異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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パルメティの街

戻ってきました

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「他に話したいことないし?」
「言いたいことは無茶苦茶ありますけど今日はもういいです……」

 これ以上いろいろなことを追求するには身も心もへとへとになってしまったので今日のところは諦めることにした。

「あたしと話したくなったらいつでも来るといいし」
「別に話そうと意識してなくても招かれるんですけどね。行き来がガバガバすぎますよ」
「締りはいいし」
「やめてください女神様のくせにはしたない言い方」
「さて。いい息抜きになったしまた下賤な者どものくだらん祈りでも聞きに行くし」
「酷い言い草ですね!」
「冗談冗談。ホイムっちってばお硬いし。カチンコ」
「だからはしたないって!」
「やんもう変なところで遮るんだから」

 フォトは指を鳴らして衣装を着替えると、上機嫌な様子で家の外へと出向いていった。ホイムも後につき、帰ることにした。

「オッ。次の願いがビビッと来たし」

 頭に人差し指を当てたフォトが民の祈りを感じ取った。

「電波でも受信してるんですか」
「そうそう。髪の毛三本立ってるし」

 ピョコン。

「本当に立った!?」
「ホイムっちが立てろって言うから」
「言ってないからね!」
「じゃあたし行くし」
「ちょっと待ったぁ!」

 さっさと飛んでいきそうなフォトを必死に捕まえたところ、苦い顔をされた。

「なにぃ?」
「さよならする前に僕の帰り道を開いてくださいよ」
「めんどくさ……」
「女神とは思えない発言の数々は僕の胸の内に閉まっておきます」

 するとフォトはホイムの前に立つと、彼の小さな体を抱えあげて乱暴な口づけを施した。

「んむぐぅ!」

 強引に口をこじ開けられて蹂躙されるホイムであったが、無理やり逃れようとはしなかった。そこを通して魔力が注がれているような感覚を受け取っていたからだ。
 やがてじゅびじゅばと音を立てるくらい激しく責めていたフォトが口を離すと、

「ごちそうさまでした」

 妖艶な笑みを浮かべる口元を手の甲で拭うのだった。

「うぐぅ……」

 解放されたホイムは口づけで気持ちよく……という風には見えなかった。力が入らずフォトの腕の中でぐったりとしている。女神の魔力を急激に与えられたことで魔力に酔ったと言ったところだ。

「今ホイムっちに帰れる呪文授けたし。これでさっさと帰ればいいし」
「うう……もっと優しくお願いします……」
「それは下界に戻ってからのお楽しみにとっておくといいし」
「……?」
「さてさてそいじゃまたホイムっちのせいで胸を痛めてる健気な少女たちのお悩み相談に行ってくるし」

 ポイッと放り捨てられたホイムは女神の発言が気になって追いすがろうとした。が、未だ腕を伸ばすのが精一杯という状態である。

「待てあんた……人々の祈りに応えてるんじゃなかったんかい……」
「んむふふ。それもしてるけどホイムっちだけご贔屓にしてあげてるんだし。感謝感激しとくといいし」
「余計なことしてるんじゃないかし……」

 絞り出した声で心からそう訴えたのだが、フォトは愉快そうな高笑いを上げてその場から飛び去っていった。
 女神の良からぬ企みがある気がする……そう思うホイムであった。

「……キュア【現世帰還】」

 とりあえずフォトから授かった呪文を唱え、誰もいなくなった空間から元の世界へと戻ることにした。




「…………ん?」

 目が覚めると視界は暗闇に覆われていた。
 まだ夜……加えてテントをぽつぽつと叩く雨音。どうやら天候はよろしくないままのようだ。

「……」

 しかしながら息苦しい。暑苦しい。身動きがとりにくい。
 もぞもぞと身じろいで体勢を変えたホイムは、ようやく自分の居場所を把握した。
 エミリアが寝たのにつられてうとうとと眠ってしまったホイムは、いつの間にか彼女の腕に捕らわれて大きなお胸に顔を埋めていたのだった。
 視界が真っ暗だったのも、胸の谷間にがっしり挟まれて周囲の光景が見えなかったせいである。
 彼女の寝相が悪かったのか、それとも自分の寝相のせいか。
 ひとまずこのまま密着しているのも悪いと思ったホイムは小さな体を引き離そうとした。

「……」

 かわいそうなことに非力な子どもの体では立派な体格の騎士の抱擁から力づくで逃れることはできなかった。

(しばらく黙って様子を窺うか……)

 声を上げればエミリアが起きて状況を打破できるかもしれないが、今日一日で疲れているであろう彼女を無理に起こす真似はしたくもないし、実のところそれほど嫌な状況でもないと考えているのは男の子としては当然のことであった。

「……」

 エミリアは眠っているしこの姿勢を変えることもできないとなれば、渋々申し訳なく本当はそうするのも憚られるがホイムは素直にエミリアの胸にまた埋もれていった。

「でけぇ……」

 思わずホイムが唸るのも仕方がない。彼の顔を包むのは顔より大きな豊かな胸。
 これまでの冒険で出会ってきたどのおっぱいよりも立派に実っている。自然と手が伸びてしまうのも致し方ないことであった。
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