65 / 131
パルメティの街
覗かれました
しおりを挟む
訝しく思いながらも進んでいたエミリアが茂みの陰から顔を覗かせたところ、少し離れた巨木の根元でようやく二人の姿を発見した。
背中を大木にあずけて座るホイムと、その少年に跨るルカが仲睦まじく情を交わしていた。
「んなッ!?」
突然男女の交渉事を目撃したエミリアは慌てて茂みの奥に体を引っ込めた。
「な、な、な……」
驚きすぎて自身の心臓の音がバクバクと響く音しか聞こえてこない。
もしかしたら見間違いかもしれないと、茂みからそっと頭を出して見る。
「ホイム! すごい! 気持ち、良い!」
「こ、声がおっきいよ……!」
ルカの首に腕を回して引き寄せたホイムの唇が、嬌声を上げるルカの口を乱暴に塞ぐ様をバッチリと目撃した。
「ひゃぁッ……」
余りに生々しくて激しい光景に、エミリアは顔から火が出そうになりながら茂みの奥に引っ込んだ。
「あ、あの二人……そういう関係だったのか」
ドキドキと高鳴る胸に手を当てながら、二人が揃ってキャンプから離れたのはそのためだったのかと理解した。
「ま、待て……ではアカネも」
話し合いの時の様子からして、彼女がホイムを慕っていることはエミリアにも分かっていた。
いや、もしかしたら慕っているのではなくて自分のモノを他人である自分と関わらせるのを拒否していた……?
「そんなのはまるで性奴隷ではないか!」
幼い少年になんたる仕打ち!
正義感に溢れるエミリアはそんなことは許せない。今一度ホイムがルカに襲われている光景を、地面にうつ伏せになって茂みの下からじっくりと観察する。
「ルカ……またいくよ!」
「うん! うんきて!」
そのまま二人の体がピクピク震えて動きが止まる。しばらくしてから、二人とても愛おしそうに口づけを交わしながらまたルカが体を上下に動かしはじめた。
「…………」
じっくりと見入ってみて、二人はとても仲睦まじく、奴隷云々は考えすぎだという結論にエミリアは達した。
その後も木に手をつかせてお尻を突き上げさせたルカを後ろから責めたてるホイムの雄姿に釘付けになるエミリアは、中々その場を離れることができずにいた。
(た、他人の性行為を覗き見続けるなどとは……へ、変態ではないか!)
自分の痴態は理解しているが、どうしても止めることができなかった。
これには、彼女が聖華騎士団として過ごして来た日々が大いに関係していた。
団長含め三十名という少数精鋭の聖華騎士団。彼女たちが異性と触れ合うのは式典や戦場などが主である。
城の中でも男性中心の騎士団や近衛隊とは別の寮を与えられ、極力接触する機会は減らされている。
女性のみの騎士団という神聖性や高潔性を維持するための取り決めであり、騎士団員もそれを自負し、誇りを持っていた。
そんな環境で暮らしていた聖華騎士団の女性にとって、性交渉など未知の領域。噂や伝聞で行為を知っている程度のものであった。
また聖華騎士団員は務めを終え、団を抜けるまでは未通の乙女でなくてはならないのも男性との秘め事に初心なことに拍車をかけていた。
エミリアとて例外ではない。いくら自身が女性らしくないと自覚していようが、未知への好奇心と生理的反応を示してしまっていた。
二人の動きがまた激しくなるのを食い入るように観察するエミリアであったが、理性的な部分がいい加減に出歯亀行為を止めなければと訴えていた。
名残惜しい気持ちでいっぱいであったが、激しく喘ぐ二人を残して彼女は静かに退散した。
テントに戻る道中、エミリアは下腹部に抱いた悶々とした感覚に苛まれていた。
(騎士失格だ……私のド変態め……!)
