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第七十話 デイビッドの興味④

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「わかりました。でも、僕にも言える事と言えない事があります。本当に言えないって事はいくら聞かれても言えないですよ?」

「ええ、ええ、勿論でゲスよ。それは当然の事でゲス。でも、極力魔導具の事は教えて欲しいでゲス。趣味でゲスから。ぐへへ」

 デイビッドさんのカエル潰れたような顔が、より一層潰れ、僕の苦手な笑い声が漏れた。やっぱりこればっかりは慣れないな……

「うぐ。ま、まあ今日の魔導具ですが……」

「やっぱりお湯を出す魔導具ですか?」

 僕ははその問いに首を横に振りながらこう答えた。

「いえ、温泉ですよ。出すのは」

「お、温泉! 本当でゲスか!」

 その言葉を聞いた僕はにやりと笑ってこう返した。

「嘘言ってもしょうがないじゃないでゲスか?」

 デイビッドさんはその言葉に苦笑いをしてしまう。さっきのお返しだとデイビッドさんも気がついたみたいだった。

「坊ちゃんもお人が悪い。これは一本取られましたでゲスな」

「さっきのお返しですよ。ま、正確にはお水を出す魔導具と、お湯にする魔導具と、温泉にする魔導具の三つですけどね」

 と、僕は指を三本立ててデイビッドさんに伝えた。

「まぁ、これでお相子ということでゲスね。しかし、温泉でゲスか。正直、想像の斜め上を行き過ぎでゲスね。たしかにそれなら他に人がいる場所で使いたくないのも分かるでゲス……でも、なんで温泉なんて作ろうと考えたのでゲスか?」

「先日、ラムネスの街に行ったんです。それで温泉が良かったので再現してみようかなと思ったんです」

 まさか行ったのに温泉に入った記憶が無いから、なーんて言う訳にいかない。先程、言えない事は言わないと言質を取ったばかりなので問題ないだろう。

「ほう、なるほど。でも、再現とは……そうだ、坊ちゃん。これ譲って貰えませんでゲスか?」

「え? これを?」

「そうでゲス。金貨三百枚でどうでゲスか? 温泉にする魔導具だけで構わないでゲスから」

 ゴブリンの魔石で普通は金貨一枚である。三百枚で買うと言うのだ。正直、有り得ない金額過ぎて、僕はびっくりしてしまった。なんせ三百倍である。

「いくらなんでも高すぎでは? これ、元々ゴブリンの魔石ですよ? しかもデイビッドさんが使えるかも分かりませんし」

「なんと、そんな魔石でこれ程の物を作るとは……やはり坊ちゃんはとても興味深いでゲス……それに、私としてはそんなこの世に一つしかない魔導具、使える、使えないの問題ではないでゲス。趣味でゲスからね」

「どっちしろ僕にとってはゴブリンの魔石にすぎないので、それはちょっと高いです。それに譲るつもりはないです。自分でも使いたいですし……」

「ムムム……じゃあ作って貰えませんでゲスか?」

 デイビッドさんは引き下がる様子は全くなかった。どうしてもこの魔導具が欲しいようだった。

「作る? どうしてそんなに欲しがるんですか?」

「さっきも言ったでゲスよ。趣味でゲス。それにね、もし使えるのでしたら、商売にも使えると思っているのでゲスよ。それを使えれば宿屋のお客様も喜ぶじゃないですか? 宿の浴場が温泉になるでげすよ? 金貨三百枚払っても試す価値はあると思うのでゲス」

「なるほど……確かにそれはそうですね。試すくらいは別にこれでデイビッドさんにさせてもいいですけど……でも、魔導具の事バレないですか? ラムネスの街の温泉は輸送向きじゃないですよね。輸送してきた、なんて言い訳使えないと思うんですが」

 温泉を輸送すること自体は出来るかもしれない。でもラムネスの温泉は無理だと僕は思った。単純に輸送中に炭酸が抜けてしまうからだ。

「うーん、確かにそうでゲスね。私も以前、やってみようとした事はあるのでゲスが、輸送すると状態は変わっちゃいますし、費用の面でも厳しかったでゲスね。割に合わないでゲスよ」

 どうやらデイビッドさんは既に試したことがあるようだった。次いで僕は浮かんだ疑問をデイビッドさんに尋ねた。

「ちなみに温泉って普通に掘って出るもんなんですか? この辺でも」

「それはわからないでゲス。出るまで掘る訳には行かないでゲスし、ある程度の広さの場所も必要でゲスからね。そんな賭けみたいなことやろうと思ったことすらないでゲス」

「つまり、絶対に出てその広さもある程度あればいいんですか?」

「それは理想ですが、そんな都合の良い事がある訳ないじゃないでゲスか? その魔導具はずっとお湯を温泉に変えることが出来るわけじゃないでゲスよね? お水の出る魔導具も、お湯に変える魔導具も、常に効果を発揮する訳無いでゲス。もしそうならこの辺水浸し……いや、温泉浸しでゲスからね」

「まぁそれはそうなんですけど……」

 実は僕にはこの時、とある考えが浮かんでいた。これが出来れば、今、僕が懸念していることが一つ解決するかもしれない策だ。デイビッドさんに伝えてみる価値はあるかもしれない。そう思った僕は、その考えをデイビッドさんに伝えることにした。
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