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第9章 飛香編

第320話「秘密がある人達」

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テスト前の日曜日に、祐希の部屋で開かれている勉強会。

そんな中、守里、春時、祐希という防衛団のことを知る3人は防衛団について話していた。



春時: なぁ、祐希ってさ、実際どのぐらいなんだ?


祐希: どのぐらいって?


春時: 強さだよ。おそらくだけど、祐希は戦闘部の仮団員なんだろ?


祐希: ……なんで戦闘部?


春時: そりゃ……人探しには役に立てないってことから、情報部ではないだろうし、作戦部は………まぁ、確実にないだろ。な?守里。


守里: そこで僕に話を振らないでよ笑


祐希: なんで祐希は、作戦部は確実にないの?



グイッと、守里の方に体を乗り出す祐希。



守里: え、僕に詰め寄るの?


祐希: なんで?


守里: そ、それは………おバカだから。


祐希: うわ~ん、守里が悪口言ったぁ~


春時: 笑、狙い澄ました嘘泣き。


守里: ……今日はほんとに元気なことで。


祐希: なんか、守里が祐希の家にいると、懐かしくて嬉しいんだよね笑


守里: そうなの?


春時: 俺は無視かい笑


祐希: だって、あんまり春時は来たことないじゃん。


春時: まぁな。3、4回ってとこじゃないか?


祐希: 分かんないけど、そのぐらい。


春時: で、俺の質問への答えは?


祐希: …なんだっけ?


守里: 嘘泣き作戦の実行に上書きされたか笑。戦いの強さはどのぐらいなの?って質問だよ。


祐希: あぁ~~祐希は、そんなに戦えないよ。


春時: そうなんだ。


祐希: うん。お母さん譲りのパワーはあるけど………祐希はお姉ちゃんと違ってバカだからさ、上手く戦えないの。



そう話す祐希の表情が少し暗くなる。



守里: ……


春時: へぇ~ちなみにさ、祐希の両親は階級的にはどこになるんだ?


祐希: お父さんは作戦部の1級で、お母さんは戦闘部の1級。


春時: すご。1級って、中々いないんだろ?


祐希: 知らない。祐希はまだ仮団員だから、そんなに情報を教えられてないの。


春時: そっか。でも、団長には会ったことがあるんだもんな。


祐希: 守里と遊んでた時にね。でも、防衛団としては会ったことないよ。


春時: そんなもんなんだな。ってことは、特級団員とかとは、ほんとに会う機会はなさそう。


祐希: 祐希は………あ、戦闘部統括のおかっぱの太っちょさんとは会ったことある。お母さんと一緒に歩いてたら、たまたま会って、挨拶した。


春時: おかっぱの太っちょ?


守里: 笑、日村おじさんか。


祐希: あ、そうそう、日村さん。


守里: 面白い顔だったでしょ?笑、ここだけの話。


祐希: 笑、うん。


春時: 戦闘部の統括はおかっぱの太っちょなのか……


守里: それで言えば、僕は情報部の特級団員とは会ったことあるよ。


祐希: 美月達のお母さんじゃなくて?


守里: うん。お義母さんの部下で、椎名愛理っていう、僕達と同い歳の特級団員と会ったことあるっていうか、連絡先も交換してる。


春時: は?


祐希: 連絡先を交換してるの?


春時: いやそれよりも、俺らと同じ歳で情報部の特級団員って……その子、めちゃくちゃヤバいんじゃ…


守里: ほんとにすごいよ。見た情報は完全記憶するし、オーラを自在に操れるし。ってか、文化祭にも来てた。


春時: 文化祭って、この前のうちの文化祭?


守里: そうそう。初日の午後に。ほら、パンケーキを全種類頼んで、ドカ食いしてた女の子、覚えてない?


春時: ……あ!あの子か!外にいた澪奈と、随分と守里と仲が良さげな女の子がいるって話してたんだ。


守里: そんな話をしてたんだ笑


春時: ほぇ~あの子が情報部の特級団員……


守里: 祐希は、椎名愛理…笑、愛理ちゃんって呼ばないと怒られるんだけど、愛理ちゃんのことは知ってた?


祐希: う~ん、お父さんから同じ歳の子がいるとは、うっすらと聞いてたような、聞いてないような、って感じ。


守里: うん、祐希のお父さんはちゃんと話してたんだろうね。


春時: 機会があったら会ってみたいな。


守里: 今、愛理ちゃんは大阪にいるからね。中々難しいかもだけど、いつかは会えるよ。というか、連絡先ならすぐに交換できるけど?


春時: いや、さすがにその勇気はない。


守里: 祐希は?愛理ちゃん、友達を欲してるから、できれば友達になってあげて欲しいんだけど……


祐希: ……じゃあ、お願い。


守里: OK。愛理ちゃんに許可取ってからになるけど、後から送る。


祐希: うん。


守里: さ、結構、話し込んじゃったけど、勉強会に戻ろう。


春時: おう。


祐希: はーい。


守里: 問題配るから、僕の合図で開始ね。



そう言って、話している間にも作っていた問題を書いた紙を、守里は2人に渡す。



春時: 30問か……


祐希: ……


守里: 2人ともいけそう?


春時: 笑、頑張る。


祐希: 祐希も!


守里: じゃあ、よーい……スタート!!



こうして、守里が見守る中、祐希と春時による熱き計算対決が始まったのだった。


◇◇◇


とある地下の談話室



ガチャ



景信: お、来たか。


紫音: ごめん、遅くなった。


景信: いや、俺らも今来たところだから。


紫音: 笑、お互いに忙しくなったな。


景信: まぁな笑


かおり: ご無沙汰しています、紫音さん。


紫音: 笑、そんなに畏まらないでくださいよ。奥さん。


かおり: では、久しぶりですね、紫音さん。


紫音: はい、久しぶりです。


景信: お前が纏ってるオーラのせいだろ笑


紫音: え、僕、オーラ纏ってる?


景信: おう笑。なぁ?


かおり: 確かにね笑


紫音: まさかの、取っ付き難い系?


景信: 若干。


紫音: マジか……でも、そんなこと言う景信も、貫禄あるオーラを放ってるぞ。


景信: ま、組織の長だからな。そういうオーラは放っとかないと、威厳が保てないし。


紫音: だな。



と、大人達の挨拶が終わったところで、紫音の後ろについて来ていた陽芽叶が、前に出る。



陽芽叶: こんにちは、守里のお父さん、お義母さん。


景信: おぉ、陽芽叶ちゃん、こんにちは。


かおり: あら聞いてた通り可愛い。こんにちは。


紫音: やっぱり、可愛いよね?うちの陽芽叶。


陽芽叶: ちょっとお父さん。


紫音: 笑、ごめんごめん。でも、陽芽叶が可愛いのは事実だからさ。


陽芽叶: それを人に押し付けないの。


景信: 相変わらず仲が良いな。


かおり: ほんとね~~改めて、初めまして、陽芽叶ちゃん。守里と美月の母の白城かおりです。


陽芽叶: 初めまして。伊藤陽芽叶です。


かおり: 紫音さんの言う通り、お人形さんのように可愛いわ~


陽芽叶: いえ……守里のお義母さんこそ、やはり美月や結真さん、桜ちゃん、蓮花ちゃんのお母さんなだけあって、ものすごく美人さんです。


かおり: あらら笑、ありがと。


景信: ……ほんっと、よくできた子だ。


紫音: だろ?笑


景信: 笑………よし、時間もないし、話に入ろうか。


紫音: うん。


陽芽叶: 失礼します。



防衛団の団長と情報部統括、そして伊藤紫音とその娘、伊藤陽芽叶が、その部屋に置かれた椅子に腰をかける。


部屋には、中央の机とそこに向かう4つの椅子のみがあり、天井には証明と空調、換気装置がついてるだけで、必要最低限のとてもシンプルな内装となっており、その部屋の中には、4人しかいない。


そんな状況で、重要な会議が始まる。



景信: じゃ、俺達を集めた陽芽叶ちゃん、よろしく。


陽芽叶: はい。



今回、この3人に、集まって話し合いをしたいと言った陽芽叶が、場を仕切り出す。



陽芽叶: では、早速本題に入りますが、この度、皆さんに集まっていただいたのは、守里にかけた暗示について、今一度、話し合いたいと思ったからです。


紫音: うん。守里君にかけたのは…



「「予知」と「暗示」の異能力を持つ者と、大切な人を守るためだけに「解放」を使用できる」


「森崎恵と森崎優茉の記憶は存在しないものとするが、月に一度だけ、感情を抑制した状態で一部の記憶を思い出し、「解放」の扱いが上手くなるほど、感情の抑制は減り、思い出す記憶は増える」


「普段は、他人を攻撃することはできないが、意識的に「解放」を使用した場合に、他人を攻撃できるようになる」


「家族と、神田七星を除く大事な人が、守る対象の大切な人である」



紫音: の4つだよね?


