49 / 131
パルメティの街
やらかしました
しおりを挟む
「あの……」
「ナニ?」
「あなた本当に女神様……ですよね?」
「ハァ? 見て分からんし?」
分かりません。
「薄情ぅ、信じられんしぃ」
「あの時は姿見せてくれなかったですし……」
「それは、あれだし……」
その口答えに対して初めて自称女神は言い淀んだ。かと思えばすぐに声を荒げてくる。
「姿いったらあんたもナニソレ! あたし喚んだ時はもっとむっさいオジさんだったし! なんでソンナ……ちょっとよく顔見せるし」
女神はホイムに近付くとすぐ隣に立ち、体を向き直らせて正面から彼の顔をジッと見つめた。
「……」
「……あの」
「……」
黙って見つめられることに落ち着かない気分になる。
態度や口調は生意気なギャルっぽいが、女神と言うだけあって顔立ちは美しく、何よりエクササイズ直後の温もりが空気を通じて伝わってくるようだった。
「……ヤバ。めっちゃ好みかも」
「はい?」
「うん。あんたおっさんよりちびっ子の方が全然素敵だし」
ほっぺを両手でぐにぐに弄ばれ、ホイムは顔をしかめた。
しかし案外好意的に受け止められているように思え、今はこの容姿に感謝しつつ、上手く女神と話せるように慎重に会話の言葉を選んでいく。
「気に入ってもらえたのなら何よりですけど……。僕がこうなったのは、フォトナームで苦労したのが原因でして」
「苦労ってなぁに? お姉ちゃんに話ちてごらん」
両手でぐにぐにから熱い抱擁に切り替わる。ジャージ越しでも分かる豊満な胸とぷにぷにのお腹に包まれるし汗の匂いも香しい。
魅了の効果でもあるんじゃないかと思えてしまうほどの魅力は流石女神というところか。
ホイムは流されそうになる意識をしっかりと保ち、お姉ちゃんにこれまでの経緯や出来事を説明していく。
「んん。大変だったしぃ……お姉ちゃんが慰めたげるし」
頭を撫でられ可愛がられ、思わずそのまま堕ちたくもなるが、
「……い、いやいや違う! 僕はそんなことしてもらいに来たわけじゃないんでした!」
体を引き剥がして立ち上がるホイムを不満げで名残惜しそうに見つめる女神だったが、矢継ぎ早に語る彼の言葉には耳を傾けていた。
「今言ったように僕は現在大変困ってるわけでして。フォトナームで生きていけるくらいの強さはいただいてましたけど、最近あった色々な出来事を鑑みて、これじゃあいけないと思いました」
「……要望通りの力はあげたし。それじゃ足りなかったし?」
「そうじゃありません。確かに僕はあの時色んな力をあなたから授かりました。でもそれはよくある思いつきの能力を並べ立てただけで、本当に必要な力ではなかったのです」
「ナニソレ。折角あげたチートいらないってコト?」
「そこまでは言ってませんけど、不必要なものが多かったと思うんです。それなら、今必要なものをブラッシュアップしていく方が僕にはプラスだと感じたんです」
ホイムが女神に会いたかったのはそれを伝えるためだった。
異世界スーパーもアイテムボックスも便利な能力ではあるが、彼女たちと共に強くなるにはもっと違う力が必要……回復術創造だけでは物足りないと感じて進言に来たのであった。
「異世界スーパーも」
「はいはい」
「アイテムボックスも」
「あぁはいはい」
「察知スキルとかアカネさんやルカがいるし」
「はいはいはいはい」
「あとステータス鑑定するスキル」
「いらないチートがどんどんでるし」
「……は役立つから必要か」
「あ…………」
「とにかく、そんなチートスキルばかりでなくて、創造スキルを強くしたり、あと成長がしやすくなる……あってなんですか?」
「なんでもないし」
「なんでもないってことなくないですか?」
急に女神フォトの態度がよそよそしくなったことに目ざとく気付いたホイムは少し食いついて質問した。
目が泳ぎ始めたことでいよいよ何かしでかしたなと思ったホイムだったが、このタイミングでこの反応は問い詰めるのが怖くもあったようで、じっと睨み続けて女神の反応を待った。
「いやつうかあんたの言い方が悪いし。能力いらねって言ってると思うし」
「……つまり?」
「……没収しちゃった」
てへぺろ☆。
ウィンクで本物の星を出す光景に突っ込むこともなく、ホイムは今しがた言われた事を理解しようとしていた。
おそるおそる伸ばす手はかすかに震えている。そのまま、いつものイメージで異世界スーパーを起動しようとするが、反応なし。何も起きない。
アイテムボックスも呼び出そうとするが同じこと。
「どうゆうことでしゅか!」
焦りで口の上手く回らぬホイムが、フォトの肩を両手で掴んでかくかく揺さぶる。その際にステータスを確認しようとしてみても、それができないのは相手が女神という高等な存在だから……などではなく、なくなってしまったからである。
「ナニ?」
「あなた本当に女神様……ですよね?」
「ハァ? 見て分からんし?」
分かりません。
「薄情ぅ、信じられんしぃ」
「あの時は姿見せてくれなかったですし……」
「それは、あれだし……」
その口答えに対して初めて自称女神は言い淀んだ。かと思えばすぐに声を荒げてくる。
「姿いったらあんたもナニソレ! あたし喚んだ時はもっとむっさいオジさんだったし! なんでソンナ……ちょっとよく顔見せるし」
女神はホイムに近付くとすぐ隣に立ち、体を向き直らせて正面から彼の顔をジッと見つめた。
「……」
「……あの」
「……」
黙って見つめられることに落ち着かない気分になる。
態度や口調は生意気なギャルっぽいが、女神と言うだけあって顔立ちは美しく、何よりエクササイズ直後の温もりが空気を通じて伝わってくるようだった。
「……ヤバ。めっちゃ好みかも」
「はい?」
「うん。あんたおっさんよりちびっ子の方が全然素敵だし」
ほっぺを両手でぐにぐに弄ばれ、ホイムは顔をしかめた。
しかし案外好意的に受け止められているように思え、今はこの容姿に感謝しつつ、上手く女神と話せるように慎重に会話の言葉を選んでいく。
「気に入ってもらえたのなら何よりですけど……。僕がこうなったのは、フォトナームで苦労したのが原因でして」
「苦労ってなぁに? お姉ちゃんに話ちてごらん」
両手でぐにぐにから熱い抱擁に切り替わる。ジャージ越しでも分かる豊満な胸とぷにぷにのお腹に包まれるし汗の匂いも香しい。
魅了の効果でもあるんじゃないかと思えてしまうほどの魅力は流石女神というところか。
ホイムは流されそうになる意識をしっかりと保ち、お姉ちゃんにこれまでの経緯や出来事を説明していく。
「んん。大変だったしぃ……お姉ちゃんが慰めたげるし」
頭を撫でられ可愛がられ、思わずそのまま堕ちたくもなるが、
「……い、いやいや違う! 僕はそんなことしてもらいに来たわけじゃないんでした!」
体を引き剥がして立ち上がるホイムを不満げで名残惜しそうに見つめる女神だったが、矢継ぎ早に語る彼の言葉には耳を傾けていた。
「今言ったように僕は現在大変困ってるわけでして。フォトナームで生きていけるくらいの強さはいただいてましたけど、最近あった色々な出来事を鑑みて、これじゃあいけないと思いました」
「……要望通りの力はあげたし。それじゃ足りなかったし?」
「そうじゃありません。確かに僕はあの時色んな力をあなたから授かりました。でもそれはよくある思いつきの能力を並べ立てただけで、本当に必要な力ではなかったのです」
「ナニソレ。折角あげたチートいらないってコト?」
「そこまでは言ってませんけど、不必要なものが多かったと思うんです。それなら、今必要なものをブラッシュアップしていく方が僕にはプラスだと感じたんです」
ホイムが女神に会いたかったのはそれを伝えるためだった。
異世界スーパーもアイテムボックスも便利な能力ではあるが、彼女たちと共に強くなるにはもっと違う力が必要……回復術創造だけでは物足りないと感じて進言に来たのであった。
「異世界スーパーも」
「はいはい」
「アイテムボックスも」
「あぁはいはい」
「察知スキルとかアカネさんやルカがいるし」
「はいはいはいはい」
「あとステータス鑑定するスキル」
「いらないチートがどんどんでるし」
「……は役立つから必要か」
「あ…………」
「とにかく、そんなチートスキルばかりでなくて、創造スキルを強くしたり、あと成長がしやすくなる……あってなんですか?」
「なんでもないし」
「なんでもないってことなくないですか?」
急に女神フォトの態度がよそよそしくなったことに目ざとく気付いたホイムは少し食いついて質問した。
目が泳ぎ始めたことでいよいよ何かしでかしたなと思ったホイムだったが、このタイミングでこの反応は問い詰めるのが怖くもあったようで、じっと睨み続けて女神の反応を待った。
「いやつうかあんたの言い方が悪いし。能力いらねって言ってると思うし」
「……つまり?」
「……没収しちゃった」
てへぺろ☆。
ウィンクで本物の星を出す光景に突っ込むこともなく、ホイムは今しがた言われた事を理解しようとしていた。
おそるおそる伸ばす手はかすかに震えている。そのまま、いつものイメージで異世界スーパーを起動しようとするが、反応なし。何も起きない。
アイテムボックスも呼び出そうとするが同じこと。
「どうゆうことでしゅか!」
焦りで口の上手く回らぬホイムが、フォトの肩を両手で掴んでかくかく揺さぶる。その際にステータスを確認しようとしてみても、それができないのは相手が女神という高等な存在だから……などではなく、なくなってしまったからである。
1
お気に入りに追加
2,316
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる