ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第8章 生徒会選挙編

第299話「生徒会選挙直前」

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生徒会選挙当日




生徒会室



七星: …


守里: …



資料を触る音しか聞こえないような静かな空間の中で、並んで黙々と作業をする2人。



守里: …ふぅ……



結局、最後まで話しかけられなかったか…


この仕事を頼まれた時は、気まずいっていう感情しか湧かなかったけど、途中からは、元の関係に戻れたら、っては思ってた。

でも、どうしても、あの時のなぁちゃんの顔と言葉が思い浮かぶ。


なぁちゃんにとって、僕はただの護衛対象で、仕事上の上司でしかなかった。


僕は仲の良い先輩後輩という関係よりも前に、幼なじみとして仲良くできていると思ってた。

だけど、そう思ってたのは僕だけで、なぁちゃんはそうは思ってなかったんだ。


それを知ってしまうとさ。

別に裏切られたとは思わないし、なぁちゃんのことも嫌いにはならない。

いや、こんなに楽しく幸せな思い出がいっぱいあるのに、今更、なぁちゃんのことを嫌いになんて、なれるわけがない……けど……


もう、どう接すれば良いのか、どう話しかければ良いのか、どんな顔で向かい合ったら良いのか、分からないよ。


と、守里が顔に出すことはないが、心の中で深く悩みながら、ひたすらに手を動かしていると…



七星: なぁ、守里。


守里: っ!!!



突然、手を止めることもなく、視線を向けることもなく、七星が口を開いた。



守里: …なに?



あの日以降、一度も話しかけてくれなかった七星から、話しかけられたことに驚きながらも、何とか平静を装い、言葉を返す。



七星: ……今日の選挙が終われば、任せた仕事も終わりで、なな達の手伝いもすることなくなるけど…


守里: うん…


七星: どうやったか?


守里: ……



静かな間をつなぐだけのような。

でも、どこか探っているような空気を言葉の端々から感じるような。

そんな質問に対して、守里は少し考えてから答えた。



守里: 最後の依頼ってだけあって、これまで以上に忙しかったし、大変だったよ。


七星: …


守里: でも、それを打ち消す以上に、やり甲斐を感じたし、何より、楽しかった。そして、ずっと仲良くしてもらってる櫻宮さんと………なぁちゃんの生徒会役員としての最後の仕事姿を見れて、嬉しかった…かな。



と、率直な気持ちを守里は伝え、それを聞いた七星は…



七星: …そっか。



視線も表情も変えることなく、ただ口だけを動かしたように、そう答えたのだった。


◇◇◇


第3体育館


昼休みが終わり、5限目が始まる前、この体育館には、能高の生徒全員が集まり、並んで椅子に座っていた。


そんな生徒達の中には、選挙に当選するのが誰になるのか、と興味を抱いている者もいれば、早く終われよ、と退屈に思っている者もいる。

そして、立候補者がいるクラスの生徒や、立候補者の友人は皆、その仲間である立候補者が当選することを願いつつ、緊張しながら椅子に座る。



日向子: 志帆ちゃんと美月ちゃん、大丈夫かな~


飛香: あんだけ練習してたんだから、大丈夫だよ。私達は信じて見守っとこ。


日向子: うん!



また、もう投票する先を決めている人の中には、結構リラックスしている人もいるみたいで…



柿谷: 美月先輩、早く出てこないかな~


菊山: いや、まだ選挙が始まってすらないんだからさ笑


桜: それに、川嶋先輩の出番は最後らしいから、お姉ちゃんが出てくるのも、かなり後だよ。


菊山: それなら、6限目に入るかもね。


柿谷: うわぁ~待てないな~~楽しみ過ぎて、心臓が爆発しそうなんだけど!


菊山: 心臓が爆発って笑


紗耶: なんか最近は、かっきーの美月先輩大好き度が、より強くなったよね。


桜: 多分、お姉ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べれてなくて、会う機会が少なくなったからでしょ。


紗耶: なるほど。


菊山: そういうやんちゃんも、最近守里先輩に会えてなくて、寂しいんじゃないの?笑


紗耶: まぁ確かに学校では会えてないけど、紗耶は週末に会えるから、そこまで寂しいって感じは……あ、でも、もっと一緒にいたいから、寂しいって言っとく!笑


菊山: ん?週末に会える?


紗耶: うん。守里先輩は、最近毎週末に、うちに来てるから。


菊山: え、ほんとなの?


紗耶: ほんとだよ。さぁちゃんには言ってなかったっけ?


菊山: 聞いてない!


紗耶: ごめん笑


菊山: ……へぇ~じゃあ、守里先輩はやんちゃんの親への挨拶も済ませちゃってる感じ?笑


紗耶: なっ//そ、そりゃ、挨拶は済ませてるというか、仲良しというか……


菊山: 守里先輩を自分の部屋に入れたことは?


紗耶: ///……ある。


菊山: ほぉ笑。なら、同じベッドに入ったことは?!


紗耶: っ!そんなのあるわけ!……… 


菊山: え、なにその沈黙……まさか、あ、あるの?


桜: ジー


紗耶: //い、いや、小さい頃のことも含めて良いなら、あるってこと!


桜: ふぅ…


菊山: なんだ、そういうことか~~でも、自分の部屋に招くことまでできてるんなら、同じベッドに入るぐらいすぐいけるよ!そのチャンスも多いわけだし!頑張れやんちゃん!


