上 下
333 / 336
第9章 飛香編

第333話「拠点襲撃 in 大阪 part3」

しおりを挟む
防衛団仮拠点



1級団員(作戦部)1: 今、和地さんと康二さんが保守用通路から、ビルの地下駐車場に繋がっていると思われる通路に突入したとの報告が来ました!


敦貴: よし。各班の現状を!


1級(作)2: はい。屋上班は、屋上から突入後、各階の制圧班と分かれつつ、そのまま下に降りて行き、敵の抵抗も激しく、現在16階!


湊士: 1階から突入した地上班は、上に繋がる階段に到着後、すぐに上り、現在4階。そして、1階の制圧が完了!


敦貴: 分かった。屋上班は増援ができない分、各階の制圧を確実に行っていくよう、改めて指示を。地上班には、先頭部隊は10階に辿り着くことを最優先にし、制圧は後回しで良いと、伝えてくれ。


1級(作)2: はい!


湊士: 了解!



そう返事をした湊士は、すぐに地上班の先頭を走る、由夢に回線を繋げる。



湊士: こちら作戦部。由夢!


由夢 T: ん?どうしたの?湊士。


湊士: 10階到達を最優先として、とにかく上に早く上るんだ。


由夢 T: 分かってる。


湊士: あと、気をつけて。


由夢 T: 笑、はい。



そしてすぐに、地上班全員の回線に繋げ、指示を飛ばす。



敦貴: さて……ここからだな。



タブレットのビルの構造図を見ながら、敦貴はそう呟き、思考を巡らせる。



敦貴: アンチが階段を上ってくる、そして下りてくる我々に対して、抵抗している。それはつまり、我々を中央の10階に行かせまいとしているんだ。



構造図の10階をアップにし、その手を顎に当てる。



敦貴: じゃあ、なぜそのような行動をとっているのか……1つは、ただ敵がやってきたから、迎撃しているだけ。そしてもう1つは、10階にある何かを守るため……



顎に当てていた手を、後ろで組む。



敦貴: まぁ、十中八九、後者だろう。ということはだ。我々の推測は間違っていなかったと言える。竹川は我々の10階到達までの時間稼ぎを部下に任せ、自分はエレベーターで地下駐車場まで降り、そこから地下鉄の方に向かって逃げている……となると、そろそろ…



そこまで言って、敦貴は後ろを振り返る。

すると…



1級(作)1: っ!和地さんと康二さんが接敵!人数は3人!



という声が部屋の中に響く。



敦貴: やはり……必ず仕留めろと伝えろ!それと竹川かどうかの確認も!


1級(作)1: はい!


敦貴: よし。これで竹川じゃなかった場合だと作戦失敗に大いに近づくわけだが……まぁ和地達と接敵したのは、竹川で間違いないだろう。なら、和地達が戦っている間に、10階から増援を送り、通路で挟み撃ちをすることで、確実に捕らえる。



両手を顔の前で、ギュッと組み、作戦の達成を頭の中にイメージした敦貴は、再びモニターの方に向き直り、各班からの報告を聞くと共に、指示出しを的確に行っていくのだった。





地下通路



カチッ



右耳に着けたイヤホンマイクをタップする和地。



和地: 奥にいるお前……お前が竹川風磨、だよな?


康二: ……



およそ5m先に立つ、3人の男を和地と康二は睨みつけながら、その1番後ろにいる眼鏡をかけた七三分けの男が、アンチ幹部の竹川風磨かどうかを、イヤホンマイクの回線を川藤に繋いだ状態で確認する。



青垣: ……


藍染: …どうしますか?


竹川: まさか、待ち伏せされているとは……ww、よく、この通路の存在を掴んだものだね。



前に立つ2人の間から、竹川は和地達にそう言う。



和地: うちには、腕の良い調べ屋がいるからな。で、どうなんだ?


竹川: ふむ……その調べ屋に敬意を評して、答えよう。お前が言っている通り、私が近畿地方を任されたアンチの幹部、竹川風磨だ。そっちは、防衛団だよね?


和地: あぁ。名前しか知らなかったから、ようやくお前さんに会えて、嬉しいぜ。


竹川: ……もしかして、京都の拠点を潰してくれたのも、君?


和地: その節は世話になったな。おかげで、少しの間、入院することになったわ。


竹川: へぇ~~君が蒼君を……


和地: まぁ、あの上位構成員を殺したのは、俺達じゃないけどな。


竹川: 情報を喋られるぐらいなら、殺した方が良いからね。そう紫雲君も判断したんでしょ。にしても、蒼君は捕まったのに、自殺の道を選ばなかったとは……やはりまだまだ未熟だったね。君らもそう思わないかい?


