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第8章 生徒会選挙編

第292話「熾烈な料理対決 Last part」

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キッチン



紗耶: やっぱ、嬉しいですね。自分が作った料理の感想を言われると。


美月: 笑、私も早く褒められたいな~



リビングの方から聞こえてきた、美味しいという声に、満面の笑みとなる紗耶を見ながら、美月は溶いた卵に、手元の調味料を入れる。



紗耶: 美月先輩なら、絶対大丈夫ですよ!


美月: そうだと良いけど笑


紗耶: だって、今回のテーマに合うようにって、ツナマヨを入れてるんですよね?


美月: まぁ、うん。


紗耶: ツナマヨは最強ですから。


美月: え、そこ?笑


紗耶: あとなにより、守里先輩への想いが込められてますし笑


美月: 笑、う~ん、それもそっか。私のこの料理には、やんちゃんよりも、みんなよりも深く強い守里への愛が込められてるからね!


紗耶: っ!せっかく励ましたのに、そうやって言うんですか?!全く、ヒドいな~笑


美月: 笑、冗談だって……ん?冗談?いや、私としては、みんなよりも守里を愛してる自信があるわけだから、冗談ってわけでも…


紗耶: 真剣に悩まないでくださいよ!紗耶だって、守里先輩への愛は、あの餃子に込めましたし、美月先輩よりも強い自信はあります!


美月: いやいやいや、私の方がある!


紗耶: 紗耶の方が!


美月: 私!


紗耶: 紗耶!!



という大声の応酬が始まると、それを聞いた飛香がキッチンにやって来た。



飛香: 何を言い合ってんのよ。


美月: あ、飛香。


紗耶: 飛香先輩。


飛香: 向こうまで響いてんだけど。美月は料理中でしょ?料理に集中しないとミスるよ。


美月: …それもそうだね。今からは料理に全集中します!


飛香: うん。紗耶はどうする?こっちに来る?


紗耶: どうしましょうかね……美月先輩のはすぐに完成しそうですし、こっちにいようと思います。


飛香: ん?美月の料理は……



コンロの上に置いてあるフライパンを見る飛香。



飛香: あぁ、確かに早めに出来上がるか。


紗耶: あと10分かかんないぐらいですかね。


飛香: じゃ、向こうにいる子達にも、もうすぐで審査が終わるって伝えとくわ。


紗耶: はい。


美月: よし、焼くぞ~ここからが大変だぞ、美月。香蓮に教わった通り、丁寧にやっていくんだ。


飛香: 笑、頑張れ、美月。



フライパンの前で意気込む美月に、エールを送ってから、飛香は待機部屋の方に向かった。




待機部屋



珠美: なるほど、それで5日目の夜は函館山からの景色を見たんですね。


陽芽叶: うん笑。ものすごく綺麗だったよ。


珠美: 写真とかはないんですか?


陽芽叶: 残念ながら、景色に圧倒されて、写真を撮るのを忘れちゃって笑


珠美: うわぁ~そりゃ残念です!


陽芽叶: ごめんね~笑



旅行話をねだる珠美に、陽芽叶が頑張って話している途中で、飛香が戻ってくる。



飛香: 笑、また旅行の話をさせられてるの?


陽芽叶: あ、飛香。


珠美: すみません!気になったもので。


陽芽叶: 全然良いんだよ笑


飛香: 珠美はもう満足?


珠美: はい!たくさんお話を聞けましたから!


飛香: なら良かった。そろそろ美月の料理も終わるからね。


陽芽叶: そっか。


珠美: え、ってことは、投票も始まるってことですよね?


飛香: うん。


珠美: …ふぅ…緊張してきました。


陽芽叶: 笑、料理はもう審査済みなんだから、あとは祈っとくだけだよ。


飛香: それでも緊張はするもんだって。実際、私も少し緊張してるし。


陽芽叶: へぇ~笑


飛香: どうする?さくが呼びに来るまで、ここで待ってるか、キッチンで様子を見るか。


珠美: 珠美は……キッチンに行きます。ここにいると、余計緊張して、心臓が飛び出ちゃいそうなので!


陽芽叶: そんなに?笑。でも私もキッチンに行こうかな。美月の料理の完成品も見ときたいし。


飛香: じゃあ、みんなでキッチンに行くか。


陽芽叶: うん。


珠美: はい!




10分後



桜: 最後の料理です。


日向子: もう最後か~~あっという間だった!


蓮花: ほんとそうですよね!


守里: さて、最後の料理は…


桜: どうぞ。



この料理対決最後の料理が、審査員達の前に並ぶ。



守里: お、卵焼きか。


春時: サバの味噌煮に続く和食。なんか落ち着く笑


守里: うん笑


結真: 見た目的には、ツナ…かな?中に入ってるね。


守里: ツナか。絶対、ご飯に合う笑


日向子: よっしゃ!最後の料理、気合い入れて食べるぞ!



その日向子の言葉をきっかけに、5人は美月が作った、ツナマヨ入り卵焼きを食べる。



日向子: パクッ……モグモグ……ん?うん…うまい!


蓮花: モグモグ…甘めの卵焼きか。うん、美味しい。


春時: なるほど、こんな味か笑…モグモグ


日向子: ご飯も行くぜ!バクバク


守里: あぁ、ツナマヨだったか。うん、美味しいね笑


春時: やっぱ、ツナマヨは白米に合うな笑


守里: うん笑


結真: モグモグ……(これ……塩と砂糖を間違えたのかな?…ツナマヨを卵で巻くにしては、ちょっと卵が甘すぎるような気がする…)


蓮花: にしても、すっごく綺麗だよね。蓮花も、この前やってみたけど、こんなに上手にはできなかったよ。


結真: ね笑。(直感だけど、美月っぽいな、これ作ったの。こんな初歩的なミスをしそうなのは、美月だけだし。でも、そうだとしたら、ここまで卵焼きを上手に焼けるようになるとは……成長ぶりに泣けてくる!)


守里: う~ん、この中から選ばないといけないのか。


蓮花: めちゃくちゃ迷う!


日向子: バクバク


春時: 笑、日向子は米をかきこんでるだけじゃん。


日向子: 大丈夫…バクバク…ちゃんと…バクバク…選んでるから!バクバク


桜: それでは、皆さん。どの料理を選ぶか決めてください。


守里: よし、残してたやつを食べてみて…っと…


結真: モグモグ…



審査員の5人は、この料理対決のテーマである、白米に合うおかず、に1番ふさわしいと思う料理を決めるために、少しづつ残しておいた5品をもう一度食べる。


そして…



桜: それでは、この5品の中で、最も白米に合うおかずだと思った料理の皿を、自分のところに引き寄せてください。



陽芽叶: …(さてさて、どうなるかな。)


飛香: (どうだ…)


紗耶: ふぅ……(守里先輩!)


珠美: …(やばい、心臓が飛び出る!)


美月: (お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします……)



自身の料理が選ばれることを願いながら、5人が目を瞑って、桜の結果発表を待つ中、審査員達は、各々で選んだ料理の皿を手で引き寄せる。



桜: 結果は……



あまりの緊張に、結果を待つ5人の固唾を呑む音が揃って聞こえたような気がした後、桜が結果を言う。



桜: 引き分けです!


美月: え?


飛香: ん?


陽芽叶: そうなったか…


紗耶: う、うそ!


珠美: はぇ?!



思いもよらなかった結果に、5人は目を開け、審査員達の手元を確認する。



桜: 審査員の方々が、全員異なる料理を選んだので、今回の料理対決の結果は、引き分け。勝負つかずとなりました。


結真: びっくりではあるけど……ま、どれも美味しかったからね笑


守里: うん。全部美味しいって思った僕からすれば、むしろ引き分けで良かったかも笑


春時: 俺も同じくだ。


蓮花: 蓮花も!


日向子: もう、どれも美味し過ぎて、ご飯4杯もおかわりしちゃったよ笑


守里: それは食べ過ぎ笑


春時: いや、守里もほぼ変わらんだろ笑


桜: じゃ、これで料理対決を終わります。ありがとうございました。


美月: え、えぇ…


飛香: …


紗耶: ……はっ!


珠美: ん?今終わったの?



5人の料理人が騒ぎ出すと、締めるのが難しいと感じたのか、桜が素早く料理対決をお開きにしてしまったため、美月達は展開の速さについて行けず、唖然とした。



桜: ふぅ~やっと終わった。


守里: 笑、お疲れ様、桜。


結真: ありがとうね。


桜: ううん。さくも楽しかったから。


守里: そっか笑。それなら良かった。


蓮花: あの、誰がどの料理を作ったのか聞きたいです!


陽芽叶: うん笑。私はね、その蓮花ちゃんが選んでくれた、唐揚げを作ったんだよ。


蓮花: あ、そうなんですか?!めっちゃ美味しかったです!!


陽芽叶: ありがとう笑。選んでくれて嬉しい。


春時: このサバの味噌煮は?


珠美: …


陽芽叶: 笑、たまちゃんでしょ?


珠美: っ!!は、はい!あ、春時先輩!


春時: へぇ~これ、珠美が作ったんだ。最高に美味かったぞ笑


珠美: ありがとうございます!!笑


日向子: ハンバーーグ!!は?!


飛香: 伸ばすなよ。別のに聞こえるだろ。


日向子: やっぱり、あっしゅん?


飛香: やっぱり?…まぁそうだけど…


日向子: いぇーい!!私の勘が当たった!!


飛香: どういうこと?


守里: さっき、日向子がこのハンバーグを作ったのは、飛香な気がするって言ってたんだよ。


日向子: エッヘン!


飛香: …笑、もはや怖いわ。


日向子: え~~!なんでそんなこと言うの~仲良い証拠じゃん!!


飛香: はいはい笑


美月: ポケー


結真: 笑、美月はいつまでそうやってるの。


美月: …はっ!今どういう状況?!


結真: 料理対決の結果は引き分けに終わって、みんなで感想を言い合ってるって状況。


美月: そ、そう…


結真: ちなみに、美月の卵焼きは…


美月: あ!誰が選んだの!守里?!


守里: え、あ、いや、その…


結真: 私で悪かった?笑


美月: っ!!ち、違うよ!お姉ちゃんが選んでくれて、めちゃくちゃ嬉しいよ!


結真: 笑、そんなに焦らなくても良いわ。美月の気持ちは分かるし。でも、よく頑張ったね。


ポン



悔しそうな表情を浮かべている美月の頭の上に、結真は手を乗せる。



美月: あ、ありがと……


結真: 笑、練習して、リベンジしよう。


美月: うん!



そんな、みんなの様子を見ることもなく、守里の手元をただじっと見ている人がいた。



紗耶: …


守里: ってことは、この餃子を作ったのは、紗耶ちゃん?


紗耶: ……はい!



自分の料理を守里が選んでくれたという、嬉し過ぎる現実を時間をかけて受け止め、紗耶は目を潤ませながら大きく返事をする。



守里: いや~紗耶ちゃんが料理上手だってことは知ってたけど……本当に美味しかったよ。


紗耶: あ、ありがとうございます!紗耶、めっちゃ嬉しいです!!


守里: 笑、こちらこそ、ありがとうね。


紗耶: はい!笑



満面の笑みで紗耶がそう答えて、この日の料理対決は真に終わった。


しかし、他4人の料理人達は、嬉しさの裏で悔しさを噛み締め、リベンジを心に決めるのであった。


◇◇◇◇


その日の夜



美月: う~ん、どこが悪かったんだろうな~



キッチンで結真が夕食の洗い物をしている中、1人ソファに座る美月がそう呟く。



結真: 笑、美月。自分で作ったのを食べなかったのね。


美月: うん。そんなに量を作れなくて。


結真: じゃあ………次からは、塩と砂糖を見間違えないように笑


美月: え………間違えてた?


結真: 多分。


美月: ………オーーーノーーーー!!!!!



こうして、守里の家に美月の叫び声が響き、日曜日の夜は更けていった。




to be continued

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