清廉潔白が求められる聖華騎士団であった自分があんなことをしでかすなんてと反省しきりである反面、未だ落ち着かぬ体の火照り。
(……私ってこんな奴だったのか)
テントに潜り込んだエミリアは体を小さく丸めて横になった。
「はあ……」
まだ気分は昂ぶっていた。衣類に包まれた肌はひどく敏感になっているような気さえした。
堅物で通っていたエミリアであるが、自分が今性的な興奮を覚えているのは理解していたし、聖華騎士団の中であっても耳年増な同性がこういう時にどうすればいいかを話しているのを聞いたことくらいはあった。
まさか自分がそのような行為に手を染めようとは思ってもいなかった彼女だったが、本能的に手が伸びるのを我慢することができなかった。
衣服の中に指を滑り込ませようとしたその時、突然テントにホイムとルカが入ってきた。
「うわっ!?」
驚いて跳ね起きたエミリアを見た二人は目を丸くしていた。
「あ……起こしちゃいました?」
眠りを妨げたと思ったホイムが済まなそうに言うのだが、さっきまで交尾をしていた二人の顔を直視できないエミリアは目を泳がせておどおどしてしまう。
「い、いや! 二人が心配で、戻らないから、少し寝れなくて」
「そうでしたか。心配させてしまったみたいですね」
それから、エミリアの傍にあった毛布を二つ受け取ったホイムは、一つをルカに手渡した。
「ルカは今日も外で寝る?」
「うん。中は落ち着かない」
ルカだけテントから出ていき、中にはホイムとエミリアだけとなった。
「す、すまない。私がいて狭いから……」
「いえ。彼女は大体外で寝てますから。たまに一緒に中で寝ますけど……だから気にしないでください」
いつもの事だと教えるホイムはすぐに横になり毛布に包まった。
「それじゃ……おやすみなさ……」
大変疲れた様子で、あっという間に眠りに落ちたようだった。
「……」
こんなに幼い少年が、ついさっきまで情事に耽っていたのが信じられない。
その目で見て、脳裏に焼き付く光景が忘れられずにいるエミリアは、頭の中でそのシーンを延々繰り返してしまい、悶々とした気持ちを発散できないまま夜を過ごしたのだった。
背中を大木にあずけて座るホイムと、その少年に跨るルカが仲睦まじく情を交わしていた。
「んなッ!?」
突然男女の交渉事を目撃したエミリアは慌てて茂みの奥に体を引っ込めた。
「な、な、な……」
驚きすぎて自身の心臓の音がバクバクと響く音しか聞こえてこない。
もしかしたら見間違いかもしれないと、茂みからそっと頭を出して見る。
「ホイム! すごい! 気持ち、良い!」
「こ、声がおっきいよ……!」
ルカの首に腕を回して引き寄せたホイムの唇が、嬌声を上げるルカの口を乱暴に塞ぐ様をバッチリと目撃した。
「ひゃぁッ……」
余りに生々しくて激しい光景に、エミリアは顔から火が出そうになりながら茂みの奥に引っ込んだ。
「あ、あの二人……そういう関係だったのか」
ドキドキと高鳴る胸に手を当てながら、二人が揃ってキャンプから離れたのはそのためだったのかと理解した。
「ま、待て……ではアカネも」
話し合いの時の様子からして、彼女がホイムを慕っていることはエミリアにも分かっていた。
いや、もしかしたら慕っているのではなくて自分のモノを他人である自分と関わらせるのを拒否していた……?
「そんなのはまるで性奴隷ではないか!」
幼い少年になんたる仕打ち!
正義感に溢れるエミリアはそんなことは許せない。今一度ホイムがルカに襲われている光景を、地面にうつ伏せになって茂みの下からじっくりと観察する。
「ルカ……またいくよ!」
「うん! うんきて!」
そのまま二人の体がピクピク震えて動きが止まる。しばらくしてから、二人とても愛おしそうに口づけを交わしながらまたルカが体を上下に動かしはじめた。
「…………」
じっくりと見入ってみて、二人はとても仲睦まじく、奴隷云々は考えすぎだという結論にエミリアは達した。
その後も木に手をつかせてお尻を突き上げさせたルカを後ろから責めたてるホイムの雄姿に釘付けになるエミリアは、中々その場を離れることができずにいた。
(た、他人の性行為を覗き見続けるなどとは……へ、変態ではないか!)
自分の痴態は理解しているが、どうしても止めることができなかった。
これには、彼女が聖華騎士団として過ごして来た日々が大いに関係していた。
団長含め三十名という少数精鋭の聖華騎士団。彼女たちが異性と触れ合うのは式典や戦場などが主である。
城の中でも男性中心の騎士団や近衛隊とは別の寮を与えられ、極力接触する機会は減らされている。
女性のみの騎士団という神聖性や高潔性を維持するための取り決めであり、騎士団員もそれを自負し、誇りを持っていた。
そんな環境で暮らしていた聖華騎士団の女性にとって、性交渉など未知の領域。噂や伝聞で行為を知っている程度のものであった。
また聖華騎士団員は務めを終え、団を抜けるまでは未通の乙女でなくてはならないのも男性との秘め事に初心なことに拍車をかけていた。
エミリアとて例外ではない。いくら自身が女性らしくないと自覚していようが、未知への好奇心と生理的反応を示してしまっていた。
二人の動きがまた激しくなるのを食い入るように観察するエミリアであったが、理性的な部分がいい加減に出歯亀行為を止めなければと訴えていた。
名残惜しい気持ちでいっぱいであったが、激しく喘ぐ二人を残して彼女は静かに退散した。
テントに戻る道中、エミリアは下腹部に抱いた悶々とした感覚に苛まれていた。
(騎士失格だ……私のド変態め……!)