和地: …ノーコメントで。


竹川: ww、そうか。じゃあ、そろそろ行かせてもらおうかな。


和地: 簡単に行けると思うなよ?ってか、絶対に行かせねぇから。


康二: ……



2人は、敵を睨みつけながら、通路を塞ぐように横に並び、大きく構える。



竹川: あっそう。玄世、藍染君。よろしく。


青垣: はい。


藍染: すぐに倒します。



そう言って、竹川の前で青垣と藍染の2人が構える。



カチッ



和地: おいおい、仲間に任せて、自分は楽するつもりかよ!上に立つ人間としてどうなんだ?



イヤホンマイクの回線を切り、前方の敵に集中しつつ、竹川を煽る。



竹川: 適材適所だよ。さ、パッパとやっちゃって。



その言葉で、青垣と藍染が地面を蹴って、構える和地と康二に接近し、地下通路での戦いが始まった。



青垣: …


ドンッ!



地面を踏みしめる音が鳴ったと同時に、青垣の大きな拳が、和地の顔前に迫る。



和地: っ!


ドッ!



その速度に驚きながらも、防弾の小手をつけた両腕でその拳を受け、空いた腹への攻撃を警戒して、すぐに膝蹴りのモーションに入る。



青垣: …



一歩後退し、右膝をギリギリで避けるとすぐに、その場で回転して、右の裏拳を顔目掛けて放つ。



ブンッ!

ドッ!


和地: ……っ!グッ



その裏拳も右の小手で防御した和地だったが、青垣は自分の攻撃が防御されたと分かった瞬間に、小手によって弾かれた反動も利用して、右の縦拳を鳩尾に打ち込み、それをモロに食らった和地は、少し後ろに下がる。



青垣: …両腕におそらく防弾性の小手と、防弾チョッキ!



目の前の敵を睨みつけたまま、青垣はそう報告する。

そして、ほぼ同じタイミングで…



康二: はっ!!



胴を狙った攻撃を全て防御した上で、康二は藍染の顎を目掛けて右肘を振るう。



ブンッ!


藍染: おっと……



軽く後ろに飛び、体勢を整えて、口を開く。



藍染: こちらも防弾チョッキを着ています!


竹川: そう。じゃあ、使えないね。できるだけ早めに倒して。無理そうならアレやるから。



2人の報告を聞いた竹川は、胸掛け式ホルスターの中に収まっている拳銃を使うことを諦め、そう指示を出す。



青垣: はい。


藍染: 了解です。



返事をした青垣と藍染は、瞬時に各々で作戦を立て、目の前の敵を倒そうと構える。

それに対して、再び横に並んだ和地と康二は、軽いアイコンタクトで意志を共有し、考える。



和地: (この2対2の状況を保てば、耐えられはする。が、倒せるかどうかは怪しい。前に戦った蒼孝介よりもワンランク上の強さをしてやがる。それに、銃は封じられたみたいだが、竹川のアレという発言が気になるな……)


康二: (多分、アイツが懐に差しているのは、20cmぐらいの短刀だな……ってことは、竹川が銃を使うのを封じるためにも、できるだけ敵との距離を縮めて戦わないと。あと、常に和地の隣に並んで、敵を通さないように意識。)


和地: …



カチッ



右耳につけているイヤホンマイクをタップし、再び、川藤の回線に繋げる。



和地: 上だ。


川藤 T: OK。


康二: …


竹川: 一体、何が上なんだ?w


和地: いやいや。そちらには関係ねぇことだよ。にしても、そっちの大男。お前、その体格に似合わず素早いな。それに、俺の力量を測ると同時に、装備の確認、そして報告まで。よく教育してんな!


竹川: どうもw。部下はちゃんと育成しておかないと、いつか足元をすくわれる時が来るからさ。


和地: ほんとだぜ……康二、気張れよ。


康二: あぁ!



そうして、今度は、和地と康二が並んで一歩前に出て、敵と拳を交わすのであった。




ビル周辺



酒巻: ……



戦況に応じて、すぐに動けるようにと、待機を命じられている酒巻と、数人の戦闘部の団員達は、ビルの入口と地下鉄への入口の中間地点で、耳に届くであろう指示を待っていた。



1級団員(戦闘部)1: 戦況的には……私達は地下鉄の方に行かないといけなくなりそうですね。


酒巻: ……確かに、和地と康二が竹川と接敵したのなら、その手助けに行く可能性が高いが…



次の指示が何なのかを考えながら、ビルの方を眺めていると、イヤホンマイクから声が響く。



1級(作)3: 酒巻さん!


