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フラシュ王国への道中
やっぱりそうなりました
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「ルカ」
部屋を離れる直前、アカネがルカの背中に呼びかけた。
「くれぐれも粗相のないように……な!」
「……うん、わかった!」
爛漫なルカの返答に頷くアカネ。しかし悲しいかなルカはアカネが何を言わんとしたかったのかさっぱりと理解していなかったのであった。
ホイムとルカが部屋を去るのを見送ってからしばし立ち尽くしていたアカネだが、ようやく一息つくベッドで眠る巨女を見下ろした
「ふう。全く呑気なものですね」
貴女がこんなザマじゃなければ一緒にお風呂に行けたものを。
腹立たしさに眉を寄せていたアカネは懐からしゅぽっと筆を取り出した。
「落書きしてやりましょう」
気晴らしにイタズラをと思ったのが間違いであった。
そっと伸ばした右手の手首をエミリアにがっちりと取られ、
「え?」
そのままぐいと引き寄せられ、
「ちょっ」
エミリアの思うがままに抱きしめられ逃れられない状況と化していた。
「あ、貴女起きて!?」
「んふぅ……きしとしてぇ……きしぃ……」
「寝てる!」
聖華騎士団筆頭騎士の圧倒的な力と悪酔いが相俟ったせいでアカネの実力を持ってしても容易にエミリアの両腕の拘束は解けない。
「ま、ずい……」
無遠慮にアカネを抱きしめるエミリアの腕が変なふうに極まってしまい首を絞め上げてくる。
落ちそうになる意識の中で、ここに残ったのがホイムサ様でなくてよかったと辛うじて想いを馳せることができたのであった。
アカネを残して来たことに一抹の不安を覚えていたホイムであったが、他人を気遣える状況ではないということを悟ったのはルカと共に大衆浴場の個室に通された時だった。
「ここも個室浴場なんだ。フォトナームってこれが主流なのかな……」
彼がちゃんとした浴場へ来たのはここが二度目である。最初はアカネと出会ったザーインの町。あそこも同じように小さな個室となった銭湯であった。
あそこで経験したハプニングも一緒に思い出されてしまい、ホイムは自然と前屈みになりながらそそくさと小さな湯船に浸かろうとした。
「ホイム! 早く入る!」
が、既にルカがざっぱーんと肩まで浸かっていたので先に体を洗うことにした。
「……入らない?」
「入らないよ」
「なんで?」
「二人だと狭いでしょ」
一人でも足を折らなければならない浴槽。小さなホイムといえどもルカと一緒に入ってしまえば隙間なく密着しなくてはならないだろう。
窮屈な思いをさせてしまってはリフレッシュにならないというホイムの計らいであったが、まったくもってルカには受け入れられなかった。
「むう、いや! 一緒!」
体を洗う前だったホイムの腕を掴んだルカが獲物を捕らえた捕食者のように同じ湯船へと引きずり込む。
「ちょ、ちょっと待って!」
突然の捕食に慌てふためくホイムは口答えする間もなく、お湯の中でしっかりとルカの手足に羽交い締めにされていた。
「んふふ!」
後頭部におっぱい枕の柔らかさを感じるホイムは笑みを零すルカの顔を見上げた。
「……」
こっちの方が楽しいというのなら、それでいいかもしれない。
しかしやはりと言うべきか、二人で密着していて何も起きないはずはなくく。
ルカが後ろから伸ばしてきた右手がホイムのホイムをきゅっと包んでにぎにぎし始めた。
「ルカさん……」
「どうした?」
「手を止めてもらっていいでしょうか」
「いや」
端的な拒否。ルカの手は止まることを知らない。
「ホイムいや?」
一応気遣ってくれているのかホイムの気持ちを確認してきてくれるのだが。
「今日はそういう気分じゃないかも……」
「そっか」
こしこし。こしこし。
「止めないんだね!?」
「うん。ルカはそういう気分」
「僕の気分はどうなるの……」
「ホイムもそういう気分になる!」
そりゃあ弄くり回されていたら勝手にそういう気分になってくるだろうけど。
「旅の最中はこういうのなく進みそうだったのに……」
エミリアが道中での破廉恥行為を禁止にしてくれたおかげでホイムの色々な負担も減り最近は非常に規則正しく真っ当な生活が続き調子も良かったのである。
身も心も快楽漬になる日々が案外早く帰ってきたなと思うと少し悲しくなるのだが、すぐに気持ちよくなってくるのでもうどうにでもなれという気分になるのも早かった。
「ホイム」
「なに?」
「溜め込むと腐る」
「たまには溜め込むのもいいと思うんだけど……」
我慢もスパイスになるというのに、我慢させてもらえない。毎日性的な行為をできるが故の贅沢な悩みであった。
転移する前は無縁だった日々に懊悩としつつ、後ろから覗き込んでくるルカのふっくらとした唇に吸い付きながら脱力していくホイムであった。
部屋を離れる直前、アカネがルカの背中に呼びかけた。
「くれぐれも粗相のないように……な!」
「……うん、わかった!」
爛漫なルカの返答に頷くアカネ。しかし悲しいかなルカはアカネが何を言わんとしたかったのかさっぱりと理解していなかったのであった。
ホイムとルカが部屋を去るのを見送ってからしばし立ち尽くしていたアカネだが、ようやく一息つくベッドで眠る巨女を見下ろした
「ふう。全く呑気なものですね」
貴女がこんなザマじゃなければ一緒にお風呂に行けたものを。
腹立たしさに眉を寄せていたアカネは懐からしゅぽっと筆を取り出した。
「落書きしてやりましょう」
気晴らしにイタズラをと思ったのが間違いであった。
そっと伸ばした右手の手首をエミリアにがっちりと取られ、
「え?」
そのままぐいと引き寄せられ、
「ちょっ」
エミリアの思うがままに抱きしめられ逃れられない状況と化していた。
「あ、貴女起きて!?」
「んふぅ……きしとしてぇ……きしぃ……」
「寝てる!」
聖華騎士団筆頭騎士の圧倒的な力と悪酔いが相俟ったせいでアカネの実力を持ってしても容易にエミリアの両腕の拘束は解けない。
「ま、ずい……」
無遠慮にアカネを抱きしめるエミリアの腕が変なふうに極まってしまい首を絞め上げてくる。
落ちそうになる意識の中で、ここに残ったのがホイムサ様でなくてよかったと辛うじて想いを馳せることができたのであった。
アカネを残して来たことに一抹の不安を覚えていたホイムであったが、他人を気遣える状況ではないということを悟ったのはルカと共に大衆浴場の個室に通された時だった。
「ここも個室浴場なんだ。フォトナームってこれが主流なのかな……」
彼がちゃんとした浴場へ来たのはここが二度目である。最初はアカネと出会ったザーインの町。あそこも同じように小さな個室となった銭湯であった。
あそこで経験したハプニングも一緒に思い出されてしまい、ホイムは自然と前屈みになりながらそそくさと小さな湯船に浸かろうとした。
「ホイム! 早く入る!」
が、既にルカがざっぱーんと肩まで浸かっていたので先に体を洗うことにした。
「……入らない?」
「入らないよ」
「なんで?」
「二人だと狭いでしょ」
一人でも足を折らなければならない浴槽。小さなホイムといえどもルカと一緒に入ってしまえば隙間なく密着しなくてはならないだろう。
窮屈な思いをさせてしまってはリフレッシュにならないというホイムの計らいであったが、まったくもってルカには受け入れられなかった。
「むう、いや! 一緒!」
体を洗う前だったホイムの腕を掴んだルカが獲物を捕らえた捕食者のように同じ湯船へと引きずり込む。
「ちょ、ちょっと待って!」
突然の捕食に慌てふためくホイムは口答えする間もなく、お湯の中でしっかりとルカの手足に羽交い締めにされていた。
「んふふ!」
後頭部におっぱい枕の柔らかさを感じるホイムは笑みを零すルカの顔を見上げた。
「……」
こっちの方が楽しいというのなら、それでいいかもしれない。
しかしやはりと言うべきか、二人で密着していて何も起きないはずはなくく。
ルカが後ろから伸ばしてきた右手がホイムのホイムをきゅっと包んでにぎにぎし始めた。
「ルカさん……」
「どうした?」
「手を止めてもらっていいでしょうか」
「いや」
端的な拒否。ルカの手は止まることを知らない。
「ホイムいや?」
一応気遣ってくれているのかホイムの気持ちを確認してきてくれるのだが。
「今日はそういう気分じゃないかも……」
「そっか」
こしこし。こしこし。
「止めないんだね!?」
「うん。ルカはそういう気分」
「僕の気分はどうなるの……」
「ホイムもそういう気分になる!」
そりゃあ弄くり回されていたら勝手にそういう気分になってくるだろうけど。
「旅の最中はこういうのなく進みそうだったのに……」
エミリアが道中での破廉恥行為を禁止にしてくれたおかげでホイムの色々な負担も減り最近は非常に規則正しく真っ当な生活が続き調子も良かったのである。
身も心も快楽漬になる日々が案外早く帰ってきたなと思うと少し悲しくなるのだが、すぐに気持ちよくなってくるのでもうどうにでもなれという気分になるのも早かった。
「ホイム」
「なに?」
「溜め込むと腐る」
「たまには溜め込むのもいいと思うんだけど……」
我慢もスパイスになるというのに、我慢させてもらえない。毎日性的な行為をできるが故の贅沢な悩みであった。
転移する前は無縁だった日々に懊悩としつつ、後ろから覗き込んでくるルカのふっくらとした唇に吸い付きながら脱力していくホイムであった。
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