清廉潔白が求められる聖華騎士団であった自分があんなことをしでかすなんてと反省しきりである反面、未だ落ち着かぬ体の火照り。
(……私ってこんな奴だったのか)
テントに潜り込んだエミリアは体を小さく丸めて横になった。
「はあ……」
まだ気分は昂ぶっていた。衣類に包まれた肌はひどく敏感になっているような気さえした。
堅物で通っていたエミリアであるが、自分が今性的な興奮を覚えているのは理解していたし、聖華騎士団の中であっても耳年増な同性がこういう時にどうすればいいかを話しているのを聞いたことくらいはあった。
まさか自分がそのような行為に手を染めようとは思ってもいなかった彼女だったが、本能的に手が伸びるのを我慢することができなかった。
衣服の中に指を滑り込ませようとしたその時、突然テントにホイムとルカが入ってきた。
「うわっ!?」
驚いて跳ね起きたエミリアを見た二人は目を丸くしていた。
「あ……起こしちゃいました?」
眠りを妨げたと思ったホイムが済まなそうに言うのだが、さっきまで交尾をしていた二人の顔を直視できないエミリアは目を泳がせておどおどしてしまう。
「い、いや! 二人が心配で、戻らないから、少し寝れなくて」
「そうでしたか。心配させてしまったみたいですね」
それから、エミリアの傍にあった毛布を二つ受け取ったホイムは、一つをルカに手渡した。
「ルカは今日も外で寝る?」
「うん。中は落ち着かない」
ルカだけテントから出ていき、中にはホイムとエミリアだけとなった。
「す、すまない。私がいて狭いから……」
「いえ。彼女は大体外で寝てますから。たまに一緒に中で寝ますけど……だから気にしないでください」
いつもの事だと教えるホイムはすぐに横になり毛布に包まった。
「それじゃ……おやすみなさ……」
大変疲れた様子で、あっという間に眠りに落ちたようだった。
「……」
こんなに幼い少年が、ついさっきまで情事に耽っていたのが信じられない。
その目で見て、脳裏に焼き付く光景が忘れられずにいるエミリアは、頭の中でそのシーンを延々繰り返してしまい、悶々とした気持ちを発散できないまま夜を過ごしたのだった。
1
お気に入りに追加
2,316
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
やさしい魔法と君のための物語。
雨色銀水
ファンタジー
これは森の魔法使いと子供の出会いから始まる、出会いと別れと再会の長い物語――。
※第一部「君と過ごしたなもなき季節に」編あらすじ※
かつて罪を犯し、森に幽閉されていた魔法使いはある日、ひとりの子供を拾う。
ぼろぼろで小さな子供は、名前さえも持たず、ずっと長い間孤独に生きてきた。
孤独な魔法使いと幼い子供。二人は不器用ながらも少しずつ心の距離を縮めながら、絆を深めていく。
失ったものを埋めあうように、二人はいつしか家族のようなものになっていき――。
「ただ、抱きしめる。それだけのことができなかったんだ」
雪が溶けて、春が来たら。
また、出会えると信じている。
※第二部「あなたに贈るシフソフィラ」編あらすじ※
王国に仕える『魔法使い』は、ある日、宰相から一つの依頼を受ける。
魔法石の盗難事件――その事件の解決に向け、調査を始める魔法使いと騎士と弟子たち。
調査を続けていた魔法使いは、一つの結末にたどり着くのだが――。
「あなたが大好きですよ、誰よりもね」
結末の先に訪れる破滅と失われた絆。魔法使いはすべてを失い、物語はゼロに戻る。
※第三部「魔法使いの掟とソフィラの願い」編あらすじ※
魔法使いであった少年は罪を犯し、大切な人たちから離れて一つの村へとたどり着いていた。
そこで根を下ろし、時を過ごした少年は青年となり、ひとりの子供と出会う。
獣の耳としっぽを持つ、人ならざる姿の少女――幼い彼女を救うため、青年はかつての師と罪に向き合い、立ち向かっていく。
青年は自分の罪を乗り越え、先の未来をつかみ取れるのか――?
「生きる限り、忘れることなんかできない」
最後に訪れた再会は、奇跡のように涙を降らせる。
第四部「さよならを告げる風の彼方に」編
ヴィルヘルムと魔法使い、そしてかつての英雄『ギルベルト』に捧ぐ物語。
※他サイトにも同時投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる