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第9章 飛香編

第331話「拠点襲撃 in 大阪 part1」

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ちょうど、守里と七星がデートを終え、それぞれの家に帰った頃


大阪

防衛団仮拠点



ガチャ!!



椎名: ごめんごめ~ん、ちょっと遅れちゃった~



既に、大阪の拠点を攻める防衛団員のうちの特級団員全員が集まっていた会議室に、椎名が慌てて入ってくる。



??1: 愛理ちゃ~ん!会いたかったよ~!



すると、その椎名の姿を見た、眼鏡をかけたチャラそうな男が、声をかける。



椎名: あ、川藤さん。久しぶり。


川藤: ほんと、なんで俺達を仕事で一緒にしてくれないんだろうね。俺達はナイスコンビネェェェエション!のはずなのに。


椎名: そうかも…ね笑



防衛団情報部特級団員の"川藤慎吾かわふじ しんご"の、やけにテンションの高い言葉を、椎名は慣れたように受け流し、会議室の中央に集まっている、他の特級団員の方を見る。


まず、2ヶ月前の京都拠点襲撃に参加した酒巻翔太と、その際に怪我を負い、少しの間、乃木坂病院に入院していたが、完全復帰を果たした和地勇太郎。

そして、そのすぐ横に立つ、彫りが深めで優しい顔立ちをしている男…和地と酒巻と同じく、防衛団戦闘部の特級団員である"斉藤康二さいとう こうじ"。


その3人が立つ向かい側、モニターを見ながら、ヘッドセットを通して、他の団員に指示を送っている作戦部の団員達を背中に、中央の机にあるタブレットを操作しながら、椎名が到着したの確認し、口角を上げた、自称パーフェクトヒューマンな男…防衛団作戦部の特級団員である"中田敦貴なかた あつき"。


この4人が集まっている机に、川藤を後ろに連れながら、椎名も集まる。



椎名: 改めて、遅れてごめんね。ちょっと友達と話すのに夢中になってて。


川藤: え、お友達?愛理ちゃんにお友達ができたの?


椎名: うん。守里のおかげでね。新しく友達ができたの!しかも女の子!


川藤: へぇ~そりゃ良かった!


和地: まぁ、坊ちゃんはどちらかと言うと、女性の友達が多いみたいだから。


酒巻: お、ハーレムってやつか。羨ましいな笑


川藤: いやいや、坊ちゃんは愛理ちゃんと友達ってことが、1番嬉しいに決まってるよ!


酒巻: 川藤は、嬢ちゃんのことが好き過ぎだって笑


川藤: そりゃ当たり前さ!


和地: 笑、嬢ちゃんはまだJKだぞ。


川藤: ちょっと、年齢の話はなしでしょ!ねぇ、愛理ちゃん!


椎名: う~ん、でも実際に離れてるからな~


川藤: え~そんなこと気にしなくて良いよ!愛は年齢を超えるんだ!


和地: 相変わらずだな。ってか、なんで康二は黙ってんの?


酒巻: そうだぞ。緊張してんのか?



チャラ男の川藤が、積極的に椎名にアピールをする中、和地と酒巻は、何故か一言も喋らない康二の方を見る。



康二: え、えーっと……


酒巻: おいおい、どうしたんだよ。


康二: 確かに緊張もありはするけど、それよりも………なんか、黙ってた方が良いと思って。


酒巻: はぁ?笑、何でだよ。いつも通り、騒がしく行こうぜ。全員の気分を上げるためにも。


康二: いや~ちょっと……ごめん。


和地: まぁまぁ、なんか事情があんだろ。さ、中田、そろそろ始めよう。



その、和地の言葉に敦貴は頷き、タブレットから視線を外す。



敦貴: うん。そうだな。よし、注目。



手を叩いて、特級団員達の視線を集めつつ、敦貴は話し出す。



敦貴: 今から、アンチ大阪拠点襲撃作戦の最終確認を行う。よろしく。


椎名: よろしく~


敦貴: じゃあ、まずは、これを見て欲しい。これは、情報部によってもたらされた、重要な情報……アンチの大阪拠点であるビルの構内図だ。



そう言って、画面上に立体的な図が表示されたタブレットを、机の上に置き、全員に見せる。



酒巻: すげ。これ、どうやって調べたの?


