ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

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第8章 生徒会選挙編

第297話「選挙活動」

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選挙活動開始日




裏門付近



川嶋: ふぅ…


祐希: ふぁぁ…


川嶋: 笑、ごめんね。朝早くから。


祐希: いやいや。大丈夫……のはず……


美月: ウトウトし始めたら、隣で顔をつねってあげるよ笑


祐希: …つねるのはちょっとな~


美月: じゃあ、しっぺ!


祐希: う、うぅん……お願い。


美月: 分かった!


川嶋: いや、つねるのがダメで、しっぺがOKの判断基準はどこなのよ笑


祐希: 何となく?笑



無事に、会長に立候補した川嶋は、自ら手伝いに志願してくれた美月と祐希と共に、朝早くから裏門の近くに立っていた。



祐希: にしても、ほんとに裏門で良かったの?


川嶋: うん。


祐希: でも、初日なんだから、みんなに立候補者ですって知らしめるためにも、たくさん人が通る正門の方でやった方が…


川嶋: それは…


飛香: 確かに、人が多く通るのは、正門だよ。



祐希の疑問に対し、川嶋が答えるよりも早く、校舎側から歩いてきた飛香が答える。



美月: あ、飛香、来たんだ。


飛香: おはよう。


春時: 俺もな。おはよ。



その飛香の後ろについて来ていた春時も、顔を出して、挨拶をする。



川嶋: 2人とも…ありがとね。


飛香: 弱々になってたアンタの説得を、美月と祐希に任せ切りにした分、選挙活動の準備とその活動は、ちゃんと手伝うって言ったでしょ。


美月: ほんとだよ!少しぐらい、澪奈みたいに手伝っ…


飛香: ん?澪奈が手伝った?


美月: はっ!!い、いや…


飛香: 笑、まぁいいや。で、祐希の疑問の答えだけど、志帆が立候補者だっていうのは、昨日の時点で、放送で流れてもいるし、掲示板にも張り出されてるから、ある程度の人は知ってる。だから、わざわざ初日に、立候補者が集まってる正門で、戦う必要はないの。でしょ?志帆。


川嶋: うん。初日は、人がたくさんいる正門で、他の立候補者達と争いながら動くよりも、人は少ないけど、通った人全員に言葉を届けられる裏門で動いた方が良いと思ってね。


祐希: なるほど…


春時: じゃ、今日の朝は、とにかくこの裏門で、来る人全員に、志帆をアピールすれば良いんだな?


飛香: うん。


川嶋: 今日は公約とか言わずに、ただ元気よく挨拶をするつもり。だから、みんなには私と一緒に挨拶をして欲しいの。


春時: 分かった。元気に笑顔で、だな。


川嶋: そうそう。笑顔で!


飛香: 笑顔でか……


美月: 飛香は苦手そうだけど、大丈夫そ?笑



煽るような表情で、美月が飛香に聞く。



飛香: 笑、心配されなくても、やろうと思えばやれるんで。


美月: へぇ~引き攣った笑顔になってないか、逐次確認してあげるよ笑


飛香: そんな暇があったら、志帆のアピールをしろ。


春時: これは、飛香の正論パンチだな笑


美月: クッ、負けた!


飛香: 残念笑


川嶋: 笑、いつから勝負が始まってたのよ。


春時: いつからとかじゃなく、この2人は常に張り合ってるから笑


祐希: …あ、人来た。



勝手に閉じていく瞼を、何とか開きつつ前をじっと見ていた祐希が、最初のターゲットに気づく。



川嶋: よし、みんな!よろしく!


春時: おう!任せとけ!


美月: 気合い入れていくよ!


祐希: はーい。


飛香: ふぅ…笑顔で……ニコッ


川嶋: おはようございます!



こうして、川嶋の選挙活動が始まった。


初日の朝は、予定していた通り、裏門を通る生徒達に元気よく挨拶をした。


これは、裏門を通る人全員に、川嶋に対するポジティブなイメージを強く与えるための作戦である。

川嶋は、学年を超えての活動がほとんどない学級委員であり、部活にも入っていないため、1年生と3年生での知名度が、かなり低い。

よって、まず第一に、川嶋志帆という名前と顔を一致させつつ、それに対して、元気が良い、や、明るい、といったポジティブな印象付けをしようと考えた。

だからこそ、立候補者達の名前がまだ浸透し切っていない選挙活動初日は、人が入り混じり、声が飛び交う正門ではなく、人が少なく他の立候補者もいない裏門で、その作戦を実行しているのだ。


ここで、守里が制作していた選挙規則に書かれてあることを紹介するのだが、選挙活動ができるのは朝のホームルームが始まるまでの朝の時間と、昼休みの時間。

そして、今年から、校舎外であれば大声を出しての選挙活動は問題ないが、校舎内では禁止、という文章が追加された。


他にも、選挙規則には、立候補者全員が自身の活動にも、他人の活動にも十分に納得できるようにと、選挙活動における細かなルールが多く記載されており、立候補者達はこれを読み込んだ上で、選挙活動を行わなければならない。

もし、規則を破った活動をしているとの報告が生徒会に上がった場合、その立候補者に注意が届き、2回の注意が届くと、それ以降、選挙活動を行えなくなり、そのまま選挙当日を迎えなければならない。


また、立候補者達が自主的に行う選挙活動とは別で、昼休みに流れる放送では、立候補者達の公約や意気込みを含んだ演説文が、放送委員によって読まれる。

今年の立候補者の数は合計12人で、選挙活動期間は7日間であるため、2日目以降に毎日2人ずつ演説文が読まれていく。

川嶋は、立候補がギリギリになってしまったこともあり、選挙活動最終日に演説文が読まれることになった。


これらを踏まえた上で、川嶋は初日から7日目までの、選挙活動の計画を立てており、実行に移している。


初日の昼休みは、美月と飛香と共に、教室校舎を歩き、各教室の昼休みにおける生徒の残留率を確かめた。


2日目の朝は、計画では昇降口で、校舎に入ってきた生徒に自分の名前と公約を書いたB5サイズのポスターを配ろうとしていた。

しかし、金曜日で朝練がない日向子が活動に参加できるということで、飛香の発案により、正門付近で、他の立候補者達と並んで、声を出しながらポスターを配ることにし、見事、日向子の大声で他の立候補者達を圧倒、多くのポスターを手渡すと同時に、多くの言葉も届けることができた。


元々は、配布するポスターの制作も自分でやろうと、川嶋は思っていたのだが、その話を聞いた祐希がやりたいと言い、その祐希の言葉を偶然耳にした、東野もやりたいと言って、美月の説得もあり、川嶋は祐希と東野の2人にポスターの制作を任せた。

ただ、2人だけでは心配ということで、絶対的信頼のある飛香にも話をし、ポスター制作に参加してもらった。

その結果、レイアウトや文章は完璧なのだが、名前の横や公約の右下に、化け物が描かれたポスターが、原案として川嶋に渡され、それを見た川嶋は、まさかその化け物が自分だとは思わず、世間で流行っているイラストなのだろうと、勘違いして、そのポスターをそのまま印刷し、生徒達に配っている。


ちなみに、この勘違いに川嶋が気づき、色んな意味で顔を真っ赤にするのは、選挙活動4日目で、ほとんどの生徒がそのポスターを受け取って、読んだ後であり、川嶋はポスターの配布を止め、既に配布したポスターも回収しようとした。

が、半笑いの美月と、なんで?という顔をしている東野、自分の絵が下手だと言われ少し不機嫌な飛香、面倒臭いと言う祐希、諦めの笑みを浮かべた春時に止められ、断念した。


2日目以降の昼休みは、初日で調べた昼休み中の生徒の教室残留率が高いクラスに、順に演説をしに行った。


ただ、残留率が高い順といっても、選挙活動期間の初めの方に2、3年生のクラスへ行き、最後の方に1年生のクラスへ行った。

なぜなら、選挙当日に近づくにつれ、1年生の選挙への意識が高まり、より興味を持って話を聞いてくれると、考えたからだ。


演説の流れとしては、立候補者の演説文が読まれる放送の間に、昼食を済ませ、放送が終わったのを確認して、いくつかのクラスに行き、簡単な自己紹介と簡潔にまとめた公約を話す、という感じである。


川嶋は、大人数で他のクラスにお邪魔するのは、迷惑だろうからということで、美月と飛香、そして東野の3人だけを連れて行った。


後々に、春時が聞いたところによると、川嶋がこの3人を選んだ理由としては、この3人がいれば、教室にいる生徒がしっかりと話を聞いてくれると思ったからだそうだ。

3人ともビジュアルが高く、立ってるだけで人の目を引き、そこに、美月の魔眼と、飛香の威圧、東野の人脈が加われば怖いもの無し、とも言っていたらしい。


実際に、教室に入れば、少しの驚きの声と共に、教室の中にいる生徒どころか、廊下にいた生徒の視線も集め…

東野と仲が良い人がいれば、東野がその人と会話をして場を和ませつつ、川嶋が話しやすい空気を作り…

興味なさげな人がいれば、美月が至近距離で目を見つめて、無理やり川嶋の話に注目を集めさせ(半分ぐらいは美月に集まったが)…

面倒臭いからと途中退席しようとする人がいれば、飛香が威圧を飛ばし、席に座らせ大人しく川嶋の話を聞かせた。


この活動により、昼休み中に教室にいる生徒達には、川嶋のことも川嶋が掲げる公約も、認知させることができた。


また、昼休み中に教室にいない生徒…全校生徒のおよそ6割には、朝の活動で知ってもらう必要があるため、川嶋はそこにも力を入れた。

選挙活動3日目の朝以降は、陽芽叶や秋吉、杉浦、璃勇といった1組の他の面々も協力してくれたことで、元々は昇降口でポスター配りだけに専念しようと川嶋は考えていたが、正門と裏門、そして東門に人数を分散させ、それぞれの場所で活動を行うことができたのだった。



◇◇◇◇◇◇◇


選挙活動最終日




生徒会室



櫻宮: さてさて、もうちょっとで、朝のホームルームが始まるけど、みんな、どんな感じ?



部屋の中にいる役員達に、ニコニコの笑顔で櫻宮はそう聞く。



鹿川: 会議も全部終わって、報告書も全部提出し終わりました!!


櫻宮: おぉ~引き継ぎ資料は?


鹿川: もちろん、終わってます!


櫻宮: 笑、よく頑張りました。


鹿川: はい!頑張りました!!


中谷: 笑、昨日のまゆちゃんは、目が血走ってたもんね。


灰崎: はい。すごい集中力でしたよ笑


櫻宮: 奏雄と謙心は?


中谷: 僕は、引き継ぎ資料が、あと少しだけ。


櫻宮: 今日中に終わりそう?


中谷: うん。放課後には終わる。


灰崎: 僕も、引き継ぎ資料がまだ残ってますね。今日中には終わりそうですけど。


櫻宮: そっか~


中谷: まぁ、次の会長次第ではあるけど、謙心は引き継ぎ資料なんか、作る必要なくない?笑


櫻宮: 確かに笑


灰崎: いやいや。僕が次の議長をやるにしても、やらないにしても、引き継ぎ資料は残しとかないとですから。


櫻宮: だね。七星は?


七星: 終わってんで、全部。


櫻宮: さすが!副会長!



と、隣の席の七星を煽てる櫻宮を見て、灰崎は疑問に思い、中谷に小さな声で尋ねる。



灰崎: え、やっぱり会長のテンションおかしくないですか?今日ボソッ


中谷: 会長としてワクワクしてるからじゃない?選挙と引き継ぎにボソッ


灰崎: なるほどボソッ



その中谷の説明に納得した灰崎は、最近はあまり見なかった、櫻宮の笑顔を見て、少し微笑むのだった。




to be continued
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