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第9章 飛香編

第322話「関係値」

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日向子の家



飛香: ふぅ……やっと終わった…


日向子: エヘヘ笑、ありがと、あっしゅん。


飛香: 全く……勉強をしに来たのに、部屋の片付けをさせられる羽目になるとは。おでこまだ痛いし。



冷やしてくれるやつが貼られた額を擦りつつ、目の前でニコニコしている日向子を見て、飛香はそう言う。


というのも、予定通り、勉強会のために昼前に日向子の家に来た飛香。


昨日の日向子は、かなり集中して勉強ができていたため、今日も良い感じにできるのでは、と期待しながら、飛香が日向子の家のインターホンを押すと、日向子の母の声が聞こえるとほぼ同時に、日向子が勢いよく扉を開け、額に一撃を喰らってしまった。

そうして、若干涙目になった飛香を見て、日向子は大慌てとなり、外に飛香を置いたまま、一旦家の中に戻って、救急箱を取り出そうとしたのだが、日向子の母がそれを止め、まず、飛香をリビングに入れた後、冷やしてくれるやつを貼った。


その後、日向子はしょぼんとしていたが、少し怒っている飛香が、構わず勉強!と言うと、敬礼をして部屋に向かって歩き出し、ニコニコとしている日向子の母と軽く言葉を交わした後、その後に飛香も続く。

階段を上り、2階にある日向子の部屋の扉を開けると、目の前に広がっていたのは、まだ中学時代よりはマシなものの、少し潔癖でもある飛香からすれば、気になって勉強に集中できないぐらいに散らかっている部屋であった。


床に倒れているぬいぐるみや、乱雑に置かれた教科書類を適当に退かして、スペースを作り、そこに折りたたみ式の机を置いて、汚い勉強机から勉強道具を移し、扉の前で固まっている飛香を、ニコニコとして待つ日向子。

それに対して飛香は、数秒の処理時間を経て、無言で動き始めた。


可哀想だよ、と止めようとする日向子を無視して、床に落ちているぬいぐるみ達をベッドの方に放り投げて行き、次は教科書類を全て勉強机の上へ。

もうその頃には、日向子も飛香の圧にしゅんとし、部屋の隅の方で黙っており、飛香は邪魔されることなく、日向子の部屋を片付けていく。


そして、飛香が日向子の家のインターホンを押して、およそ1時間後、ようやく飛香も一息をつき、圧が霧散したことで、日向子も笑顔でお礼を言えたのだった。



日向子: それはほんとにごめんね。


飛香: ……別にいいよ。日向子がいるってのに、玄関の扉のすぐ前に立ってた私も悪かったし。


日向子: いや~~あっしゅんが、家に来るのが嬉しくてさ~


飛香: ……笑、勉強しないとなのに?


日向子: う~ん……ギリ、あっしゅんが来てくれて嬉しいが勝つ!


飛香: そう笑。なら、その嬉しさで勉強も頑張れるよね。


日向子: うん!!


飛香: じゃ、やろう。


日向子: はい!まずは何から?


飛香: 昼までは英語で。昼からは昨日の数学の続きと、それが終わったら、暗記科目でクイズ。


日向子: おっ!クイズ!楽しみ!


飛香: 笑、答えられなかったら罰ゲームだからね。


日向子: うぇっ!罰ゲーム?


飛香: うん。ちゃんと持ってきたんだから。



そう言って、飛香は勉強道具を、綺麗になった床に置かれた机の上に置きつつ、鞄の中から、罰ゲームと大きく書かれている箱を取り出す。



日向子: な、何それ?!


飛香: ニヒヒ笑、激苦のお茶。


日向子: げ、激苦……


飛香: もし、クイズに連続で間違えたら、これをコップ一杯分飲んでもらうから。間違えないようにね笑


日向子: あ、あの~そのクイズはやめ…


飛香: 部屋の片付けまでさせたのに?


日向子: ギクッ!!


飛香: あ~痛いな~~おでこ。


日向子: ギクッギクッ!!………分かったよぉ~


飛香: 笑、間違えなきゃ良いだけだから。


日向子: うん…



あからさまに日向子のテンションは下がり、それを見た飛香は、予定していた通りに話を進める。



飛香: ……あ、言い忘れてたんだけど…


日向子: ん?


飛香: クイズに連続で正解する毎に、ご褒美も用意してあるから。


日向子: えっ!!!ご褒美?!!