椎名: そんなの私と、私の優秀な部下達にかかれば楽勝よ。


酒巻: さすが…


川藤: さすが愛理ちゃん!俺の出る幕なかったよ!


酒巻: …


敦貴: でだ。愛理ちゃん達の潜入捜査の結果、大阪拠点のボスであるアンチの幹部、竹川風磨はこのビルのちょうど真ん中の階。10階の中央にある部屋で寝泊まりしていることが分かった。


和地: 20階建てのビルの10階……上からの襲撃も警戒してか。


酒巻: でもそれじゃあ、いざ襲撃されたら逃げにくいだろ……逆に、逃げずに徹底抗戦する、っていう意志の現れとも考えられるな。


敦貴: そうだ。酒巻の言う通りに私も、最初はそう考えてしまった。だが、それが敵の罠だったのだ。



罠という部分を強く言いながら、両手を横に広げる敦貴。



和地: お前もお前で相変わらず、話し方に癖があんな。


酒巻: 笑、川藤と中田は揃って変人だから。



そんな2人の会話を無視し、敦貴は話を続ける。



敦貴: そこで、私は考えた。竹川はその部屋から、直接、ビルの外に出られるような脱出経路を確保しているのではないかと!そして、ちょうどその推測を立てた時に、我らが団長から報せがあった。私達の作戦が失敗し、敵が逃げてしまうという報せがね!


酒巻: へぇ~


和地: 中田だけに伝えられたのね。


敦貴: そう。私だけが、この報せを聞いた。だから、私が立てていた推測は正しく、このままビルから外に人が出ないようにと周りを固めていても、その脱出経路から竹川は逃げてしまうのだろう、と考え、すぐに慎吾に、その脱出経路について調べさせた。


椎名: 別に私に頼んでくれても良かったのに。


中田: うん。私も考えたよ。ただ、愛理ちゃんは拠点の潜入捜査もしていたし、何より経験がまだ足りないからね。この脱出経路を調べることには、拠点捜査以上に危険が伴い、簡単に命を奪うような罠が設置されていてもおかしくない。だから、経験豊富な慎吾に任せたんだ。


椎名: 私だって、やろうと思えば……


川藤: いやいやいやいや、愛理ちゃん!こういう危険なことは男の僕に任せて、愛理ちゃんはその自分の特技を生かした潜入捜査で、カッコいい所を見せてくれれば良いからさ!


椎名: むぅ……


川藤: 怒っている表情も可愛いね!じゃあ、今度、罠の見つけ方とか、爆弾の解除方法とか、色々と必要なことをマンツーマンで教えてあげるから、一緒にお勉強しよう!


和地: いや、それは色々とマズい発言だな。


川藤: え?



確認するように、川藤は敦貴の方を見る。



敦貴: やり過ぎだ、慎吾。落ち着け。


川藤: ご、ごめ~ん、愛理ちゃん!ちょっと調子に乗っちゃった。


椎名: 笑、別に良いよ。あと、教えてくれるんなら、データで頂戴。そっちの方が覚えられるから。


川藤: 分かった。すぐにまとめて送るよ!


酒巻: 笑、嬢ちゃんの従順な犬だな。


和地: だな笑。ってか、爆弾の処理とか言ってたけど、そういう罠が実際にあったってことか?


川藤: そうだよ。まず前提を話すんだけど、アンチに拠点として使われているビル…あれは、8年前にとある会社によって建てられたビルで、5年前にその会社が倒産したのとほぼ同時に、アンチがそのビルを買い取ったんだ。表立っては、IT系の会社ということになってるけど。


酒巻: 全く、アンチの金はどこから湧き出ているのやら…


和地: 金山コーポレーションからだろ。あそことアンチの関係はよく分かってないが、協力関係にあるのは確かみたいだから。


椎名: 情報部で頑張って捜査はしてるんだけどね。あの会社は、ほんとに何でもかんでも自分でやるから、中に潜入も難しいし、捜査が進んでないのよ。


酒巻: ふ~ん。


川藤: それで、脱出経路を捜査しろって言われたから、あのビルの建設に携わった業者を調べていくと、1人の従業員がストレスに耐えられなくなり、同僚と社長を殺し、その後自殺をしたことで、従業員全員が死んでしまったという小さな建設会社を見つけて、今は事故物件として扱われている、その元事務所に行くだけ行ってみた。大阪にはどこにアンチの耳があるか分からないし、自分の足で調べるしかないからね。そしたら…


敦貴: そしたら、なんとその事務所の出入口に、扉を開けた瞬間に、事務所ごと吹き飛ばす爆弾の罠が仕掛けられていたのだ!