陽芽叶: そう。直近で、10月24日に私がかけ直しました。


景信: 経緯としては、アンチの黒峰龍水との戦闘中に、陽芽叶ちゃんを目の前で撃たれて、激昂した守里が、暗示を破って第3段階まで解放したため、戦闘終了後に、陽芽叶ちゃんが暗示をかけ直した、と。


陽芽叶: はい。今回は、暗示が解けてからそこまで時間が経っておらず、守里も第3段階解放の反動で完全に意識を失っていたので、私一人でも暗示は成功していると思います。


景信: うん。守里の護衛の話だと、週末に木村道場で戦闘の指導を受けている中で「解放」を使用した感じは、以前と変わりがないと、本人から聞いているし、伊衛能病院にいる団員…陽芽叶ちゃんも会ったことあるあの女性団員からも、前のロボットっぽさは薄れているものの、そんなに変わらないとの報告は受けているから、陽芽叶ちゃんの暗示は、しっかりと成功していると思うよ笑


陽芽叶: 良かったです。


紫音: ん?木村道場って、昔、景信も行ってたところだよね?


景信: そうだ笑


紫音: お前が行かせたの?


景信: いや、それがほんと偶然なんだよ。


紫音: へぇ~


かおり: 運命的よね笑


景信: あぁ。あそこで守里には強くなってもらわないと。


紫音: 守里君は今、どこまで解放できるの?第3段階解放で暗示を破ったって断言したなら、第2段階は解放できないんでしょ?


景信: そうだが……おそらく、第2段階の1歩手前までは、もう行ってるんじゃないかな?何気に「解放」を使う機会は多かったし。


陽芽叶: はい。美月に守里の記憶の戻り具合を聞いたところ、森崎優茉さんの記憶はほぼ取り戻しているのに対し、森崎恵さんの記憶は全く、ということでしたので、第2段階にはまだ至っていないが、第1段階…守里にとっては第1.5段階はほぼ完璧に使える、という感じだと思われます。


景信: あ、そうそう、その病院の団員からの情報なんだが、かなり表情が柔らかくなってたから、優茉について話を聞いたところ、あの時以外のことは全て思い出していたみたいだぞ。


陽芽叶: では、何かしらのきっかけで、第2段階を解放できるところには至っているということですね。


紫音: 「解放」の異能力者として、第2段階を解放できるようになるきっかけと言うと?笑


景信: う~ん……こればっかりは人それぞれだからな……俺は親父との修練中に使えるようになったし、親父は敵と死闘を繰り広げていた時に使えるようになったって言ってたし、人によっては突然使えるようになったってのもあったらしいから。


紫音: そっか……やっぱ、似たようなもんなんだね。


景信: 陽芽叶ちゃんはどうだった?


陽芽叶: 私は……それこそ、10月24日に、守里が病室からいなくなって、どこに行ったんだろう、って思ってたら、「予知」の使用自由度が高まったって感じでした。


かおり: 笑、守里君への愛によるものかしら。


陽芽叶: //笑、かもですね。


紫音: ふむ……


景信: 笑、親バカだな~



という景信の紫音へのイジりを聞きながら、陽芽叶は姿勢を正す。



陽芽叶: それでですね。私が守里にかけた暗示について話し合いたいと言った理由としては、2つありました。


景信: ありました?ってことは、今は2つじゃないのかな。


陽芽叶: はい。先日までは、記憶を思い出した状態ではない守里が、森崎優茉さんを見て泣いている様子から、森崎優茉さんと森崎恵さんの記憶を完全に封印してしまった方が良いのではないか、と迷っていたのですが、美月と話してみて、その必要はないと思ったんです。


かおり: 美月?


陽芽叶: 先日、美月に森崎優茉さんの記憶を、守里がどれだけ取り戻しているのかを聞いた時に、美月の守里への熱い想いを聞いて、たとえ守里が全てを思い出して、心が壊れそうになっても、大丈夫だと安心できました。


かおり: そう……笑、良かったわ。


紫音: じゃあ、残りの1つっていうのは何なのかな?


陽芽叶: それはあの件の時に、守里にかけた暗示の1つ、「家族と、神田七星を除く大事な人が、守る対象の大切な人である」、についてです。



この後も、外と隔絶された空間で、陽芽叶の話は続いたのであった。




to be continued
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