飛香: うん。ご褒美。だから、頑張ってね。


日向子: 頑張る!!!!


飛香: さ、まずは英語から。


日向子: イェッサー!!



予定通り、日向子のテンションが高くなり、飛香は笑顔でクッションの上に座り、日向子もまだ貰えるか分からないご褒美に胸を踊らせながら腰を下ろし、2人は勉強を始めるのであった。


◇◇◇


守里の家



蓮花: ……あ、スポナー見つけた。


水谷: マジ?玲衣も行く~


望月: 座標は?


蓮花: えっと…246の-24の-146。あのほら、とでかい滝みたいなとこから左に入った奥。


望月: 何のやつ?


蓮花: スケ。だから、トラップ作るのもありだね。


水谷: 大アリ!


望月: じゃあ、真上に掘っちゃうか。拠点からそんなに離れてないだろうし。


蓮花: おっけ~



と、リビングでブロックの世界のゲームを遊ぶ、蓮花達。

結真は小百合とのお出かけに行き、桜は自室にこもって勉強中、そして美月は…



美月: はぁ~~あ。



リビングのテーブルに肘をつけて、ため息をついていた。



蓮花: もう、うるさいよ、お姉ちゃん。お兄ちゃんが出る前に起きなかった自分のせいなんだからさ。


美月: ……でもさ~前もって言わずに、あとからメッセージで伝えるってどうかと思うんだけど。


蓮花: それは……お姉ちゃんが面倒臭くなるって分かってたからだよ。


美月: え、そんなストレートに言う?……はぁ~しかも、祐希の家で勉強会とかさ~~


蓮花: ……なんか、ごめんねボソッ


望月: 笑、大丈夫だよ。面白いしボソッ


水谷: うんうんボソッ


美月: 今頃、私1人だけ残して、みんなで楽しくやってるんだろうな~~


蓮花: んもう……


水谷: あ!!じゃあ、お姉さんも一緒にゲームをしましょうよ!


美月: え?


水谷: 蓮花のお兄さん達が今頃楽しんでるなら、お姉さんも玲衣達と一緒に、思いっきり楽しめば良いじゃないですか!



不貞腐れている美月を、水谷のキラッキラの明るい笑顔が照らす。



美月: うおっ…


蓮花: な、なんか、眩しい…


望月: これぞ、玲衣の力…


水谷: さぁ!お姉さんには玲衣達がいるんですから!一緒に楽しみましょう!


美月: っ…玲衣ちゃん………うん!!



そうして、美月は水谷の手を取り、蓮花達の輪に混ざる。



蓮花: う~ん…じゃあ、これは一旦やめて、大乱闘やろ。お姉ちゃんのストレス発散にもなるだろうし。


美月: お!やるやる!…って、ごめんね、彩芽ちゃん、玲衣ちゃん。


水谷: 大丈夫です!玲衣もちょうどやりたかったですから!


望月: お姉さんと一緒にゲームをできるだけで嬉しいですからニコッ


美月: な、なんて良い子達なの……もう2人とも大好き!


水谷: え~照れるな~


望月: 笑、ありがとうございます。


蓮花: はぁ……ほら、やるよ。


美月: はーい!私は変わらず緑のドラゴンで。


蓮花: ほんと好きだね~それ。蓮花は……まずはゴリラでいいや。


水谷: 玲衣は~~黄色のネズミ!


美月: 使い手?


水谷: はい!可愛いので!


美月: そっか笑。彩芽ちゃんは?


望月: 私は………おじさんで。


美月: え……彩芽ちゃんは、ピンクの丸いヤツ選ぶと思ってた…


蓮花: 笑、それだと2体いるんだけど。


望月: フフ笑、さぁ始まりますよ。


水谷: よっしゃ、玲衣が勝つ!!


美月: なにを!勝つのは私だ!


蓮花: いやいやいや、蓮花が負けるわけないから笑


望月: ニコニコ




2分後……



水谷: ま、負けた……


美月: 嘘でしょ…


蓮花: 全部、ぶち壊された…


望月: あらら笑。私が勝っちゃいましたね。


水谷: くぅ~次は負けない!!もう1回!


美月: リベンジ!


望月: 受けて立ちますよ笑


蓮花: 笑、じゃ早くAボタン押して。



こうして、守里の家のリビングでは、熱き戦いが繰り広げられるのであった。



桜: ……



ワイワイ



桜: 笑、楽しそうだな~




to be continued
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