川藤: いや、1番俺が言いたかったところ!!……まぁいいや。で、その爆弾を解除して、事務所の中に入ると、案の定、何も残ってなくて、手がかりなしか~って思って、帰ろうとすると、俺の視界にふと床の違和感が映ったんだ。



自分の眼鏡を指しながら、川藤は得意気に……特に椎名の方を見ながら言う。



川藤: そして、おそらく警察も清掃業者もアンチの構成員も気づかなかったであろう、その床の違和感について俺は調べ、結果、パカッと床のタイルが起き上がり、その床下の空間に、USBメモリを見つけた。で、その中身を調べると、5年前に突貫工事で作った、例のビルの10階から地下駐車場にまで伸びるエレベーターの設計図のデータが入っていた。


酒巻: 地下駐車場?……もう囲ってるよな?


敦貴: あぁ、完全に包囲している。だから、その慎吾の報告を聞いて不思議に思ったんだ。何故、俺達は竹川を逃がしてしまったのかと。そして、もう一度、あのビルの地下駐車場を調べた。すると、とある重要なものを見落としていたことに気づいたんだ。なんと…


川藤: なんと、地下駐車場から1番近い場所を通っている地下鉄の保守用通路に繋がる道が存在していることに気づいたんだよ!


敦貴: おい。慎吾。よくも私のセリフを。


川藤: まぁまぁ、さっきのお返しってことで許して笑


敦貴: …しょうがない。それで、結局のところ私が言いたいのは、おそらく…いや確実に、竹川は我々が襲撃をかけた瞬間に、エレベーターで地下駐車場に行き、そこから地下鉄の方に逃げるつもりだろうと。


和地: なるほど。


酒巻: …上から繋がっているエレベーターの降り口と保守用通路を繋ぐ道は、地下駐車場からは行けないんだよな?


椎名: 調べたら、分厚いコンクリートの壁に覆われてた。


酒巻: だよな…


和地: じゃあ、それを踏まえての、今回の作戦が……


敦貴: そう!昨日伝えた通り、戦闘部の1級と2級は、二手に分けて、ビルの1階と屋上から10階を目指して、アンチの構成員を無力化しつつ進行し、酒巻は1級2人、2級5人と共に、ビルの近くで待機。和地と康二は地下鉄側から、例の通路を地下駐車場に向かって移動し、逃げてきた竹川とその部下を確実に捕らえる。



顔の前に出した手をグッと握りながら、作戦を伝える敦貴。



和地: ガタイがあり、耐久戦ができる俺と康二を、通路の方に置き、機動力の高い酒巻を予備選力として待機させる……的確な作戦だな。


敦貴: さらに、愛理ちゃんと他の情報部団員には、ビル周辺の、川藤には地下鉄側の通路出口付近の状況把握を行ってもらい、3級は2班に分け、1班は入口と地下駐車場の見張り、2班は逃げた敵の追跡のために待機してもらう。


椎名: りょうか~い。


酒巻: 俺は……もし、和地と酒巻が突破されそうになった時に応援に入る、もしくは、その通路が使われなかった場合に対応するための戦力ってことだな。


敦貴: あぁ。この作戦について質問がある人は?



周りの特級団員と、奥にいる戦闘部、情報部の1級団員の反応を見て…



敦貴: 作戦決行は、今から……お、ちょうど1時間後の12月20日22時00分。和地、康二、慎吾は地下鉄側の通路入口前で待機。他はアンチの拠点であるビル周辺で待機しとくように。では、解散!



作戦の最終確認を終えた。




to be continued


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