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第一章 王都アルビオン

ラニエリの店 2

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 これは二年前、故郷を離れるときに父が祖父の形見だと言って持たせてくれた物だった。大事にしているが、値段が付くほど価値がある物かどうかも分からなかった。

「困ったな……」 途方に暮れるアイマール。

「いらっしゃい。お若いの何かお探しかな?」

 すると、外で長い間ウロウロしている少年に気づいた店主が声をかけてきた。

「あっ、いえ何でも、無いんです……」

 そう言ってその場を離れかけたアイマールだったが、不意に行方不明になっている少女とその家族の事が思い浮かび足を止めた。

 おかしな奴だと思われるだろうがアイマールは思い切って頼んでみた。

「すいません実は、これからクエストに向かうものですが……この金額で道具一式揃えてもらえないでしょうか?」

 アイマールは今出せる金額のすべてを手の中に握りしめラニエリに手渡した。

「アルビオン銀貨1枚と銅貨が5枚……?」

 ラニエリは金額が余りにも少ないので、何かの冗談かと思ったが、目の前の少年は真剣な表情を崩そうとしない。

「ちょっと、君困るよ~私も商売人なんでな。う~む」

「金額が少ないのは分かっています! 初めてのクエストなんです。金額に見合った道具でかまいません。お願いします!」

 アイマールは何度も頭を下げた。

「……分かった君には負けたよ、だが売る事はできん。このお金で道具をしばらく君に貸すことにしよう」

 こんなお願いはされたことがなく、あまりの真剣さに根負けしたラニエリは普段はしないが”貸し出し”という形で道具を揃えてやることにした。

「君は冒険者学校の新卒かい? 他の学生には言うじゃないよ」

 最初は渋々といった感じだったがラニエリは初めて会うアイマールを信用してくれたようだった。

「ありがとうございます! 僕アイマール・フィンといいます。これからずっとこの店だけを利用します!」

 アイマールはラニエリの手を握り感謝した。

「ははは……分かりましたよ。アイマール君。じゃあ店に入りなさい」

 素直に喜ぶアイマールを見てラニエリも少し嬉しくなり店の中に案内した。
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