3日目の夜

はる

文字の大きさ
上 下
3 / 17

LAST? no,3

しおりを挟む
また同じ場所だ。
全てが始めに戻っている。
右の部屋に入ると同じことが起こると思ったので、僕は左の部屋に入った。
ここは個人的な部屋だろう。
机とベッド、クローゼット、テーブル。
普通の部屋だ。
クローゼットの手前に姿鏡があった。
ここで僕は初めて自分の姿を見た。
金髪で目が青みがかった14歳ほどの少年。
小綺麗なスーツをきている。
痩せぎすではないが、決して筋肉がついてるとも言えない。
余裕のある家庭育ちのような肌の質感だが、極端に目が疲れている。
石のようにじっと動かずに鏡を見ていたが、視界の端にある髪束に神経が向いた。
名前、歳、性別、メモが書かれており、その横に顔写真が張り付いている。
『被験者名簿』と大きめに書かれている。歳を見ていると全員子供の様だ。
何枚も目を通していくうちに、恐ろしいものを見た。
僕だ。
僕のメモだけ他の子供よりも少し多い。
『被験者番号017、彼は台まで抵抗をしなかった。疲労からか、目にも光が見えない。鎮痛剤を投与せず左手首の皮膚をサンプルとして2×2cm切り取ると、過激に反応したが血が出ない。
縛り付けていなければこの部屋は荒れたかもしれない。
首に鎮痛剤と麻酔を打つと大人しくなったが、左手だけ痙攣が止まらなかった。
皮膚サンプルを取ったところから動脈と静脈、別々に採血した。彼の血液は、動脈にR、静脈にIの濃度が共に高い。今までの被験者のサンプルよりも適合確率が高いはずだ。動脈にT、静脈にLを投与すれば反応が起こるはずだ。
2時間が経過した。彼の血管と筋肉は"正常に"浮き出ている。
断片的だが、うわ言が止まらない。
「奴が来る...彼が来た!行きたくない!連れていかないで!彼女は鬼だ!彼女は鬼だ!彼女は鬼だ!奴は鬼だ!僕は行かない!殺してやる!殺してやる!殺す!」
以上を1時間以上繰り返している。
15分が経過した。不味いことに彼の顔が真顔のまま引きつっている。彼の血管から血液が滲み始めた。筋肉は異常な伸び縮みを繰り返している。反応は正しかったが何かがおかしい。
鎮静剤の下剤を打つと、少しして失神した。痛みのためだろう。しかし、手放すことが出来ないサンプルなので、左手の薬指を切断し保存する。』

左手を見る。
薬指が無かった。
左手首の皮膚の色も回りより薄い。
その時、目から何かが流れてきた。
血だった。
急に身体中に激痛が走り、吐血。
倒れ込み、下敷きになった左腕から血が吹き出し、何かを感じる前に意識が飛んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

618事件 まとめ

島倉大大主
ホラー
こちらは618関連のまとめページを転載しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

野辺帰り

だんぞう
ホラー
現代ではすっかり珍しいものとなった野辺送りという風習がある。その地域では野辺送りに加えて野辺帰りというものも合わせて一連の儀式とされている。その野辺の送りと帰りの儀式を執り行う『おくりもん』である「僕」は、儀式の最中に周囲を彷徨く影を気にしていた。 儀式が進む中で次第に明らかになる、その地域の闇とも言えるべき状況と過去、そして「僕」の覚悟。その結末が救いであるのかどうかは、読まれた方の判断に委ねます。

S県児童連続欠損事件と歪人形についての記録

幾霜六月母
ホラー
198×年、女子児童の全身がばらばらの肉塊になって亡くなるという傷ましい事故が発生。 その後、連続して児童の身体の一部が欠損するという事件が相次ぐ。 刑事五十嵐は、事件を追ううちに森の奥の祠で、組み立てられた歪な肉人形を目撃する。 「ーーあの子は、人形をばらばらにして遊ぶのが好きでした……」

きもだめし

津嶋朋靖(つしまともやす)
ホラー
町内会の夏祭り肝試しが行われた。 俺はいずみちゃんとペアを組んで参加する事に。 まあ、脅かし役は馬鹿な小学生だからたいして怖くしないと高をくくっていたのだが…… (怖くなくてすみません)

【完結】瓶詰めの悪夢

玉響なつめ
ホラー
とある男が行方不明になった。 その状況があまりに奇妙で、幽霊の仕業ではないかとそう依頼された心霊研究所所長の高杉は張り切って現場に行くことにした。 八割方、依頼主の気のせいだろうと思いながら気楽に調査を進めると、そこで彼は不可思議な現象に見舞われる。 【シャケフレークがない】 一体それはなんなのか。 ※小説家になろう でも連載

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

片田舎の怪異【短編ホラー】

色白ゆうじろう
ホラー
中国地方山口県、架空の町「坐骨市」を舞台にした、短いホラー集です。 ※タイトル変えました 1話完結なので、どこから読んでも大丈夫です。続き物に関しては(前編)とか(1)とかタイトルに書いてます。

処理中です...