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フラシュ王国への道中
宿に戻りました
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「う……うう……」
浴場から解放されたホイムは酷くげっそりとした疲れ果てた顔でルカに背負われていた。
「満足満足!」
対してルカはとてもつやつやてかてか血色良好な顔色で軽やかな足取りをしながら宿の帰路を歩んでいた。
「もう立てない……」
「もう勃たない?」
「……どっちもだよ」
長く利用するとお店に迷惑だからという理由をつけて切り上げなければ、腰が抜けるどころではなく魂も抜かれてしまうほど搾り取られるところであった。
ルカの首に回した手で指折り回数をカウントしていく。
手で一回、口で一回、中で二回。
「キュアがなければ死ぬところだった……」
寧ろキュアがあるせいで無理して回数をこなしてしまった面もあるのだが、とにかくルカが満足してくれて良かったと思うことにするのであった。
「フラシュに着くまではもうナシだから……」
「ブーッ」
途端に口を尖らせて拗ねるのだが、ここはきちんと説得していく。
「僕だって休まなきゃならないからね……。だから問題が片付くまでのあと数日は一緒に我慢しようね……」
「ホイムも我慢する?」
「うんうん僕も我慢してるんだ。ホントはルカといっぱいしたいんだけど悪い奴をやっつけるまでそれはおあずけ」
「困った……早くやっつけないと」
「そうだね」
ことの責任を魔人に擦り付けることに成功したのでホイムはほっと胸を撫で下ろした。
「……相手は一度戦って勝てなかったあいつと同じ魔人。万全の態勢で臨まないと、ね」
「うん。けどルカ強くなった。ホイムのおかげ」
「それが通じるかどうか……僕にも分からないけれど」
「大丈夫。ホイムいる。アカネいる。エミリアいる。みんないる」
そこまで期待されているのなら、無様な戦いはできない。
「頑張ろうね」
「うん」
少ししんみりとしつつも戦いへ向けての決意も新たにし、なんだかんだエロ行為から真面目な方向へ持っていくことに成功したので善しとするホイムであった。
そうこうしている内にルカは宿屋の部屋に辿り着いていた。アカネ一人をエミリアの目付役にして結構時間が経っていたのでまずは労うつもりでいた。
「戻った!」
「ただいま。いやあ遅くなってすいませ……ん……?」
眠りこける酔っぱらいの世話をしてくれていたアカネに言葉をかけるより先に、室内の様子に二の句を告げなくなる。
「……えっと……」
中の状況を整理してみよう。
ベッドの上には相も変わらずエミリアが大の字で深い眠りについている……が、浴場へ行く前と違うのはその手に千切られた薄い布が握られていることであった。
そしてソファにはホイムに代わって居残りを買って出てくれたアカネが膝を抱いて肩を震えわせていた。その忍装束は胸元をビリリと破かれてある。
「…………なんで?」
二人の様子に首を傾げるルカの背中から降り立ったホイムはまず距離的に近いベッドに寝ているエミリアの元へと近付こうとし、
「ハッ! いけません!」
「え?」
突如我に返ったアカネの忠告に足を止めた瞬間、彼の眼前数センチのところをエミリアの豪腕が風を切っていった。
「……え?」
「ぐう……ぐうう……」
幸せそうに眠り続けているはずなのに、意識を手放しているはずなのにエミリアの手はホイムをとっ捕まえようと動いていた。アカネの声がなくあと一歩踏み込んでいれば、今ホイムはエミリアの傍らにあるアカネの忍装束の切れ端と同じボロ布になっていたことだろう。
「……」
ホイムはそれ以上エミリアに近付かないよう横歩きになってソファの上で丸くなるアカネの元に辿り着いた。
「何があったんです?」
目を離した間に起きた出来事をホイムはアカネに問いただすのであった。
「――つまりイタズラしようとして返り討ちにあった……と?」
「お恥ずかしながらその通りで……」
ソファの上で互いに正座して向かい合いながら、ホイムはアカネの話を聞いていた。話に興味のなかったルカは既に毛布に包まり部屋の隅で二人より先に眠っている。
「流石は筆頭騎士……ですかね。あんな状態でも周囲に気を付けてる……のかな」
なるべく好意的に解釈するホイム。
「ただ単に悪酔いして手を出しているだけかと……」
実際に被害に遭ったアカネはそうは思えなかった。
「すぴぃ……ぐぴぃ……」
眠りこけるエミリアを横目に、ホイムとアカネは小さく肩を落とした。
「とりあえず今日は放っておきましょうか」
「そうしましょう」
明日になって酔いが醒めればいつもの調子に戻るはずだと期待することにしつつ、ホイムは少しそわそわしだした。
「どうしました?」
「いや……どこで寝ようかなと。ベッドは占領されてるしソファはアカネさんがいるし……やっぱりルカと同じように床かなあ」
部屋の中を見回すホイムがルカが寝るのとは別の部屋の隅に視線を落ち着けた。