紗耶: そ、そんなことできるわけ///


桜: ちょっと、さぁちゃん。やんちゃんをからかい過ぎだよ。それに、部屋に招くことと、同じベッドで眠ることのハードルの高さには、かなり差があるでしょ。


菊山: エヘヘ、それもそうだね。ごめん、やんちゃん笑


紗耶: んもう//…


菊山: ま、その照れてる顔が可愛いから、またやっちゃうんだけど笑


紗耶: ……じゃあ、紗耶も同じことをやってあげよう!


菊山: 同じこと?


紗耶: さぁちゃんも、オンラインで優太とゲームができてるんだから、家に呼ぶか、優太の家に行ってゲームをするぐらい、すぐにできるよ!


菊山: ……別に家に行かなくても、オンラインで十分だし。何より、私と紗耶じゃ、そうやって人をイジるのもそれへの耐性もレベルが違うんだから、言っても無駄笑


紗耶: くっ、くぅ~


桜: 笑、どちらかって言うと、やんちゃんが弱すぎるだけなんだけどね。


紗耶: さ、さくちゃんまで……ガク


菊山: そんな落ち込まなくても、やんちゃんみたいな人はたくさんいるんだから、大丈夫だって笑


紗耶: …例えば?


菊山: 例えば?そ、そうだな~~…………さくちゃん誰かいない?ボソッ


桜: う~ん……そういう煽りというか、からかいというか…イジりへの耐性が低いのは……優太とさぁちゃんと…


菊山: え、私?


紗耶: 笑、さくちゃんからしたら、紗耶とさぁちゃんは同じレベルみたいだね!


菊山: …


桜: あとは……う~ん……川嶋先輩。


紗耶: 川嶋先輩?…まぁ確かに、そのイメージがないこともない。


菊山: 美月先輩や飛香先輩にイジられて、顔を真っ赤にしてることがよくあるもんね。


紗耶: うんうん。


桜: でも、それが川嶋先輩の魅力だよ。


菊山: 分かるわ~笑


紗耶: ありえないぐらいの高スペックの中にある、人間らしさって感じ。


桜: うん。


菊山: あ、やんちゃんもそこが魅力だから、安心して!笑


紗耶: うるさい!笑


柿谷: 美月せんぱーい!



この生徒会選挙は、議長の進行の元、現生徒会長の挨拶から始まり、監査、生徒会長の順番で演説を行ったあと、投票が行われる。

立候補者と代表推薦者の2人が行う演説は、立候補者としての最後のアピールの場であり、全員が気合い十分となっているため、かなりの時間を要し、投票もおよそ900人が同じ会場で、同じ時間に行うため、結構な時間がかかる。


よって、生徒会選挙は昼休み以降の5、6限目の時間全てを使って行われるのだ。


そんな選挙を運営する生徒会役員達は、使命感と緊張を抱きながら、立候補者と代表推薦者達の席の斜め後ろ…体育館の壁際に立ち、選挙の開始を待っていた……?



守里: …


鹿川: ふぅ~なんか、立候補者と推薦者達の緊張が伝わって、こっちまで緊張しちゃうね!



右隣に立つ鹿川がそう言う。



守里: まぁ、そうだね。これからの演説が終われば、あとは投票結果を待つだけになるんだから、みんなが感じてるプレッシャーは相当なもののはずだよ。


鹿川: うん!


倉田: まゆちゃん、ちょっと声が大きいですよ。



自然と声のボリュームが大きくなった鹿川を挟み、さらに右隣から、呆れた表情で注意をする倉田。



鹿川: え、そう?ごめんなさい。


倉田: 気をつけてください。


鹿川: はーい。


守里: 笑


倉田: ……森崎君もですからね。それと、なんで笑ってるんですか?


守里: いや、ほんとに倉田さんと、まゆたんは仲良しだな、って思ってさ笑


倉田: …


鹿川: もう今更だよ!ね?桃ちゃん!


倉田: はぁ……声が大きいですって…



と、ため息に近いものをつきながら、再び倉田が鹿川をたしなめると…



中谷: 笑、否定はしないんだ。



左隣に立つ中谷が、並んでいる倉田と鹿川を見て、笑いながら言った。



倉田: なっ……


守里: ほんとだ笑


中谷: 全く笑。可愛いね、桃ちゃんは。


倉田: ……うるさいです。


鹿川: え?桃ちゃんは可愛いよ!


中谷: あぁ、そっちの意味でね笑。僕も、桃ちゃんのことは可愛いと思うよ。


倉田: …//


中谷: ほら、守里君も言って、とどめを刺すんだ笑ボソッ


守里: いや僕は…


中谷: なんでよ~笑………あ、あはは…やっぱ良いや…



と、中谷が急に意見を翻した理由は…



美月: ジー



会話は聞こえないものの、そういう空気を感じた美月が、守里達が並んで立っている方向へ視線を送り続けていることに、気づいたからであった。



鹿川: あ!美月ちゃんが見てる。手振っとこ。



少し遅れて、その視線に気づいた鹿川が笑顔で手を振り、美月はそれに対応せずにはいられず、嫉妬の視線を止めた。



中谷: ふぅ……まゆちゃんに助けられた…かな?


守里: え?


鹿川: わ~やっぱ、可愛い~


倉田: ちょっと、まゆちゃん。そろそろ手を振るのはやめてください。


鹿川: え~なんで?


倉田: もう始まりますから。



腕時計を確認しながら倉田が言う。



鹿川: お、確かに。ここからは真面目な顔をしとかないと。


中谷: 笑、頑張って。



と、鹿川が気を引き締めたところで…


キンコンカンコーン



チャイムが鳴った。




to be continued



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