酒巻: 指示は!


1級(作)3: 酒巻さん達は、ビルの1階から建物内に入り、10階のエレベーターから地下通路に降りて、和地さん達と竹川を挟み撃ちしてください!


酒巻: 了解!お前ら、行くぞ!


「はい!」



作戦部からの指示を受けた酒巻は、すぐに部下を引き連れて、ビルに向かって走り出した。




ビル9階



上位構成員1: 行かせるかっての!


由夢: 任せるよ!


1級(戦)2: はい!先に行ってください!我々もすぐに追いつきます!


1級(戦)2: てめぇらの相手は俺らだ!


上位2: チッ…このっ!



階段の途中で、上から飛びかかってきた上位達を部下に任せて、由夢は10階に向けて駆け上がり、とうとう10階に到着した。



カチッ



由夢: 10階に到着。中央の部屋に向かう。


湊士 T: 分かった。中央の部屋は、その階段から右に進み、最初の十字路を左に曲がった先…らしい。そこから先は、情報部の潜入捜査でも調べきれなかった。


由夢: 右の次に左………



耳から入ってきた旦那の声の通りに、由夢は進み、壁から顔を覗かせ、開けた空間の中を確認する。



由夢: ……あそこか…


湊士 T: それっぽい部屋を見つけたか?


由夢: …いや、人がいる。おそらくアンチ。茶色の短髪で、身長は約175cm。そいつは後ろの扉を守るように立っている。


湊士 T: …そこだな。他に敵は?


由夢: 見えるところにはいない。


湊士 T: じゃあ、頼む。


由夢: 笑、うん。任せといて。



カチッ



マイクを切った由夢は、一瞬の脱力の後、静かに床を蹴って、置いてある机や椅子を利用して、身を隠しながら走り、その男…防衛を任された紺堂侑に奇襲をかける。



由夢: …


ブンッ!!


紺堂: っ!!あっぶ…



しかし、ギリギリで気づいた紺堂に、その奇襲は避けられてしまった。



由夢: …ふっ!



奇襲を避けられた由夢は、動きを止めることなく、壁際にいる紺堂に連撃を仕掛ける。


ブンッ!

ブンッ!



右手で懐にある何かを取ろうとした動作を見逃さず、目の前の男はおそらく右利きであると推測した由夢の、右前腕と右手首を狙った二連撃も、紺堂はギリギリで躱す。



紺堂: 警棒って!警察かよ!


由夢: …はっ!



攻撃を避けながらの紺堂の言葉に、由夢は答えることなく、次は喉を目掛けて、警棒を突き出す。



ガシッ!


紺堂: ww、やっと捕まえたぜ。



その警棒を、紺堂は右手で掴んで、口角を上げる。


が…



由夢: 何を?



掴まれた警棒をすぐに離し、由夢は右拳を握って、左顔面目掛けて放つ。



紺堂: なっ…


パシッ!



まさか、得物を即座に手放し攻撃してくるとは思わず、驚きはしたものの、紺堂は由夢の拳を左手で受け止める。



グググ


由夢: …


紺堂: おまっ…マジで女かよ!なんてパワーしてんだ!


由夢: …女性を下に見るな!



相手の左手ごと、自分の右拳を押し付けていたその力を瞬時に抜き…



ドンッ!!


紺堂: グハッ!!



重心はそのままに、紺堂の腹に全力で蹴り込んだのだった。




to be continued


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

推しの幼なじみになったら、いつの間にか巻き込まれていた

凪ルナ
恋愛
 3歳の時、幼稚園で机に頭をぶつけて前世の記憶を思い出した私は、それと同時に幼なじみの心配そうな顔を見て、幼なじみは攻略対象者(しかも前世の推し)でここが乙女ゲームの世界(私はモブだ)だということに気づく。  そして、私の幼なじみ(推し)と乙女ゲームで幼なじみ設定だったこれまた推し(サブキャラ)と出会う。彼らは腐女子にはたまらない二人で、もう二人がくっつけばいいんじゃないかな!?と思うような二人だった。かく言う私も腐女子じゃないけどそう思った。  乙女ゲームに巻き込まれたくない。私はひっそりと傍観していたいんだ!  しかし、容赦なく私を乙女ゲームに巻き込もうとする幼なじみの推し達。  「え?なんで私に構おうとするかな!?頼むからヒロインとイチャイチャして!それか、腐女子サービスで二人でイチャイチャしてよ!だから、私に構わないでくださいー!」  これは、そんな私と私の推し達の物語である。 ───── 小説家になろう様、ノベリズム様にも同作品名で投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...