ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第9章 飛香編

第316話「偽りの笑顔」

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数分前



??: わっすれもの~、わっすれもの~部室にわっすれもの~!!



部活動の練習着を着た女子生徒が、そう大声で歌いながら、実習校舎の中をスキップしていると…



??: わっすれもの~わっすれもの~!……あれ。



忘れ物を取りに行く途中で、立ち止まる。



??: あっちから、あっしゅんの気配がする!!



そう言って、忘れ物のことなど頭の中から霧散し、その大好きな気配がする方向へと走り始めた。



??: うんうん、この辺のはずだけど、どこかな?


「っ!この!!」


??: あ、あっしゅんの声だ!なんか怒ってるけど……まぁいいや!



廊下に並ぶ教室の中から、大好きな人の声が聞こえた場所を探し……



??: ここっぽいな。この向こうから、あっしゅんと……もう1人いるかな?



声を潜めながら、目的の教室を見つけ出し、その扉の前へ。



??: じゃ、早速……



ガラガラ!!



飛香: 守里のことが大好きだから!!


??: っ!!!!


七星: ほぇ?


飛香: //え?……日向子…



そう、勢いよく扉を開けたのは、日向子であった。



日向子: ……っ…あ、え、なんで……いや………ごめん!!


飛香: え、ちょっ!!



しかし、とある記憶が一瞬だけ頭の中に広がった後、自分の頬に、一筋の涙が流れていることに気づき、すぐに走り出してしまった。



飛香: すみません!七星先輩!


七星: うん、はよ行き。


飛香: はい!ありがとうございました!



その後すぐに、飛香も教室を飛び出し、七星はそれを見送る。



七星: ……ああいうので涙を流すような子ちゃうと思ってたんやけど……まぁ、タイミングが悪かったんかな…



先程、目に映った光景を思い出しながら、七星は席を立ち、飛香の荷物を机の上に、綺麗にまとめる。



七星: なんにせよ、日向子のことは、飛香に任せるべきやろうな。ななが介入することやないはずや。もし頼ってきたら、なんでも手伝うけど……っと。



自分の荷物を手に取り、忘れ物がないかを確認し…



七星: 飛香も話は終わっとったみたいやし、帰ろ。守里とどう仲直りするかも考えなアカンしな。って、そういえば、文化祭の時のアレが……



と、呟きながら、七星は空き教室を出たのだった。



一方、突然涙を流して走り出した日向子を、追いかける飛香は…



飛香: くっ、もう見えない……ハァハァ…



1つ階段を上った先で、日向子の背中を見失ってしまっていた。



飛香: 階段を上ってる足音は聞こえなかったから、ここのどこかにいるはずなんだけど…



と、次は、飛香が日向子のいる教室を探す番となる。



なんで、日向子はあそこに来たの?

なんで、日向子は逃げるように走り出したの?


いや、そんなことよりも、なんで日向子は泣いてたの?



自分の大切な親友が涙を流していたわけを、必死に考えながら、飛香は日向子を探す。


そして……


ガラガラ



飛香: …あ……


日向子: グスン…グスン……



廊下の突き当たりの教室で、角にうずくまっている日向子を見つける。



飛香: …日向子。


日向子: っ!…グスッ…あっしゅん……



名前を呼ばれ、後ろを振り向いた日向子の顔は、窓から差し込む微かな月明かりでも、流れ続ける涙で濡れているのが分かる。


それを見た飛香は、すぐに駆け寄った。



飛香: どうしたの?日向子。なんで…泣いて……


日向子: うぅ…分かんない…グスッ……でも、涙が止まんないよ……グスッ



必死に手で涙を拭うが、次から次へと流れてくる大粒の涙には追いつかない。



飛香: 日向子……


ギュッ



そんな日向子を、飛香は優しく抱き締める。



日向子: あっしゅん……グスン


飛香: ………



強く抱き締め返してくれる親友の心が落ち着くようにと、背中を優しくさすりつつ、日向子が泣いている理由について思考を進め…



飛香: …日向子は……


日向子: うん?グスッ



この質問の答えで、日向子が泣いている理由が分かるとも、この質問自体が、日向子が泣いている理由に関係しているとも、まだ明確に分かっていない。

にも関わらず、とある可能性に考えが至った時点で、飛香は無意識のうちに、この質問を口に出していた。



飛香: 守里のこと……好き?


日向子: っ……



飛香の質問を聞いた瞬間に、日向子は涙を拭う手を早め、赤くなった目から涙が出てきていないことを確認し、パッと、飛香から離れ…



飛香: ……


日向子: …私は……親友として、守里が好きだよ!!笑



いつもの明るい笑顔、いつもの元気な声……のつもりで、日向子は飛香にそう言った。



飛香: っ…


日向子: 笑、じゃあ、わけが分かんない涙も、あっしゅんのおかげで止まったことだし、部活にも~どろ!


飛香: ……うん。


日向子: また明日ね!あっしゅん!



そう飛香に別れを告げて、日向子は教室を飛び出して行った。



飛香: ………



なんだよ……あれ……


全然……笑ってないじゃん……

いつもの日向子の笑顔じゃないじゃん……

私が大好きなあの笑顔じゃないじゃん……


日向子は私のあの言葉を聞いてた。

そして、日向子はやっぱり守里のことが……


でも、日向子はそれを隠したんだ。

苦手な嘘をついて、必死に笑顔を取り繕って。


私に気を遣って…



飛香: …くそっ……




to be continued




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