
エリナが冒険者と聞いたクロップは、ついでとばかりに仕事を依頼することにした。
「どうだろう? 君たちでハチの巣を見つけて森に戻してくれんかね?」
「巣を森に戻す? 仕事の依頼ですか?」
「あぁ、そうだ君なら信用できると思ってな」
「ありがとうございます。やってみます。あ、あの早速、仲間を呼んできます」
「頼んだよ!エリナ君!」
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