316 / 340
第9章 飛香編
第316話「偽りの笑顔」
しおりを挟む
数分前
??: わっすれもの~、わっすれもの~部室にわっすれもの~!!
部活動の練習着を着た女子生徒が、そう大声で歌いながら、実習校舎の中をスキップしていると…
??: わっすれもの~わっすれもの~!……あれ。
忘れ物を取りに行く途中で、立ち止まる。
??: あっちから、あっしゅんの気配がする!!
そう言って、忘れ物のことなど頭の中から霧散し、その大好きな気配がする方向へと走り始めた。
??: うんうん、この辺のはずだけど、どこかな?
「っ!この!!」
??: あ、あっしゅんの声だ!なんか怒ってるけど……まぁいいや!
廊下に並ぶ教室の中から、大好きな人の声が聞こえた場所を探し……
??: ここっぽいな。この向こうから、あっしゅんと……もう1人いるかな?
声を潜めながら、目的の教室を見つけ出し、その扉の前へ。
??: じゃ、早速……
ガラガラ!!
飛香: 守里のことが大好きだから!!
??: っ!!!!
七星: ほぇ?
飛香: //え?……日向子…
そう、勢いよく扉を開けたのは、日向子であった。
日向子: ……っ…あ、え、なんで……いや………ごめん!!
飛香: え、ちょっ!!
しかし、とある記憶が一瞬だけ頭の中に広がった後、自分の頬に、一筋の涙が流れていることに気づき、すぐに走り出してしまった。
飛香: すみません!七星先輩!
七星: うん、はよ行き。
飛香: はい!ありがとうございました!
その後すぐに、飛香も教室を飛び出し、七星はそれを見送る。
七星: ……ああいうので涙を流すような子ちゃうと思ってたんやけど……まぁ、タイミングが悪かったんかな…
先程、目に映った光景を思い出しながら、七星は席を立ち、飛香の荷物を机の上に、綺麗にまとめる。
七星: なんにせよ、日向子のことは、飛香に任せるべきやろうな。ななが介入することやないはずや。もし頼ってきたら、なんでも手伝うけど……っと。
自分の荷物を手に取り、忘れ物がないかを確認し…
七星: 飛香も話は終わっとったみたいやし、帰ろ。守里とどう仲直りするかも考えなアカンしな。って、そういえば、文化祭の時のアレが……
と、呟きながら、七星は空き教室を出たのだった。
一方、突然涙を流して走り出した日向子を、追いかける飛香は…
飛香: くっ、もう見えない……ハァハァ…
1つ階段を上った先で、日向子の背中を見失ってしまっていた。
飛香: 階段を上ってる足音は聞こえなかったから、ここのどこかにいるはずなんだけど…
と、次は、飛香が日向子のいる教室を探す番となる。
なんで、日向子はあそこに来たの?
なんで、日向子は逃げるように走り出したの?
いや、そんなことよりも、なんで日向子は泣いてたの?
自分の大切な親友が涙を流していたわけを、必死に考えながら、飛香は日向子を探す。
そして……
ガラガラ
飛香: …あ……
日向子: グスン…グスン……
廊下の突き当たりの教室で、角にうずくまっている日向子を見つける。
飛香: …日向子。
日向子: っ!…グスッ…あっしゅん……
名前を呼ばれ、後ろを振り向いた日向子の顔は、窓から差し込む微かな月明かりでも、流れ続ける涙で濡れているのが分かる。
それを見た飛香は、すぐに駆け寄った。
飛香: どうしたの?日向子。なんで…泣いて……
日向子: うぅ…分かんない…グスッ……でも、涙が止まんないよ……グスッ
必死に手で涙を拭うが、次から次へと流れてくる大粒の涙には追いつかない。
飛香: 日向子……
ギュッ
そんな日向子を、飛香は優しく抱き締める。
日向子: あっしゅん……グスン
飛香: ………
強く抱き締め返してくれる親友の心が落ち着くようにと、背中を優しくさすりつつ、日向子が泣いている理由について思考を進め…
飛香: …日向子は……
日向子: うん?グスッ
この質問の答えで、日向子が泣いている理由が分かるとも、この質問自体が、日向子が泣いている理由に関係しているとも、まだ明確に分かっていない。
にも関わらず、とある可能性に考えが至った時点で、飛香は無意識のうちに、この質問を口に出していた。
飛香: 守里のこと……好き?
日向子: っ……
飛香の質問を聞いた瞬間に、日向子は涙を拭う手を早め、赤くなった目から涙が出てきていないことを確認し、パッと、飛香から離れ…
飛香: ……
日向子: …私は……親友として、守里が好きだよ!!笑
いつもの明るい笑顔、いつもの元気な声……のつもりで、日向子は飛香にそう言った。
飛香: っ…
日向子: 笑、じゃあ、わけが分かんない涙も、あっしゅんのおかげで止まったことだし、部活にも~どろ!
飛香: ……うん。
日向子: また明日ね!あっしゅん!
そう飛香に別れを告げて、日向子は教室を飛び出して行った。
飛香: ………
なんだよ……あれ……
全然……笑ってないじゃん……
いつもの日向子の笑顔じゃないじゃん……
私が大好きなあの笑顔じゃないじゃん……
日向子は私のあの言葉を聞いてた。
そして、日向子はやっぱり守里のことが……
でも、日向子はそれを隠したんだ。
苦手な嘘をついて、必死に笑顔を取り繕って。
私に気を遣って…
飛香: …くそっ……
to be continued
??: わっすれもの~、わっすれもの~部室にわっすれもの~!!