仕方なくそこで寝るかと考えた時、ちょいちょいとローブの裾をアカネに引っ張られた。
浴場から解放されたホイムは酷くげっそりとした疲れ果てた顔でルカに背負われていた。
「満足満足!」
対してルカはとてもつやつやてかてか血色良好な顔色で軽やかな足取りをしながら宿の帰路を歩んでいた。
「もう立てない……」
「もう勃たない?」
「……どっちもだよ」
長く利用するとお店に迷惑だからという理由をつけて切り上げなければ、腰が抜けるどころではなく魂も抜かれてしまうほど搾り取られるところであった。
ルカの首に回した手で指折り回数をカウントしていく。
手で一回、口で一回、中で二回。
「キュアがなければ死ぬところだった……」
寧ろキュアがあるせいで無理して回数をこなしてしまった面もあるのだが、とにかくルカが満足してくれて良かったと思うことにするのであった。
「フラシュに着くまではもうナシだから……」
「ブーッ」
途端に口を尖らせて拗ねるのだが、ここはきちんと説得していく。
「僕だって休まなきゃならないからね……。だから問題が片付くまでのあと数日は一緒に我慢しようね……」
「ホイムも我慢する?」
「うんうん僕も我慢してるんだ。ホントはルカといっぱいしたいんだけど悪い奴をやっつけるまでそれはおあずけ」
「困った……早くやっつけないと」
「そうだね」
ことの責任を魔人に擦り付けることに成功したのでホイムはほっと胸を撫で下ろした。
「……相手は一度戦って勝てなかったあいつと同じ魔人。万全の態勢で臨まないと、ね」
「うん。けどルカ強くなった。ホイムのおかげ」
「それが通じるかどうか……僕にも分からないけれど」
「大丈夫。ホイムいる。アカネいる。エミリアいる。みんないる」
そこまで期待されているのなら、無様な戦いはできない。
「頑張ろうね」
「うん」
少ししんみりとしつつも戦いへ向けての決意も新たにし、なんだかんだエロ行為から真面目な方向へ持っていくことに成功したので善しとするホイムであった。
そうこうしている内にルカは宿屋の部屋に辿り着いていた。アカネ一人をエミリアの目付役にして結構時間が経っていたのでまずは労うつもりでいた。
「戻った!」
「ただいま。いやあ遅くなってすいませ……ん……?」
眠りこける酔っぱらいの世話をしてくれていたアカネに言葉をかけるより先に、室内の様子に二の句を告げなくなる。
「……えっと……」
中の状況を整理してみよう。
ベッドの上には相も変わらずエミリアが大の字で深い眠りについている……が、浴場へ行く前と違うのはその手に千切られた薄い布が握られていることであった。
そしてソファにはホイムに代わって居残りを買って出てくれたアカネが膝を抱いて肩を震えわせていた。その忍装束は胸元をビリリと破かれてある。
「…………なんで?」
二人の様子に首を傾げるルカの背中から降り立ったホイムはまず距離的に近いベッドに寝ているエミリアの元へと近付こうとし、
「ハッ! いけません!」
「え?」
突如我に返ったアカネの忠告に足を止めた瞬間、彼の眼前数センチのところをエミリアの豪腕が風を切っていった。
「……え?」
「ぐう……ぐうう……」
幸せそうに眠り続けているはずなのに、意識を手放しているはずなのにエミリアの手はホイムをとっ捕まえようと動いていた。アカネの声がなくあと一歩踏み込んでいれば、今ホイムはエミリアの傍らにあるアカネの忍装束の切れ端と同じボロ布になっていたことだろう。
「……」
ホイムはそれ以上エミリアに近付かないよう横歩きになってソファの上で丸くなるアカネの元に辿り着いた。
「何があったんです?」
目を離した間に起きた出来事をホイムはアカネに問いただすのであった。
「――つまりイタズラしようとして返り討ちにあった……と?」
「お恥ずかしながらその通りで……」
ソファの上で互いに正座して向かい合いながら、ホイムはアカネの話を聞いていた。話に興味のなかったルカは既に毛布に包まり部屋の隅で二人より先に眠っている。
「流石は筆頭騎士……ですかね。あんな状態でも周囲に気を付けてる……のかな」
なるべく好意的に解釈するホイム。
「ただ単に悪酔いして手を出しているだけかと……」
実際に被害に遭ったアカネはそうは思えなかった。
「すぴぃ……ぐぴぃ……」
眠りこけるエミリアを横目に、ホイムとアカネは小さく肩を落とした。
「とりあえず今日は放っておきましょうか」
「そうしましょう」
明日になって酔いが醒めればいつもの調子に戻るはずだと期待することにしつつ、ホイムは少しそわそわしだした。
「どうしました?」
「いや……どこで寝ようかなと。ベッドは占領されてるしソファはアカネさんがいるし……やっぱりルカと同じように床かなあ」
部屋の中を見回すホイムがルカが寝るのとは別の部屋の隅に視線を落ち着けた。
仕方なくそこで寝るかと考えた時、ちょいちょいとローブの裾をアカネに引っ張られた。
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