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十六話 学園都市

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「ご馳走様!」

「とんでもないです」

 ファーガソンの家で食事を食べたゲイルはファーガソンにお礼を述べた。それに対してファーガソンは笑顔で答えたのだった。
 そしてゲイルは満足そうにお腹を擦りながら、ファーガソンにこう尋ねた。

「ううん。本当に助かったよ。そういえばファーガソン。ここはどんな街なの?」

「ここは学園都市、アースガルズ。色々な国から色々な人が学びに来てるんです。小さい子からお年寄りまで」

 ズズズ……とコップに注がれた飲み物を飲みながらファーガソンはそう答えた。

「へぇ……ちなみに冒険者ギルドとか宿屋とかは何処にあるの?」

「そんなのは無いですよ」

「え!」

 ファーガソンの答えを聞いたゲイルは、身を乗り出して驚いてしまう。ファーガソンは一瞬だけ驚いた様子を見せるが、こう続けて話した。

「そもそも旅人が来るような場所じゃないですからね。さっきも言った通り、学園都市ですから基本的に皆そっち関係の人しかいません。勉強しに来る人とか、その保護者だったり……あとは先生とか、ですかね」

「ど、どうしよう……」

「大丈夫。気にせずここに泊まっていって下さい!」

 ゲイルが狼狽えている様子を見て、ファーガソンは笑顔でそう告げた。もうすっかり心を許している様子だった。

「で、でもお金が……」

「だから気にしないで良いですって。なんなら僕が卒業するまででもいいですよ?」

「あ、ありがとう。でも、それは悪いよ。ずっと、ってのは」

 そうゲイルが答えると、ファーガソンはコップをコトリとテーブルに置いて、笑顔で首を横に振る。

「こっちこそゲイルにぃと会えなかったら、ここを追い出されるとこだったんですから。退学になったら家に戻らないといけないですからね」

「な、なら……近くの街を……」

 と言いかけたゲイルの言葉を遮って、ファーガソンがポンっと手を叩いた。

「そうだ! 良い方法、思いついちゃった!」

「何?」

「近くの街じゃなくて、ゲイル兄も学園で教えれば良いんですよ!」

「えーーーーー!」

 仰け反って驚くゲイルに対して、ファーガソンは名案だ、といった様子で腕を組んで何度も頷いている。

「あれだけ的確な指導、見たことないです!」

「ううう……人に教えるのは……クロウリーみたいに癒しの魔法は使えないし……」

 そもそもゲイルは人に指導したことなどない。そして指導されているのはクロウリーからだ。スパルタということすら生ぬるいその指導しか知らないゲイルが躊躇うのも致し方ないことだった。

「嫌ですか?」

 躊躇うゲイルにファーガソンが悲しげな表情でそう尋ねると、ゲイルはゆっくりと首を縦に振る。
 しかし、ファーガソンは諦める素振りなど見せずにこう食い下がった。

「じゃあせめて、学園長に会ってみてください!」

「ううう……」

「ね、宿代だと思って!」

「それ言われちゃうとなぁ……わ、わかったよ」

「やったぁ!」

 ゲイルの返答を聞いたファーガソンは飛び上がって喜んだ。そしてゲイルを隣の部屋に押し込みながら、こう話す。

「ささ、そうと決まれば早く寝てください! 片付けは僕がやっておきますから!」

 そして扉がパタンと閉じられてしまった。

「ううう……仕方ない……寝るか……」

 諦めたゲイルはベッドに潜りこんで眠りについたのだった。
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