部活動の練習着を着た女子生徒が、そう大声で歌いながら、実習校舎の中をスキップしていると…
??: わっすれもの~わっすれもの~!……あれ。
忘れ物を取りに行く途中で、立ち止まる。
??: あっちから、あっしゅんの気配がする!!
そう言って、忘れ物のことなど頭の中から霧散し、その大好きな気配がする方向へと走り始めた。
??: うんうん、この辺のはずだけど、どこかな?
「っ!この!!」
??: あ、あっしゅんの声だ!なんか怒ってるけど……まぁいいや!
廊下に並ぶ教室の中から、大好きな人の声が聞こえた場所を探し……
??: ここっぽいな。この向こうから、あっしゅんと……もう1人いるかな?
声を潜めながら、目的の教室を見つけ出し、その扉の前へ。
??: じゃ、早速……
ガラガラ!!
飛香: 守里のことが大好きだから!!
??: っ!!!!
七星: ほぇ?
飛香: //え?……日向子…
そう、勢いよく扉を開けたのは、日向子であった。
日向子: ……っ…あ、え、なんで……いや………ごめん!!
飛香: え、ちょっ!!
しかし、とある記憶が一瞬だけ頭の中に広がった後、自分の頬に、一筋の涙が流れていることに気づき、すぐに走り出してしまった。
飛香: すみません!七星先輩!
七星: うん、はよ行き。
飛香: はい!ありがとうございました!
その後すぐに、飛香も教室を飛び出し、七星はそれを見送る。
七星: ……ああいうので涙を流すような子ちゃうと思ってたんやけど……まぁ、タイミングが悪かったんかな…
先程、目に映った光景を思い出しながら、七星は席を立ち、飛香の荷物を机の上に、綺麗にまとめる。
七星: なんにせよ、日向子のことは、飛香に任せるべきやろうな。ななが介入することやないはずや。もし頼ってきたら、なんでも手伝うけど……っと。
自分の荷物を手に取り、忘れ物がないかを確認し…
七星: 飛香も話は終わっとったみたいやし、帰ろ。守里とどう仲直りするかも考えなアカンしな。って、そういえば、文化祭の時のアレが……
と、呟きながら、七星は空き教室を出たのだった。
一方、突然涙を流して走り出した日向子を、追いかける飛香は…
飛香: くっ、もう見えない……ハァハァ…
1つ階段を上った先で、日向子の背中を見失ってしまっていた。
飛香: 階段を上ってる足音は聞こえなかったから、ここのどこかにいるはずなんだけど…
と、次は、飛香が日向子のいる教室を探す番となる。
なんで、日向子はあそこに来たの?
なんで、日向子は逃げるように走り出したの?
いや、そんなことよりも、なんで日向子は泣いてたの?
自分の大切な親友が涙を流していたわけを、必死に考えながら、飛香は日向子を探す。
そして……
ガラガラ
飛香: …あ……
日向子: グスン…グスン……
廊下の突き当たりの教室で、角にうずくまっている日向子を見つける。
飛香: …日向子。
日向子: っ!…グスッ…あっしゅん……
名前を呼ばれ、後ろを振り向いた日向子の顔は、窓から差し込む微かな月明かりでも、流れ続ける涙で濡れているのが分かる。
それを見た飛香は、すぐに駆け寄った。
飛香: どうしたの?日向子。なんで…泣いて……
日向子: うぅ…分かんない…グスッ……でも、涙が止まんないよ……グスッ
必死に手で涙を拭うが、次から次へと流れてくる大粒の涙には追いつかない。
飛香: 日向子……
ギュッ
そんな日向子を、飛香は優しく抱き締める。
日向子: あっしゅん……グスン
飛香: ………
強く抱き締め返してくれる親友の心が落ち着くようにと、背中を優しくさすりつつ、日向子が泣いている理由について思考を進め…
飛香: …日向子は……
日向子: うん?グスッ
この質問の答えで、日向子が泣いている理由が分かるとも、この質問自体が、日向子が泣いている理由に関係しているとも、まだ明確に分かっていない。
にも関わらず、とある可能性に考えが至った時点で、飛香は無意識のうちに、この質問を口に出していた。
飛香: 守里のこと……好き?
日向子: っ……
飛香の質問を聞いた瞬間に、日向子は涙を拭う手を早め、赤くなった目から涙が出てきていないことを確認し、パッと、飛香から離れ…
飛香: ……
日向子: …私は……親友として、守里が好きだよ!!笑
いつもの明るい笑顔、いつもの元気な声……のつもりで、日向子は飛香にそう言った。
飛香: っ…
日向子: 笑、じゃあ、わけが分かんない涙も、あっしゅんのおかげで止まったことだし、部活にも~どろ!
飛香: ……うん。
日向子: また明日ね!あっしゅん!
そう飛香に別れを告げて、日向子は教室を飛び出して行った。
飛香: ………
なんだよ……あれ……
全然……笑ってないじゃん……
いつもの日向子の笑顔じゃないじゃん……
私が大好きなあの笑顔じゃないじゃん……
日向子は私のあの言葉を聞いてた。
そして、日向子はやっぱり守里のことが……
でも、日向子はそれを隠したんだ。
苦手な嘘をついて、必死に笑顔を取り繕って。
私に気を遣って…
飛香: …くそっ……
to be continued
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。
最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。
でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。
記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ!
貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。
でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!!
このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない!
何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない!
だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。
それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!!
それでも、今日も関係修復頑張ります!!
5/9から小説になろうでも掲載中

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる